第315話

「では、特殊個体との戦闘その他に関して聞いていこう。

 まず君はどうして戦闘に加わったんだ?」


「どうしてって……」


 そりゃあ2等級パーティー『チェイス』を助けるため……


「この依頼を受ける際に、職員の護衛以外では戦闘に参加する義務のない旨の書類を求めたのは君だろう。

 こちらとしても犠牲者が出た手前、本部に詳細を報告しなければならないのだ」


「自分が戦闘に参加したのは、もちろん2等級パーティーを救うためなのですが……」


「剣が上手く鞘に収まらない言い方だな。

 他に何かあるのか?」


 剣が上手く……??

 あまりこういう悪口みたいなことは言いたくないのだが、仕方ないか。


「その……、派遣された2等級パーティーがあまりにも弱かったので、参戦せざるを得なかったのです。

 あそこで自分がコーディスさんを連れて撤退していたら、間違いなくチェイスは皆殺しにされていたでしょう」


「ふむ……」


「自力での撤退すらできないような戦力を討伐隊として派遣してきた、その判断をしたギルド本部の責任を厳しく追及するべきだと思います!!」


 チェイスにはオーク集落討伐の手際など2等級パーティーとして見るべき点はあった。

 しかしながら、特殊個体に対する手札があまりにも無さすぎた。

 あの様子ではオークキングや高技量型ともまともに戦えないだろう。


「被害が出たのがこちらではないので、本部の責任を追及するのは難しいな」


 ということは、被害が出た側であるギルド本部がこちらに責任がないか追及してくるのだろうか?

 別にここのギルドマスターであるレドリッチが責任を取ることになっても俺には関係ないが、事態が俺にまで波及してくるようなことは勘弁してもらいたい。

 …………いや、待てよ……

 レドリッチが責任を取ると俺の残りの貸し1つ分がなくなってしまわないか?

 責任の取り方にもよるだろうが、ギルドマスターの地位を追われるぐらいであれば短期的には難しくてもいずれは貸しを回収することもできる。

 しかしながら冒険者ギルドからの追放とかになると、もう貸しの回収自体を諦めねばならないだろう。


「君は襲撃してきた三本角の特殊個体については何か知っていたのかね?」


「自分が以前オーク集落討伐の時に戦った二本角より弱い個体だろうとしか……」


 西のアルタナ王国で三本角と戦い倒したことはギルドには報告していない。

 ギルドからの依頼を受けて動いたことではないから、が主な理由だけど自分と冒険者ギルドとの距離感をうまく掴み切れてないような気もする。


「なぜそのように考えたんだ?」


「烈火(=メルクを拠点に活動していた2等級パーティー)の剣士に一本角の特殊個体のことを聞いてまして、自分が戦った二本角との比較から三本角の戦闘力を推測しました」


「なるほど……」


 レドリッチは考え込んでいる。

 こちらの言い分としては特に破綻はしてないはずだが……


「コーディスからの報告では君はこの特殊個体を圧倒したそうだな。

 極めて短時間で倒した、と」


「えぇ、まぁ……」


 完勝したとは思うが、圧倒したとまで言えるかどうか……

 それと、


「時間はあまり関係ないかと。

 強者相手に長々と戦い続けるなんてあり得ません。

 模擬戦とは違って何度も相手の攻撃を防御したり避けたりするなんて無理ですし……」


 それに加えて魔力(=MP)は有限なので長時間に及ぶ戦闘は不利だ。

 もっとも、魔力残量を気にしているということはこちらの攻撃が効かないか、何らかの原因で魔法攻撃が出来ないとかなので、そんな状況だったら逃げることを考えるべきだろう。


「もしまた特殊個体が出現したとしても勝つことはできるんだな?」


「三本角でしたら確実に。二本角は無理ですよ」


 毎日ではないもののずっと続けている魔法の練習は、今は二本角に勝つためを目的として行っている。

 しかしこんなことをわざわざレドリッチに言う必要はないだろうし、こちらとしても勝つ見込みが立つまで二本角との再戦は避けたいところだ。


「ただし、指名依頼は受け付けませんけど」


「むっ!? 現状では君以外に倒せる者がいないのだから、君が特殊個体と戦うべきではないのかね?」


「自分ばかりを当てにされても困りますし、約束を反故にされるのはもっと困ります」


「むむっ?!」


 約束というのはレドリッチとの間に、今後俺への指名依頼を受け付けない取り決めを行ったことだ。


「…………昨日も言ったが、私もギルドも君との約束を反故にするつもりはないと断言しよう」


「それは安心しました」


 冒険者は簡単に拠点を移すことが可能だ。

 三本角だけとはいえ特殊個体を倒せる俺はギルドとしては抱え込んでおきたいだろう。

 実際は姫様やロイター子爵・ゲルテス男爵など、領主サイドや軍隊との繋がりが強い俺が拠点を移すことはよほどのことがない限りあり得ない。

 もっとも拠点を移さずとも冒険者自体を辞めるという選択は可能だ。

 魔物の死体を捌ける売却ルートさえ確保してしまえば冒険者にこだわる必要はないからな。


「これで最後だ。

 特殊個体を倒したという君の魔法を指導してもらいたい」


 そう来たか……


「私は戦闘に関しては専門外だが、それでもあらゆる攻撃を跳ね返すという特殊個体の硬い肌を突破できる攻撃が最重要であるということぐらいは理解している。

 他の者がその魔法を習得できるのであれば、君に頼らずとも特殊個体を倒せるかもしれない」


 俺を当てにするなと言った手前この要請は断りにくい。











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今回の投稿も明日加筆修正します

朝の8時までには行う予定です


※話数のところに加筆予定であることを表記するようにしました

 加筆完了後に表記は消します

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追記)加筆修正済


※予定時刻を過ぎてしまい申し訳ありませんでした

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