第281話

 ウェルツパーティーが既に同時に2体と戦闘に入っていた。

 手出しするのを控えて立ちすくむリュードパーティー。

 パーティー単位での戦闘であれば横殴りするのはマナー違反だが今回は違う。


「リュードさん達、構わず攻撃して!」


 俺の声に反応して攻撃を始める。

 しかし攻撃が弱いのか、中々オークのターゲットを取れない。


 ウェルツパーティーのアタッカーが2体目からリーダーが抑えている1体目にターゲットを変更し、1体目のオークはもううすぐ倒せそうだ。

 ムドゥークパーティーは手間取りそうだが戦い自体は優勢だ。

 問題なのはやはりオーク討伐未経験のリュードパーティーだ。


 現在ウェルツパーティーの剣士がオークと主に対峙していて、リュードパーティーは横から背後から攻撃し放題なのだが……

 距離を詰めての踏み込んだ攻撃ができずに大したダメージを与えられないでいる。

 ウェルツパーティーが担当のオークを倒してリュードパーティーを援護しようとするが、それを手をかざして抑える。

 ただでさえ1人プラスして戦っているのに、これ以上援護されたらパーティー単位で戦う意味がなくなってしまう。


 俺達5等級パーティーが護衛して他のパーティーもいる、この安全性が担保された状況なのがダメなのだろうか?

 もし単独パーティーで戦っていたら、長引くと他の魔物も襲ってきて全滅してしまうかもしれない。

 なるべく短時間で倒すよう工夫なりなんなり努力するはずだ。

 リュードパーティーからは例えリスクを負ってでも敵を倒すといった気迫や覚悟は感じられない……


 あれは王都でルルカを買ってバルーカに戻ったぐらいだったか。

 オーク相手に近接戦闘を挑んだことがある。

 結果は踏み込みが足らずに倒し切れずに最後は魔法で倒したのだが、言うても剣術素人の俺が単独で戦っても失血死は狙えるレベルだったのだ。

 近接戦闘職が何人もいるのにこれではダメだろう。


 そしてさらに問題なのが魔術士だ。

 まだ少年な感じの魔術士はサンドアローを撃ち込んでいるのだが、まったくと言っていいほど攻撃力がなく、オークもほとんど魔法を無視している。顔付近に着弾しそうな時だけ腕で軽く払う程度だ。

 ここまで攻撃力のない魔法は今まで見た記憶がない。

 同じ6等級のタークさんパーティーの魔術士スクエラさんは当初火力不足で悩んでいたが、それでもサンドアロー2~3発でオークを倒していた。

 魔法指導した際の軍の魔術士も皆それなりの威力の魔法を撃っていたし……

 緊急招集の時はどうだったかな? あの時は周りを見る余裕があまりなかったけど、極端に威力の低い魔法は見てないはずだ。

 この問題の多いリュードパーティーをなんとかしないとノルマ達成はできないぞ。どうしたものか……


 向こうではムドゥークパーティーがオークに止めを刺したみたいだ。


「ブォォォォォォォォ」


 仲間がやられて囲まれると思ったのか、オークが向きを変えて逃げようとする。

 結果的にその行動が剣を振ろうとしたリュードとの間合いを詰めさせ、腹部を深く斬り裂いた。

 腹を抑え膝を着いたオークに止めが刺され戦闘が終了した。


 倒した3体のオークを収納し、ひとまずは休憩を宣言する。


「ちょっとこちらに集合」


 ロザリナ達を6等級から少し離れた場所に集める。

 本当ならこの休憩時間を利用して偵察に行きたかったのだけど、戦い方のほうをなんとかするのを優先する。


「各パーティーの担当者を決めて戦闘面での助言をして頂こうと思うのですが」


「そうだね。特にリュード君のパーティーはこのままではマズイわね」


「この中で教えるのが上手いのは……」


「ロザリナだね」

「姉でしょう。ギルドで指導もしてますし」


 まぁそうだろうな。

 体育会系の指導法なのが気になるところだが、今回はアドバイスだけだから平気だろう。


「ではリュードパーティーはロザリナ、頼む」


「かしこまりました」


「ムドゥークパーティーはゼアータさん、お願いできますか?」


「了解したよ!」


「最後にウェルツパーティーをサリアさんでよろしいですか?」


「私ではあまりお役に立てそうにありません。

 特にリーダーの子は私より強い感じですし……」


「ウェルツ君のとこは特に助言は必要ないと思うわ」


「そうですね。なら弓術士を見て頂くというのはどうでしょう?」


 弓術士はウェルツ・ムドゥーク両パーティーに1人ずついる。


「それでしたら承ります」


「ツトム様、魔術士に関しては私では…………」


 まぁそこが問題となるよな。

 俺がアドバイスできれば1番良いのだが、基礎的なことは魔法の才能スキル任せだった俺では具体的な指導がまったくできない。

 魔法の威力がこれだけ低いと応用面を教えても効果なさそうだし……


「それにしてもあの腕でよく魔法学院を卒業できたな」


「彼は魔法学院出身ではないと思います。

 魔法学院卒業者が冒険者になるのは極少数ですし、卒業前に各地のギルドや上位パーティーに囲われてしまいますから」


 確か国に仕えることで学費や寮費が免除されるのだったか。

 平民のほとんどは国に仕えるだろうし、貴族が冒険者になるのも極めて稀だろうから、富裕層の卒業者の中で極少数の訳ありが冒険者になる感じか。

 そうだよな。魔法学院卒の経歴があれば危険な冒険者になるよりも、他に安全で高給な就職先はたくさんあるのだろう。


 ん?

 つまり魔術士の冒険者はほぼ魔法学院出身ではないということになるな。


「ひょっとして…………6等級や7等級あたりの魔術士はあんな感じなのが普通なのか?」


「そうですね。彼が特別劣っているわけではないのは確かですよ」


 マジかよっ!?

 なんとなくスクエラさんが一般的な魔術士なんだろうと思い込んでいたけど、意外に優秀だった?! いや、意外とか言ったら失礼なんだろうけど……

 俺に飛行魔法を教えてくれたネル先生なんかは、スクエラさんより年下なのに5等級なのだから超優秀ってことになる。伊達に学級委員長な雰囲気は出してないってことか!

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