第290話
夕方にバルーカに到着する。
まずは今回の獲物を解体場へと持って行く。
他の者は出発前に集まった部屋で待機している。
オークの売値は1体4000ルクだった。
一時期よりかなり値が下がっている。
理由を聞いてみると、
「新しく南の砦からの仕入れルートができたからな。
今後も価格は下がっていくと思うぞ」
南砦で結構な数のオークを狩っているのか。
これだけ値が下がっていると、ここで大量に買って帝都に持って行って売ればかなり儲かりそうだ。別に金に困ってるわけではないのでやらないけど。
あれ? 確か軍隊は……
「軍は派手に倒すから売り物にならないと聞いたことがあるのですが?」
それを聞いたのは壁外区ギルドだったか。
「基本はそうなんだろうが、砦だと自分達の食事を賄う必要があるからな。
前の砦が奪われる前もオークは供給されてたぞ」
俺が砦にいた10日間では小規模な偵察隊を出す程度だったが、それは奪還直後だったからで、今はバルーカに供給できるぐらいの数を狩れるほどの部隊を出撃させているということだろうか?
それとウェルツパーティーが倒したオークリーダーは武器防具を除いて6000ルクでの買い取りだった。
武器防具と言ってもジェネラルなどが装備してるような立派なモノではなく、鍛冶屋に持って行けばくず鉄として買い取ってくれる程度のシロモノだ。
最終的な3日間のスコア
ウェルツパーティー …47体
ムドゥークパーティー…34体
リュードパーティー …32体
5等級ツトムパーティー…23体
リュードパーティーまでも30体を超えているのは、街道に着くまでの過程で戦闘が発生したためである。
皆が待つ部屋に行き、各パーティーに分配金を配る。
まずはウェルツパーティーから、金額は19万ルクにオークリーダーの武器防具だ。
「お世話になりました」
「こちらこそ3日間ありがとうございました。
特に、この連合パーティーの主力を良く担ってくれました。
今回の課題を達成できたのはあなた達のおかげです。
深く感謝します」
「い、いえ、お役に立てたのなら嬉しいです」
次はムドゥークパーティーだ。ポニーテールなメランダさんもいる。
分配金を渡して先ほどと似たようなやり取りをした。
彼らはゼアータさんにも礼を言って部屋を出て行った。
最後にリュードパーティーだ。
分配金を渡し、
「なんと言うか……、ご迷惑お掛けしてスイマセンでした」
「とんでもない!
オークと戦うのが初めてなのに良く頑張ってくれました。
初日の終わりぐらいには安心して見てられましたよ」
最初はどうなるかと思ったけどな!
途中ロザリナがつきっきりで指導したのが良かったのだろう。
魔術士に槍を持たせた俺の判断もナイスだった!
ロザリナにも礼を言いたいのだろう。
彼らはそのままロザリナの前に整列して……ん? 整列??
「ロザリナ教官! ご指導いただきありがとうございました!」
「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」
「皆よくやったわ。
ツトム様のお役に立てたことを誇りとしなさい」
そんな大げさな!?
彼らだって自分達のために参加したのだし。
「教官! また指導してください!」
「ええ。その時まで研鑽に励みなさい」
「壁外区のギルドに指導を受けに行きます!」
「私はたまにしか顔を出さないわよ?」
「今度食事でも……」
「ごめんなさい。個人的な誘いは受けられないわ」
「今度相談に乗って頂きたいです。同じ女性として……」
「私は壁外区のギルドでたまに指導してるからその時にね」
ナ、ナニコレ???
いつの間にこんなに手懐けたんだ?
確かにリュードパーティーを指導させたが、何か特別な指導をしてるようには見えなかったが……
「ほら! オマエ達も受付に行ってギルドカードを交換してこい!」
コーディスに促されて受付へと向かう。
ちなみに俺達の分配は1人5体で、俺だけが余った3体を加えた8体ということになった。というか、そうさせられた。
当然自分達が倒した分のオークは換金するようなことはせずに、俺の懐から3人に5体分の2万ルクずつ支払った。
どうせオークが収納に貯まれば帝都に売りに行くのだ。その時に一緒に売れば差額分儲かる。
6等級の分も同じようにしなかったのは、さすがに1体も売らないとなると不審がられると思ったからだ。
所持金 →811万2,200ルク
帝国通貨 353万1,500クルツ
「おめでとうございます! こちらが4等級の冒険者カードとなります」
受付で昇格手続きを済ませ、4等級の冒険者カードを受け取った。
これまでの5等級の冒険者カードと比べて少し小さく、カード前面の模様も違っている。
ロザリナ達3人は受け取った4等級のカードを感慨深く見ている。
彼女らにとっては数年来の悲願だったわけで、様々な想いが胸の内を駆け巡っているのだろう。
「それではツトム様、明後日の朝に御自宅に伺いますので」
「ツトム君王都行きはよろしくね!」
「お待ちしてますね」
サリアさん、ゼアータさんと別れる。
「ロザリナ、サリアさんのこと良かったのか?」
思えばロザリナの意見をまだ聞いてなかった。
自分より先に妹が冒険者を辞めることをどう思っているのだろうか?
「妹が自分で決めたことですから。私としては妹の意向を尊重するつもりです」
「もう気軽に会えなくなるのにいいのか?」
「寂しくなる、という気持ちはあります」
ロザリナが買われる時に唯一出してきた条件(というか希望)が妹に会うことだった。
それができなくなるのは『寂しくなる』の一言では済ませられないぐらいの想いがあるはずだ。
「ですが、ロクにパーティーも組めないまま最前線であるバルーカで冒険者活動を続けるよりは安心できますので」
家族としては身の危険の及ばないところに居てくれた方がいいってことか。
彼女達の新たな拠点であるナラチムの街は王都から北へ3日の距離にあるらしい。
俺の飛行魔法なら短時間で行けるので二度と会えなくなるということはない。
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