第106話
「やはり報告とか必要だったりします?」
レドリッチは事前に知らせろと言ってきているんだよなぁ。
「特にその必要はありませんよ。
ツトムさんの専属担当としては知っておきたい気持ちもありますが」
いつの間にやらミリスさんが俺の専属になっていたようだ。
残念な部分もあるけど話し易いし助かるかな。
「軍とのやり取りはこちら(壁外ギルド)では城内ギルドを介して行っているのみでして、基本的には情報は下りてこないのです。
もっとも今までは軍と関わるほどの冒険者がいなかったので当然なのですが」
「明日の軍議に参加しますので何か新情報があったらミリスさんにお知らせしますよ」
「私のほうも所長からギルドマスターに釘を刺してもらいますね。
権限的にはあちらのほうが全然上なのですが、こちらとしても本部に報告するという手段もありますので早々無茶なことはできないかと思います」
「助かります」
壁外ギルドの所長さんが注意してくれるのは有り難いな。
レドリッチも自分の地位を賭けてまで俺にちょっかいをかけてはこないだろう。
ギルドマスターとの面会が思わぬ展開になり肉体はともかく精神的にはどっと疲れてしまった。
こんな時は軽く狩りでもして家に帰って2人とのイチャイチャを楽しみたいのだが、黒オーガ(一本角)の調査を疎かにすることはできない。
現状では単独ではまず勝てないだろうし、ランテスからの助言通りに出会ったら即逃げの相手だからな。
壁外ギルドを出てメルクに向けて東へと飛ぶ。
途中以前オーク集落討伐の為に馬車で乗り付けた南東の森入り口の地点を過ぎる。
確かタークさんのパーティーを助けた時にオーク集落を発見したんだっけ。
その時オークにも家族がいて生活を営んでいることを再認識してちょっと凹んだんだっけか。
あれからまだ一月弱しか経っていないのに随分と昔のことのように感じるのは何故だろうか。
その後街道はゆるやかな上り坂となり街道の右手(南側)は崖を形成し始め、左手(北側)には雑木林が生い茂る小高い丘とその奥には田園地帯が広がっている。
20分ほど飛んで見えてきたのがバルーカより一回り小さい街だった。
囲んでいる城壁は南面が崖に沿って建てられており、自然の地形を利用した天然の要害となっている。
壁外区はなく北に向けてバルーカとの間の街道より立派な街道が伸びていた。
街の手前で降りて西門から入っていく。
入城料みたいなものは徴収されなかった。
王都でも北の街のドルテスでも徴収されなかったしどうしてバルーカだけ入城料を徴収されるのだろうか? 不思議だ……
メルクの街並みは他の街と大差なかった。
バルーカよりも多少3階建ての高層建築物(この世界では3階建てでも十分高層建築なのだ)が少ない程度か。
バルーカとの決定的な違いは内城がないことである。
領主は恐らく大きな屋敷が立ち並ぶ南東の区画に住んでいるのだろう。
辺りを見渡し冒険者ギルドを探すが……ギルドのモチーフである剣と盾が彫られた看板が見当たらない。
ここで必殺幼女に聞こう作戦でも発動しようかと周囲を探すが、肝心の幼女の姿は見えずに路地のところで男のガキが木の棒で剣術ごっこをしてるのみである。もちろんスルー確定で。
仕方ないので普通に女性を探して聞くことにする。
おっ。
向こうの通りに美人な奥さん風の人が……ただ貴族的な匂いもするのでそんな婦人がギルドの場所なんて知ってるだろうか?
ちょっと躊躇していると視界に赤毛の女性剣士が飛び込んで来た。20代前半のお山は普通かそれよりやや小ぶりだが美人さんだ。
動き易そうな革鎧に身を包んでおりなんと言うかヒロイン風なオーラがにじみ出ている。
間違いなく冒険者だろうと思い声を掛けた。
「あの~すいません、冒険者ギルドの場所教えてもらえませんか?」
「ギルドは北門の近くよ」
「ありがとうございます」
まっ、当然のことながら何か特別なイベントが起こる訳でもなく……
今度から幼女がいなかったら場所聞くだけならおっさんでもいいかと思いながら北門に向けて歩き出そうとすると、
「ちょっと待って! 私もギルドまで一緒に行くわ!!」
!?
「お気遣いは嬉しいのですが1人で行けますよ?」
「ううん、私もギルドに行こうかなって悩んでいたところだから気にしないで!!」
「はぁ……、ありがとうございます??」
特別なイベントが起きちゃったよ!!
一体どうしたんだ!?
「あなたメルクは初めてなのよね? 何しにメルクへ?」
「ギルドで調べ物をしにこちらへ」
『こっちのほうが近道よ!』と路地に入り入り組んだ道を進む赤毛さんの後をついて行きながら質問に答える。
恐らく直角三角形に例えると底辺→高さと進むより斜辺を行った方が早く着ける的なことだと思うのだが……
どうも雰囲気的に焦ってるような急いでいるような感じが伝わって来る。
「あなた、冒険者なのよね?」
「はい。バルーカで冒険者しています」
今は鎧も着てないし武器も持っていない、完全な私服姿だから確認するのも仕方ない。
決して子ども扱いしてる訳ではないはずだ。
それにしても……
正面からでは鎧が邪魔でわからなかったが、後ろから見るお尻と太ももの白さが奏でるハーモニーは最高である。
この鎧の下に着ているのは何だろうか?
パンティーでも水着でもレオタードでもないようだが、お尻のラインを際立たせる至高の一品だ。
なんとしても手に入れてルルカやロザリナに着てもらいたいところだが、まさか赤毛さんに『そのエロイおパンツはなんですか?』と聞く訳にもいかない。
どうしたものか……
ロザリナに聞けば同じ剣士なんだしわかるかもしれないな。
ただ……
横で聞いてるであろうルルカから送られる蔑んだ視線が今の段階で突き刺さって来る。
もっとこう男の欲求に寛容でもいいと思うのだがなぁ。
まぁなんだかんだ言っても俺の希望は叶えてくれるし、普段とのギャップでエロさ増し増しだからいいのだけど。
「ここよ!!」
細い路地から大通りに出てすぐのところにギルドはあった。
実際近道だったのかもしれないがとてもじゃないが初見で道順を覚えられるはずもなく、この近道は2度と利用することはないだろう。
中に入ると職員の他は人がまばらにいる程度だ。
「案内して頂いてありがとうございました」
「いいのよ。その代わりと言ってはなんだけど、ちょっとそこに座っててくれない?」
「?? いいですけど……」
指定されたテーブルの椅子に座ると赤毛さんは受付に向かった。
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