第271話
「死霊術に関してはわからないことが多いし、俺に習得できるのかも不明だ」
スキル欄に表示がないので習得不明なのは確かだ。
未習得状態での薄黒い表示さえされればポイント使って習得ができる。
「それに明日申請しても魔術研究所への立ち入り許可が下りるまでには1ヵ月ぐらいかかるらしい。
まだ先の話だ」
置き場所の第1候補は西の森の拠点で、第2候補は特にはないが、南砦の周辺にでも拠点を作るか。
いずれにせよ戦力を置くとなるとロイター子爵の許可も必要になってくるか?
元が死体なのだからアンデットになるのだろうか。
とすると、食事も水も必要ないのか。
それでも何らかの活動エネルギーは必要になるはず。
わからないことが多過ぎる。あれこれ考えるのは死霊術を習得する時でいいだろう。
「それで明日の王都行なんだがルルカ、実家から帰った時に話した王都の宿で何日か休暇にするか?」
「休暇なんていりません。大体どうして王都なんですか?」
「別に他の土地でもいいけどさ、王都ならティリアさんとも会えるだろ?」
「ティリアには会いませんし、他の土地にも行きません!」
「わ、わかった。他に何か願いとか希望があれば言うようにな」
「むぅ…………」
「ロザリナは王都には……」
「申し訳ありません」
だろうな。まだサリアさんとお母さんのことを話し合ってないのだろうか?
「別に構わないぞ。
ディアはどうだ?
俺と一緒に王都に行くか?」
「行きたくない訳ではないのだが、私はまずここバルーカのことを知らなければならないと思う」
「そうか……」
ディアの場合は買ってわりとすぐにアルタナに行くことになったからな。
「ところで、プリンとアイスクリームはどうだ?」
「このプリンはいいな! 甘くてぷるぷるしてて!」
まぁ女性に甘い物+初めての菓子のコンボなら外れはないな。
「ただ、こっちのアイスクリームは……」
「どうした? 遠慮なく感想を言ってくれ」
「あ、ああ。
私が暮らしていた北方はああいったモノがなくとも、部屋の中でも物が凍るぐらいの寒さでな……」
ディアが我が家にある業務用の冷蔵庫を指して言う。
「なので冷たい系統の菓子類は結構充実している。
なんなら食事の代替えとしてそれらを食べることもあるぐらいなのだ」
「つまり、普段から食べてたモノなので菓子的な楽しさというかありがたみがないって感じか?」
「有体に言えばな。
もちろんこのような砂糖をたっぷりと使ったモノではないのだが、やはり冷たい菓子には北方の果物で味付けするのが一番いい」
故郷の味が一番ってとこか。
「そういうことなら無理に食べなくて構わない。
余ったアイスは2人に食べてもらうといい」
受け取ったアイスを半分ずつにして速攻で食べる2人。
「ディアにはこっちのほうがいいか?」
収納から王都のパンを出す。
「わ、私だけいいのか?」
「遠慮せずに食べるといい。
2人も構わないだろ?」
「もちろんです」「問題ありません」
ルルカ達は余分にアイスを食べれて、ディアは王都のパンを食べられる。
誰も損をしない良い方策だ。
食後はいつも通り4人で風呂に入る。
と言っても、アルタナ王国で滞在した宿には風呂がなかったので久しぶりではある。
風呂のない宿では有料でお湯が提供される。
アルタナで宿泊した宿だと桶1杯分で200ルク、タライで400ルクだったか。
高級宿だったので、普通以下のランクだともっと安価で提供されるはず。
もちろん俺は自力でお湯を用意できるので大きいタライだけ別途購入して自分達で済ましていた。
宿の部屋のベッドでくつろぎながら、女性達が身体を洗う様子を鑑賞するのは実に良かった。
新参のディアの恥ずかしがり具合なんか特に……
一方ルルカとロザリナは俺の視線など意に介さず堂々とした態度だったが、それはそれでこちらが覗いてる気分を味わえるという隙の無さ!
また今度みんなで宿に泊まる時は、もう1度風呂無しの宿に泊まるのもいいかもしれない。
いや、むしろ風呂無し宿を積極的に捜して泊まるべきだ。(もっとも積極的に捜さなくてもほとんどの宿は風呂無しではある)
もっと言うなら、風呂無し宿に泊まる為にみんなで旅行に行くべきなのだ。
3人の美女の脱衣シーンをねっとりと鑑賞しながらそのように結論付ける。
先ほど話し合った王都行きは、結果的に様々な事情が絡み合って俺の単独行になってしまったが、本来は主人である俺がどこか遠くに行くとなれば黙って付き従い、エロエロご奉仕するのが(俺の)奴隷としての役目である。
しかし、具体的にどこに行くか、となると中々難しい。
アルタナは行ったばかりだし、コートダールもルルカと行ってさほど日が経ってない。ロクダーリアは出身者のルルカが行くのを嫌がってるし……
「(ツトムが1人で何やらブツブツと呟いてるのだが……)」
「(ああいう時のツトムさんは大概ロクなことを考えてないわよ)」
「(アルタナから戻ったばかりですし、しばらくはゆっくりしたいです)」
どのような名目でどこに行くかを考えていると、ルルカが目の前で裸体にタオルを巻き、
「さぁ、こちらへ……」
3人によってあっという間に脱がされて風呂場へと誘われる。
うん……
結局のところ気兼ねなくイチャイチャできる家の風呂が1番だな。
…
……
…………
次の日、まずは壁外区の冒険者ギルドに顔を出すと、
「ツ、ツトムさん!!」
こちらから声を掛けるまでもなくミリスさんが駆け寄って来て個室に連れ込まれた。
「け、結果は?
武闘大会の結果はどうなりましたか?」
何やら鬼気迫る感じで聞かれる。
「予選は突破しました、本選では初戦で負けました……けど……」
「予選突破…………
やった! 勝ったぁ!!」
勝った??
「あの~?」
「は!? こほん。実はアルタナ王都の冒険者ギルドに依頼を出して、ツトムさんの賭け札を買ったんですよ!」
「職権乱用ですか?」
「とんでもない! こちらとあちら、2ヵ所のギルドで手数料を取られますが、一般の方も利用できる正規のルートです!」
他に配送料も加算されるのだろう。
それでも直接行くよりは費用も時間も節約できる。
「大きな金額ですのでこちらへの輸送は貴重品枠になりますが……
勝ってくれるって信じてましたよ~、ツトムさん!」
「よ、よかったですね……」
この微妙な気持ちはなんだろう?
純粋に応援されなかったからだろうか?
俺自身もかけ札を買って儲けてるのだし、素直に喜ぶべきなんだけど……
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