第294話

 その後風呂場と寝室で3日間分の奉仕をたっぷりとしてもらった。

 翌朝はロザリナが壁外ギルドへと早々に出掛けたが、ルルカとディア2人とゆっくりまったりとイチャイチャした。

 心地よい疲労感に包まれながら今日はこのまま休みにしようかとも考えたが、ディアの寝具を買いに行くと言った手前そうもいかないので出掛けることにする。


 出掛ける準備をするために2階の自室に行く2人についていく。

 下着姿のまま階段を昇る2人を後ろから眺めるのも実に良い。

 アルタナ王国に滞在した際、同じ部屋で着替える様子もたくさん見ているのでディアもその辺りの抵抗感はないみたいだ。

 ルルカに至ってはむしろ俺に見せるようにして着替えている。


「そうだ! この際、ディアの化粧品とか他に色々と必要な物も買うか」


「化粧など私はしない……」


「そうですね、ディアにはきっちり教えていかないと」


 そっち系の分野には口を出したりはしない。

 どの道俺にはわからないのだが、下手に口出しするだけで面倒そうな気配がプンプンなのだ。

 話題を変えよう。


「そう言えばディアの趣味はなん…………いや、別にいい……」


「どうして聞くのを止める???」


「どうせ美味しいものを食べるとかだろ?」


「ふんっ、私が食い意地が張ってるなどと思っているのなら大間違いだ!」


「(いや、正解だろ)」

「(合ってるわよねぇ)」


「では改めて聞くが、ディアの趣味は何なんだ?」


「料理だ!」


 結局食べ物関連なのはここは触れないでおくとして、以前ルルカはディアの料理の腕は良いと言っていた。南部の……あるいはこの国の料理の仕方に慣れてないだけらしい。


「ならディアも慣れている北方の料理器具や食材を買うか」


「それなんだがなツトム、ルルカさんの買い物に付いて行って見た限りでは、バルーカには北方の料理器具も食材もないぞ。

 もっとも料理器具は部族で使っていた特殊な物がいくつかないだけで、他の物はそんなに違いはないが」


「料理器具はともかく食材もないのか……」


 明日はロザリナ姉妹が王都で母親と再会することになる。

 いずれはディアも故郷の両親のところへ連れて行かなければならない。

 ディアの故郷はこの大陸の北にある大山脈(=アララト連峰)を超えてとんでもなく遠方にあるらしいが…………、飛行魔法でならなんとか行けるだろう。その時に食材なんかを仕入れればいい。

 その前に両親宛に手紙を書かすか。


「料理以外では何かないのか?」


「そうだな……」


「私の本を読んでたわよね」


「ルルカさんお薦めの本は良かったな!」


「なら本屋も追加するか……」


 城にも行く都合上全ての買い物に付き合うわけにはいかないか。


「家具店→化粧品店→古着屋→本屋の順で行く。

 俺は古着屋で荷物を収納に入れたら城に行くから、悪いが本は自分達で持ち帰ってくれ」


 本は買ったとしても数冊程度だから問題ないだろう。


「前回の時と同じ順ですね。わかりました」


 前回とはロザリナの案内で買い物した時のことだ。その時と同じ店を今回も巡るわけだが。

 あっ!? 前回と言えば忘れるところだった!


「ルルカ、本屋の後で下着店にも行って欲しい」


「ディアの下着も私達と同じように注文するのですね?」


「そうだが、自分のも買うようにな。ロザリナに似合いそうなのもあったら頼む」


「かしこまりました」


 ディアの新たな下着姿を想像してニンマリしてしまう。


「お待たせしました」

「準備できたぞ!」


 ほぼ同時に声をかけてきたが……


「アルタナで買ったコートは着て行かないのか?」


 あれがないと2人は目立って仕方ないのだが……


「あんなの着てたら買い物の邪魔だぞ」


「そうねぇ…………ハッ!?

 ディア! 着て行きましょう!」


「えっ?」


「(ツトムさんは私達を他の男性に見られたくないのよ)」


「(ああ、そういうことか)」


「ふふふふ♪」「まったく……」


 なぜか嬉しそうにコートを取りに行く2人。わからん……




……


…………



 城内に入り、まずは家具屋に行く。

 前回と同じように2人と別れて2階にある待機スペースで腰を下ろすと、ルルカがすぐにやって来て隣に座った。


「ディアは大丈夫なのか?」


「ツトムさん、ディアは主婦歴に関しては私より長いのですよ?」


 そうなんだよな。

 あまりそういうイメージはないが、旦那さんが亡くなって商会を引き継いだルルカよりもディアは主婦としてはベテランだ。まったくもってそんなイメージはないが。

 ルルカも商人になったからといって家のことを何もしなくなったわけではないだろうし、ディアにも剣士としての一面があり部族の子供達に剣術を教えていたとのことだが、どちらが負担が大きいかは言わずもがなだろう。


 しかし、ルルカと2人きりのこの状況は俺にとっては好都合と言える。


「ルルカ、改めて確認するがディアとは上手くやっていけそうか?」


「もちろんです。

 話し方が不器用なところがありますが、とても優しい女性ひとですよ」


「ルルカも優しいぞ。もちろんロザリナもな」


「ツトムさん……」


 ルルカが俺の肩にもたれかかってくる。


 ルルカとロザリナが優しいのは事実ではあるが、ディアは2人に輪をかけて優しい。

 それが行き過ぎて心配性になることもたまにあるが、それは長所の裏返しだろう。


 ともかくルルカの承認は得た。あとはロザリナだな。


「ツトム! 選び終わったぞ!!」


 なんだかんだ言いながらもショッピングを楽しんでるディアが上機嫌でやって来た。

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