第三章 新たな出会い

第23話 エクレアとの出会い

 ギルドマスターのサンダースと戦い終えた後、声を掛けてきた女の子はどうやらサンダースの娘らしかった。


「こいつはエクレア。俺の娘でまぁ見て判ると思うが冒険者だ」

「宜しくね」


 サンダースから改めて紹介を受ける。僕に挨拶してくれたエクレアは、背中に鉄槌を担いだ女の子だ。結構小柄なんだけど持っている武器はかなり重そうだね。


 そして何というか胸部も中々重そうな……うん。つまり大きい。


「――お前どこ見てる?」

「い、いえ別に!」

「スピィ~?」


 サンダースに射抜くように睨まれた。す、鋭い。スイムが肩の上で、なになに~? と聞くように鳴いていた。

 

 気持ちを落ち着かせる為にスイムを撫でる。


「スピィ♪」


 スイムもごきげんだ。僕も平常心を取り戻す。


「……フンッ。トール家の血筋かうちは雷の紋章持ちが多くてな。こいつも例にもれず雷持ちだが俺と同じで複合属性なのさ」

「へぇ凄いんだね」


 改めてサンダースがエクレアについて教えてくれた。複合属性持ちはただでさえ珍しいのに、親子そろってなんてね。


「ふふん。私は雷と槌のハイブリッド属性なのよ」


 エクレアが得意顔になる。重そうな鉄槌を所持しているのも紋章の影響なんだね。


「そういうわけだ。娘もこれで気が荒い方だからな。下手なことしたら潰されるぞ」


 サンダースが僕に警告するように言ってきた。それは怖い――


「もうパパってば。大丈夫だよ私は怖くないからね♪」

「はは――」


 笑顔をみせてそうアピールしてくるエクレア。鉄槌を振り回す姿が想像できないぐらいいい顔してるよ。


「とにかくお前の力が本物なのはわかった。水の威力もな」

「良かった~なら水が重いのも――」

「待て。お前の魔法は理解したが今後それはあまり他言するな」


 やっと水の真実を理解してもらえるかと思えばサンダースから口止めされてしまった。


「それはどうして?」

「――ま、一旦俺の部屋に戻るか」

「なら私もいい?」


 サンダースが部屋に来るよう促してきた。するとエクレアも同席したいって目をキラキラさせている。


「いや、何でお前が?」

「私この子に興味湧いちゃった。ねぇ君パパとの話が終わったら私とデートしない?」

「は、はい?」

「スピィ?」


 サンダースが娘のエクレアに確認を取ると、何だかとんでもないことをいい出したよ! 


「ほう。なるほど――どうやらお前とは別な意味でもしっかり話し合わないといけないみたいだな」


 サンダースが拳を鳴らし空気が異様に重くなった。凄いプレッシャーを感じる。


「もうパパすぐ力に訴えるんだから。そういうところ駄目だよ。それに私だってもう子どもじゃないんだからね!」


 ゴゴゴッととんでもない威圧を撒き散らすサンダースをエクレアが叱咤した。この人にここまで言える辺り流石娘だね。


「――俺からすればお前はまだ子どもだ。大体お前こいつのことなんて何も知らないだろうが!」


 確かにそう言われると僕も初対面で何であんな誘いを受けたのかとても謎だ。本当だとしたら光栄、うわまたサンダースに睨まれた!


「あら私だって冒険者の端くれよ。パパとの戦いを見れば自分にとって必要かそうでないかがわかるわ」


 サンダースの圧が高まる中、何か凄いこと言われてる気がする。必要に思われるのは嬉しいことなんだろうけどね。エクレアは可愛いし近くにいると何か凄くいい香りが――


「それにこの子も何だか可愛いし」

「スピィ~♪」


 するとエクレアが肩に乗ってるスイムを撫でた。スイムも喜んでるね。


「この子名前あるの?」

「スイムって言うんだ」

「へぇ~スイムちゃん宜しくね」

「スピィ~♪」


 スイムが嬉しそうにプルプル震えてる。最初は目つきでちょっとキツそうなイメージもあったけど話してみると親しみやすい子だね。


「とにかくいいでしょパパ? 今後の為に大事なことよ!」

「駄目だ駄目だ! デートなんて許さん!」


 エクレアが改めてサンダースに許可を取ろうとする。だけど僕とのデートには大反対といった様子だ。肝心の僕は何も言えず心だけがオロオロしているよ。


「いいじゃない別に。大体デートといっても一緒にダンジョンに潜ろうって話だし」

「どこだろうとデートなんて、は? ダンジョン?」

「ダンジョンだよ?」


 エクレアの返しにサンダースが目を丸くさせた。それにしてもデートと言うから僕も驚いたけどダンジョン……そうかダンジョンの話だったんだ。でもそれって――


「お前それデートじゃなくてただのダンジョン探索だろうが!」

「そうとも言うわね」


 サンダースが僕の思った事を言ってくれた。エクレアはあっけらかんと返事していたけど。


「はぁ。もう面倒だ来たきゃ好きにこい」

「やったぁ! だからパパだ~い好き♪」

「ば、馬鹿野郎。とにかく行くぞ」


 結局サンダースが折れた形だね。エクレアが喜んでサンダースの腕に飛びついた。


 すると何かちょっと顔を赤くさせてサンダースが先に進んだよ。やっぱり父親は娘には弱いんだね。


 親か――正直僕にはあまりいい思い出がないから、仲がいいのはちょっとうらやましいかな――


「どうしたの? 早く行こっ?」

「ふぁッ! う、うん!」


 エクレアが僕の顔を覗き込んできて驚いたよ。凄くドキッとした。改めて見ると凄い美人なんだよねエクレアって。


 さて、僕は改めてエクレアとサンダースの部屋に向かった――

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