背中合わせる腹の虫
倉井さとり
1
夜の駅。
大雨のために
仕事帰りの
『なんでこんな思いをしてまで、
すでに家を出た弟と妹は、母の
父は女遊びばかり。だらしない
本当、こんな人生、嫌になる。いっそ死んでやろうか。
疲労を
ふと彼は、
彼の
「
女の声。若く、
「どうしたの?」
男の声。同じく若く、
「パンケーキって……なんか、よく分かんないですよね」女の声は
「どういうこと?」
「パンなのか、ケーキなのか……」
「
「自分でもそう思いますけど……。でもですね、小学生の頃から気になってて……」
「なんか
「闇とかないですよ、
「すごい
「それはともかくですね。あるときから、どういうテンションでパンケーキを食べたらいいのか、分かんなくなっちゃったんですよねぇ……」
「もの食べるのに、テンション関係あるかな……?」
「ありますよ。テンションが合わないと、
「なら、
「え? なんで梅干しなんですか? パンとかケーキじゃないんですか……」
「でどうなの? はやく言いなよ」
「な、なんでちょっとキレてんですか……?
男は息を殺している。
雨足が強まり、
女は、
「……分かりましたよ、言います言います」一つ
「自爆?」
「
「そう、かなぁ? どっちかというと、
「そうですかぁ?」
「なんかもう、ブラックホールだよね、口の中が」
「先輩って、意外と
「雪子ちゃんだって……」
「で。先輩はいつも、どういうつもりでパンケーキ食べてるんですか?」
「どういうつもりって……」
「はやく言ってくださいよ」
「なんで怒ってんの……?」
「そりゃあ怒りますよ。言ってくれなかったら、ですけどね。私にだけ
「恥ずかしい? ……なに言ってんだろこの子……」
「大丈夫ですか先輩? なんか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます