第414話

 魔物の軍勢はもう一部の集団だけではなく、全面的に南の魔族領への退却を始めていた。

 一目散に逃げてるというよりのっそりと動いてる感じなので、今からでも追撃を行えばかなりの数を討ち取れると思われる。

 だけど、追撃は行わなかった。


 今回の戦闘で、通常の魔物をいくら倒してもレベルアップはしない、RPGで言うところの『経験値』は一切入ってこないことが確定したと結論付けていいだろう。

 さらに、死霊術で操った魔物で特殊個体や上位種を倒しても『経験値』は入ってこないこともわかった。

 ひょっとしたら自分で倒した際の1割とか2割の『経験値』が入るとかかもしれないが、そこまで突き詰めて検証する方法も意味もないと思う。


 つまりどうせ通常種ばかりだから追って倒したところでレベルアップしないし、収納作業がさらに大変になるだけだから、が追撃しなかった理由だ。



 そしてその収納作業である。

 まずは頭部を落とされた2体の黒オーガを収納する。

 異形を取り逃してしまうという結果からすれば、この2体は自分で倒してしまえばよかった。

 そうすればレベルも上がっただろうし、その死体も死霊術で操ることができたのに…………


 異形の捕獲は魔族のことを知るための人族側の唯一の方法だ。今のところは。

 なので最優先とするのは当然だし、間違った判断をしたとは思っていない。

 結果逃げられたことはまぁ悔しいけど、状況的に1人で殿しんがりしてて発見したのだし、他に友軍や仲間がいたとしても何ともならなかったと思う。


 異形の周りにいた盾持ちのオークリーダーを始めとした数体は、『こちらの』黒オーガが完膚なきまで破壊してるので収納する必要はない。


 あとはメインの作業である、広い範囲に無数に転がっている俺の魔法で倒した死体たちだ。

 近場からせっせと収納作業をしていく一方、死霊術で操る6体を2体1組で、離れた場所に散らばっている死体を集めさせることにした。

 死霊術では状態の悪い死体を除外するといった判断はできないが、集める死体をオーク種に指定することは可能でゴブリンのような小型種を仕分けできるのは有難かった。

 もっとも手で触れて収納するという工程そのものは短縮できず、移動する手間をある程度解消できるってだけだ。


 回収作業中に後方(=北側・要塞側)の森からチョロチョロと魔物が出てきたことと、戦闘前に確認した3体のオーガの内回収できたのが2体だけだったこと、この2点以外は特に問題なく作業することができ…………

 結果1刻(=2時間)以上かかって4000体を超えるオークを収納した。



 その後、行きに通ってきた森の中を最低速度の飛行魔法で北上、退却したレイシス姫の部隊との合流を目指した。

 森の上空を飛ばないのは飛行種を警戒したからだ(魔物の本隊が撤退した以上飛行種もいないと思うが、念のため)。


 こちらのスキルの探知範囲外から一気に急降下してくるさっきの翼竜みたいな飛行種は非常に厄介だ。

 急降下しながらの攻撃手段があるのかは不明だが、あの速度で体当たりされるだけでも脅威だろう。飛行中は特に。

 なので何らかの対策は必須なのだが、それもかなり難しい。

 地図(強化型)スキルはレベルが表示されてないので、これ以上探知範囲を拡大させることができない。

 また敵感知スキルに至ってはレベルがもう9なので、レベルを10に上げたとしても劇的な効果は期待できないだろう。

 出口の見えない難題を抱えてしまったようだ。




 レイシス姫の部隊とは要塞までの道程の中間辺りで合流できた。


「ツムリーソ! 無事でしたか!?」


「ハッ。ただいま戻りました」


「して、魔物の軍勢はどうなりましたか?」


「大半は魔族領へと引き揚げて行きました」


「そうですか…………

 ツムリーソ、よく防いでくれました。

 詳しくはルミナスに帰還後に聞くこととします」


「わかりました」




……


…………



 帰りは行きと違って上りであったこと、それに加え戦闘後ということもあり重めの行軍となった。

 もっとも足取りの重さとは裏腹に部隊全体の士気は高く、隊員一人一人の表情も明るかった。

 周囲の兵士に聞くと、南下してきた約2000の魔物と森の中で戦闘になったが、若干の負傷者を出しただけでほぼ完勝したとのことだ。

 死体の回収中に森からチョロチョロ出てきた魔物は、部隊に撃破され逃げてきた個体だったらしい。


 移動中レイシス姫の許可を得て馬車で運んでいる負傷者に回復魔法を施した。

 その際レイシス姫に、『包帯兵士にならなくてもよいのですか?』などと嫌味っぽく言われたこと以外は特に問題なくルミナス要塞へと帰還した。




「…………その飛行種はワイバーンですね。確認されてる飛行種の中で最も高速で飛ぶ種ですよ」


 自分に対して割と好意的な幹部からの説明を受ける。


 現在ルミナス要塞内部の一室で、レイシス姫と部隊の幹部に向けての報告を行っている。

 昨晩のようにレイシス姫の個室でないのが非常に残念だ。

 レイシス姫の昨晩の衣装…………あのセクシーなお姿は未だ目に焼き付いて…………いかんいかん。集中しないと…………









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 来週の8月26日(火)と8月30日(土)の投稿は都合によりお休みとさせて頂きます。

 再開は9月2日(火)の予定です。

 よろしくお願いします。

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