第143話
「最後に本人に接触した際の情報です。
『
とのことです」
元気がないのは2人の娘とずっと音信不通だからだろうし、腰に関しては早急に命に関わることではないだろうから、今日慌てて回復魔法する必要はないだろう。
それにしても素晴らしい調査報告だった。
「これは何人パーティーで調べてくれたのですか?」
「7等級の4人パーティーです。あなたと同じぐらいの年代の子達ですよ」
15~16歳でこれだけ完璧な仕事をするとは……
これは(精神的な)年長者としても先輩としてもきっちりと評価せねば。
「時間的な制約がある中でよく調べてもらったので追加報酬を払いたいのですが可能ですか?」
「成功報酬としての支払いが可能です。普通は依頼受付時にそのように条件設定するのですが……」
「追加で、という形は珍しいですか?」
「そうですね。少なくとも私は初めてですし聞いたこともありません。
つきましては成功報酬にも手数料を頂くことになりますがよろしいですか?」
「大丈夫です。成功報酬は8,000ルクで」
奮発し過ぎか?
ま、まぁ吉報を運んでくれたという御祝儀的な意味合いを含めれば有りでいいだろう。
手数料含めてその若いパーティーの評価に繋がるはず。
恐らく隣にルルカがいれば素敵なジト目をくれていただろうな……
「では手数料含めまして9,200ルクとなります」
支払いを済ませ、
「ちなみにリーダーの名前は?」
「アリサです。あなたと同じ魔術士ですよ」
「ほぉ……」
このショートヘア受付嬢は俺が魔術士であることを知っている?
『なぜ俺のことを知っている?』と聞きたいがちょっと自意識過剰過ぎるだろうなぁ。
「覚えておきますね」
今度王都で依頼する時には指名することにしよう。
同年代で有能な女性リーダーにも興味がある。もちろん性的な意味ではないぞ。
「ご利用ありがとうございました」
ギルドを出る。
王都での用事は全て済ましたはずだ。
ティリアさんに挨拶はしないとルルカと約束してしまったし、後は…………行くとするなら奴隷商か。
う~~ん。既に帝国通貨で10万クルツ支払っているということもあるが、帝都の奴隷市場は人材豊富そうで気になる。
それにこういうことは当初の予定を変えないほうが良い気がする! 最初性欲に負けずにバルーカで奴隷を買わなかったおかげでここ王都でルルカに出会えた訳だし。
ここは素直に家に帰ることにした。
所持金 164万5,170ルク →155万3,870ルク
帝国通貨 893万6,500クルツ
当初母親が息災だったらロザリナには黙っていようかと考えていた。
だけどどうせならこの休み中にロザリナ姉妹と母親を会わせてみるのも有りかと思い始めた。
調査報告を受けるまでの無事かどうかがわからないドキドキ感が、一日でも早く母親と再会させたいという気持ちに傾けさせたのは否めない。
「ただいま」
玄関のドアを開けるとまたもルルカが待っていた。
「お帰りなさいませ」
ルルカと抱き合いキスをする。
「別に玄関で待ってなくてもいいんだぞ」
「今日は偶々ですので」
昨日も同じやり取りしたよ!
まさか俺が出掛けてからずっと玄関で待ってる訳ではないだろうな(汗
後でロザリナに確認しないと……
「ロザリナの母親は無事元気だったよ」
ルルカの耳元で声を落として言った。もちろんちょっとだけつま先立ちになりながらだ。
「それは良かったですね」
「予定を変更してロザリナに言うことにしたから」
「かしこまりました」
夕食時、
「ロザリナ、今日王都に行ったついでに母親のことを調べて来た。
喜べ、無事息災のようだったぞ」
「あ、ありがとうございます。
母はまだ50代ですのでわざわざお調べにならなくとも……」
えっ?
「私もそう言ったのだけどツトムさんがどうしても調べたほうがいいって聞かなかったのよ」
ええええっ!?
「10年以上会うどころか手紙のやり取りさえなかったのだろ?
普通元気でいるか心配にならないか?」
「特には……
母は王都に住んでいますし、危険な前線住まいでもありませんので」
なんなんだろう?
赤の他人である俺が無事かどうかでドキドキしたのに、実の家族のこのドライさは……
「でも日常生活の中で病気になったりケガをすることもあるだろ?」
「そういう場合には致し方ありません。それが母の運命だったのでしょう」
マジかよ…………達観しているというかなんと言うか……
医療が発達していない時代は地球でもこうだったのだろうか?
まさかこんなことで世界間ギャップを感じることになろうとは……
「何にせよお母さんは元気だったんだ。明日にでも妹さんと会って話してくるといい」
「わかりました」
この翌日、ロザリナは妹に会いに行ったが不在だった。護衛依頼を受けてバルーカに戻るのは10日後になるという。
結局俺が精神的に安堵した以外急いで調べた意味はあまり無かった……(涙
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-王都の冒険者ギルド西壁外区出張所にて-
「アリサ、昨日の調査依頼で成功報酬が出てるわよ」
「ホントですか? ラッキー!」
「はい。これが追加報酬の8,000ルク」
「わ!? こんなに! 元の依頼料より多いなんて?!」
「依頼主は短時間なのに丁寧に調べていたことをかなり評価していたわよ」
「あれは調査対象の店に行ったらたまたま奥さんが店番していて速攻で依頼を達成しちゃったので、せめて時間まではと調査を続けただけなのに……」
「簡単なことなんだけど意外とそれができない冒険者も多いのよ。
自分が依頼する立場だったのなら冒険者にどのようなことを望むのか、これを意識するだけでも依頼の達成率や依頼主の満足度はかなり違ってくるわよ」
「達成率はわかりますが、依頼主の満足度ってそんなに重要ですか?
もちろんこうやって追加で報酬頂けるのは凄く嬉しいのですけど、こんな事滅多にありませんよね?」
「あなたねぇ……」
ショートカットな受付嬢は深くため息を吐く。
「い~い?
あなた達のような戦闘が得意ではないパーティーはこういう戦闘の絡まない依頼が主戦場なのよ?」
「それはわかってますけどぉ」
「わざわざ等級の低いパーティーに好き好んで指名依頼するような依頼主はいないわ。
だからこそ低等級パーティーにとって最初に指名依頼されるその1回目が超絶重要なのよ!
なぜなら中等級以下のパーティー界隈ではこのような格言があるの。
『指名は指名を呼び込む』」
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