第197話
メルクの合同冒険者パーティーと別れて砦への帰路に就く。
ヌーベルさんやフライヤさん、それと救出した3人の女性と会ったのも久しぶり……と言えるかどうか微妙だけど、20日弱ぶりに会ってみんな元気そうで良かった。フライヤさんのウザさは相変わらず……コホン。ハイテンションぶりは健在だったけど。
この合同パーティーを統率していたギルド職員さんの話だとかなり危なかったみたいだ。
目標である集落のオークと戦っている時に、バルーカ襲撃の残党集団に柔らかい横腹を突かれたらしい。ということは俺は結構おいしいタイミングで参戦できたのかもしれない。
最初の上空からの攻撃&着地も上手く決まった。
昨日試しにとちょっとだけ練習した、上空から落下して地上付近で九頭風閃を放ち滞空魔法で着地するという流れだ。
この方法は落下地点の敵を吹っ飛ばせるのが利点だが、それ以上に見た目が超派手なのが最大の特徴なのだ。
地面に落着する直前に魔法を放って即滞空魔法で着地というかなり際どいタイミングでの魔法使用が要求されるのだけど、練習含めて全て成功している。これも『魔法の才能』スキルの効果なのだろうか?
だとしたらなぜ練習の時に試した落下中に的を狙うことはできなかったのか?
『魔法の才能』スキルは魔法使用のタイミングには補正がかかっても狙うことに関しては効果がない?
う~ん…………
これまで複数を同時発射する際は外れるケースが多々あるけど、単発で狙う場合はほぼ当てることができてるからなぁ。敵が避けたりするのは別にしてだけど。
まぁあまり『落下中』という限定的な状況にこだわっても仕方ないので、今後は他の魔法の練習へとシフトさせよう。
そういや魔術士の女の子にお礼がしたいからと熱心に誘われたな。結構スタイルが良くて胸元から覗けたお山も中々だった。まぁこちらのストライクゾーンからかなりボールゾーンに外れてはいたので丁重にお断りしたけど。
あと戦果確認するはずの魔術士はどうしたのだろう?
戦闘しているところをちょっと見ただけで帰ってしまったのかねぇ。こちらに一言ぐらいあってもよさそうだけど、まぁ冒険者はそんなものか。
「ただいま戻りました」
砦に戻り指揮所で団長(=ゲルテス男爵)に報告する。
「待っていたぞ。して首尾は?」
「魔物の残党はメルクの冒険者討伐隊と交戦中でしたのでそこに介入して殲滅しました」
「そうか。君にしては結構時間がかかったな。手こずったのかね?」
「いえ、戦闘自体は短時間で終わりました。特殊な個体もおりませんでしたので。
時間がかかったのは敵が思っていた以上に東に移動していたのと、メルクの冒険者達が疲弊していたので安全な街道まで護衛した為です」
「それはご苦労だったな。
そして冒険者オグト。君もこの件はこれで構わないな?」
「は、はい…………」
明らかに納得はしてない感じだな。
あっ……と、これは聞いておかないと、
「今回の討伐で回収した死体はどうしましょう?」
「解体して食べてしまおう。
補給担当も糧秣の備蓄が増える分には文句もあるまい。
オイ! 彼を解体場に案内してくれ」
「はっ!」
まぁ俺のモノにはならんよなぁ。当然だけど。
昨日倒したオークジェネラル高技量型も取り上げられてしまうのだろうか?
これだけは何とか譲ってもらわないとな。昨日までの指揮権は団長ではなく伯爵だから、ロイターのおっさんに頼めば……いや、俺の担当はナナイさんなのだから彼女に言うべきだな。
解体場は冒険者ギルドにあるような本格的なものではなく、倉庫の隣の建物の1階を仮利用している感じだった。
200体以上の死体を解体場と倉庫の両方に積み上げる。ゴブリンとコボルトはいらないと言われてしまった。
作業を終えて倉庫から出ると、
「オイ!」
指揮所で団長にしきりに出撃を志願していた4等級冒険者のオグトに声をかけられた。
彼の後ろにはパーティーメンバーらしき4人を引き連れていて、その内の1人は戦果確認のあの魔術士だ。
「なんでしょう?」
「今並べたオークは本当にお前が倒したのだろうな?」
あれ?
「メルクの冒険者達が倒した分も含まれていますよ。
あちらが持ち切れなかった残りを全て回収してきましたので。
そちらの魔術士が確認しているのでは?」
「ウチの魔術士を振り切っておいてよく言えたもんだな!」
「別に振り切ったつもりはないのですが……
ひょっとして現場も見てないとか?」
「速度を上げて追いかけたのだけどそれが仇となってね。
そのままでは魔力切れになりそうだったんで途中で引き返したんだよ」
魔術士が答える。
感情を露わにする感じではなく普通に話し掛けてきたので、オグトとの温度差に俺の方が逆に驚いた。
「そう……だったんですか。
すいません、自分ソロなんで団体行動が苦手でして……」
理由になってねぇぇ!
まさか等級が上の年上の先輩に向かって、『お前の少ない魔力量が原因だ』とは言えないからなぁ。
せめてオグトと同じように突っかかってきてくれれば言い返せるのだけど。
「気にしないでくれ。3等級相手に勝ったというその片鱗を見させてもらったよ」
「そんなことはどうでもいい!!
こっちはお前の戦果を確認していないんだ。
オークの死体を並べたぐらいで、『はいそうですか』と引き下がる訳にはいかないんだよ!!」
「えっと、メルクの冒険者ギルドに問い合わせて頂ければ確認可能かと思いますが?」
「そんな時間のかかるまどろっこしいやり方をするつもりはない!」
「でしたらどうしろと?」
「確かツトムだったな。
俺と対戦しろ。
男爵が言っていたその実力とやらを証明してみせろ」
あーそうきたかぁ。
実力を証明したところで俺になんのメリットがあるのだろう?
いや、別に断る理由もないけどさ。
「いいですよ。やりましょうか」
収納から木刀を出して構えるが、
「ふん!
こんなところで勝っても後で、『魔法が使えなかったから負けたんだ』と言い訳されても面倒だからな。
ついて来い!」
砦の西門(現在地から近いからだろう)へ向かうオグトについていく。
なんか今朝も同じような感じで砦の外へ歩いたのだけど……
これでオグトに負けてしまうとまたレイシス姫に激おこ状態で待ち伏せされるのだろうか?
案外無様な結果に落胆して俺をアルタナ王国に取り込もうとするのを諦めるのではないだろうか?
ここはワザと負けるのもアリかもな。
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