第22話 ギルドマスターとの戦い

 流石にギルドマスターだけあってサンダースは強い。僕の魔法がどれだけ通じるか。


 水の盾も拳の一撃で破壊されたし水鉄砲も弾かれた。


「こんなしょっぱい攻撃で俺をどうにか出来ると思うなよ小僧!」


 な、なんだろう? サンダースの全身から電撃が迸っていて嫌な予感がする。


「水魔法・水球!」

「雷剛拳!」


 サンダースに向けて巨大な水の球が飛んでいく。一方で拳に雷を集めたサンダースが距離を詰め殴ると電撃が迸り僕の作った水の球が破壊された。


 さっきの攻撃より更に上だ。しかも電撃の効果でリーチが伸びてる。


「雷足飛び――」


 サンダースが更に技を重ねる。僕の視界からサンダースが消えた。


「後ろだ」

「そんな――」


 とんでもない速さだ。目が追いつかなかった。


「水魔法・水守ノ盾!」

「おせぇ! 旋風雷鳴脚!」


 盾を出したけど完全に構築される前に雷を纏ったサンダースの蹴りが飛んできた。体を旋回させての蹴りで雷も相まって威力が凄まじい。

 

 くっ、痛みが全身に襲いかかる。僕とサンダースの距離が強制的に引き離された。僕が吹っ飛んでるからだ。


 このままじゃ場外に――不味い意識が遠のきそう。だけど駄目だ、僕はまだ何も出来てない。


「水魔法・水ノ鞭!」

「何いッ!?」


 魔法で透明度の高い鞭を生み出しサンダースに絡めた。サンダースと鞭で繋がり場外まで吹き飛ぶのを食い止める。


「くそ、これも水だってのかよ」

「そうです、そして、僕にはまだやれることがある。水魔法・重水弾!」


 僕は心のどこかで遠慮していたのかもしれない。だからこれを使うのを躊躇った。でもこの人相手に遠慮なんてしてたら僕の魔法は認めて貰えない。

 

 圧縮された水弾がサンダースへと突き進む。


「ぬっ!」


 鞭で縛られた状態だ。サンダースは逃げられな――


「フンッ!」


 なんて思っていたらサンダースが鞭を引きちぎった。圧倒的パワー――だけど水弾は既にすぐそこに迫っている。


「雷虎猛襲撃!」


 そこでサンダースがまた別な技を行使。サンダースの肉体が放電したかと思えば雷の虎と化して突撃。僕の重水弾と重なった。


 まさか僕の魔法を抜けて一気に決めるつもりか。僕は身構えて水守ノ盾を行使しようと準備する。


「ぐ、ぐわぁああぁああぁあぁあああああ!」


 だけど、サンダースは水弾にぶつかると同時に悲鳴を上げて吹っ飛んでいった。よ、良かった。どうやらマスターの力でも僕の最大の魔法は抜けられなかったみたいだ。


 結局サンダースは闘技場の外まで飛ばされ床に叩きつけられた。

 

 えっと、これ、やりすぎだって怒られたりしないよね? 一応補助の効果が発動したのか、叩きつけられる寸前に青く輝いてはいたけどね。


「お、おいおいマジかよ。あいつマスターを倒したぞ!」

「あいつ水魔法しか使えない奴じゃなかったか?」

「信じられないわ。水だけでマスターがやられるなんて」


 うん? 何か方々から沢山の声が……改めて見るといつのまに訓練場に多くの冒険者が集まって来ていた。戦いに夢中で全く気づいてなかったよ。


「スピィ~スピィ~!」

「スイム!」


 闘技場の外からスイムが胸に飛び込んできた。勝利を祝ってくれてるみたいだ。


「あ~~~~くそ! 負けた負けたーーーー!」

 

 そして耳に届くサンダースの絶叫。獣みたいな大声だよ。


「全くよぉ」


 サンダースは頭を掻きむしりながら闘技場に戻ってきた。えっと、今のでダメージない?


 魔法の補助があるとは言え、確かギリギリまで補助の魔法は発動しないって話だったし全く効いてなかったとは思えないけど。


「まさかやられるとは思わなかったぜ。全く何だあの水魔法は? とんでもねぇ。俺じゃなかったら死んでたぞ」

「そ、それはごめんなさい」

「ま、試合だから謝ることじゃねぇよ。全く本当はお前の為に用意しておいた薬を自分に使うなんてな」


 あ、なるほど。倒れた時に薬を飲んだんだ。ということはやっぱり僕の魔法は効いていたんだ。


「あの、それで僕の魔法は合格ですか?」

「あぁ、そんなのは最初の魔法見た時から決まってたぜ。信じられない話だが確かにあの水の勢いはこれまでの常識を覆すものだった」


 あ、そうなんだ。て、それなら無理して試合を続ける必要なかったんじゃ――


「貴方、凄いじゃない!」


 サンダースの発言に苦笑していると元気そうな女の子の声が耳に届いた。


 顔を向けると金髪金瞳の女の子の姿。雷のような癖のある髪型が特徴的な少女だ。あれ? でも目つきの鋭さとかどことなくマスターに近いものも――


「何だエクレア見てたのか」

「見てたわ。まさかパパに勝てる子がいるなんてね」

「え? ぱ、パパ~!?」

「スピィ~!」


 僕とスイムが同時に驚いたよ。でもそう言われてみれば目つきとかサンダースに近い物を感じたのも納得だね――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る