第74話
「ロザリナのことなんだが……、2人の仲はどうなんだ?」
「仲は良いと思いますよ」
寝袋でまったりしながらロザリナのことを聞いていく。
「これまでのことで何か聞いてるか? 結婚はしてたのかとか妹やお母さんとはどうなんだとか、最初に聞けば良かったんだが聞きそびれてな」
「結婚はしなかったみたいです。妹とは仲良いのでは? 今回も家に妹を呼ぶのを楽しみにしておりましたし。母親のことは聞いたことありませんね」
「王都に行くことさえ嫌がるというのも気になるところではある」
「単に飛んで移動するのが苦手なだけでは?」
「ロザリナは高いところが苦手だったか。そんな理由ならいいのだが、敵対者がいるとかどこぞの貴族に目を付けられているとかだと問題だな」
「そのようなことはないかと思いますが……」
「という訳でルルカ、ロザリナから母親のことと王都のことを聞き出してくれ」
「あの~、ツトムさんが聞けば彼女も普通に答えると思いますが?」
「微妙な話になりそうだし、同じ女性のほうが聞き易いだろう。頼むぞ」
「……わかりました」
強引に押し切った。
大体ロザリナと2人きりになる機会がないからなぁ。
ルルカに『邪魔だからあっち行ってて』なんて言えないし……
ドルテス近郊の草原から速度を上げて飛んだので30分ほどで王都に到着した。
今回は迂回したりしたので最適なルートを開拓できれば更なる時間短縮が可能だろう。
王都は三重の城壁に囲まれていてその城壁の外側に広がる壁外区の手前で降りた。城門まで飛んで行っていいのかもしれないが、ここは慎重さを優先した。
城門に向かって歩いて行く。
目指すはこの西側の壁外区にあるギルド出張所だ。
以前王都に来てから20日とちょっと経過しているが街の様子に特に変化などはないようだ。
しかし……
こうして2人で歩くなら手でも繋ぐべきなのだろうか?
他人からは親子にしか見られない……
(ジト…………)
げふん、げふん……姉弟にしか見られないだろうなぁ。
思えばあまり2人で出かけるということをしてこなかったからな。
それに腕を組ませるにしても肩を抱くにしても身長差ががが。
「これからギルドに行くのだが少し時間が掛かるかもしれない。ルルカは……あそこに見える古着屋で買い物しててくれ」
「わかりました」
大通りから路地に入ってすぐのところにある古着屋を指差した。
「ロザリナの分も買うようにな。念の為に聞くが何買うかわかっているか?」
「ツトムさんが好まれる衣服を買うのですよね?」
「具体的にはどんなのだ?」
「くっ……。エ、エッチな衣類です……」
「よろしい。これが済んだら昼食にしよう」
羞恥プレイ系には色々なパターンがあるからしっかりと開発しないとな。
あまりやり過ぎると怒られるから加減を見極めねば……
ギルドの解体場でオークの買い取り価格を聞く。
1体8,000ルクでの買い取りという。さすが王都だ。
何体まで買い取ってくれるのか聞いたところ、
『てめーの収納に入る程度どーってこともねぇ。全て買い取ってやるよ』
『よろしいのですか?』
『問題ねぇ。ドンときやがれ』
ズラーーーーーー
『申し訳ありませんでしたぁ』
的なやり取りを期待したのだが、普通に1日に捌ける上限が500体で今日は残り470体だと告げられた。
オーガの価格も1体6,000ルクとのことなので手持ち全て売ることにした。
オーク470体で3,610,000ルク
オーガ18体で99,000ルク
所持金261万1670ルク→632万0670ルク
大金持ちになってウハウハ気分でいるとふと気付いた。
王都にはもう一つ東にギルドの出張所があるのでそこでもオークは売れるのではないかと。
ギルドを出て飛行魔法で東の出張所を目指す。
王都を最短距離で突っ切ると当然怒られる(たぶん捕縛されて何らかの罪に問われる)ので、城壁に沿って迂回して飛んだ。
東のギルド出張所では買い取り価格は西と同じ1体8,000ルクだったが買い取り上限が400体で残り380体と言われた。
当然380体売却する。
所持金632万0670ルク→920万0670ルク
これで収納にある売却用のオークは50体も残ってない。
しかし……、920万である。
戦闘奴隷が8人は余裕で買えるぞ。
高額な魔術士の奴隷も買えるな。
落ち着け……
衝動買いするのは良くない。
人を増やすとなるとあの家では手狭になるし、以前にしばらくは2人のままと言った手前もある。
まぁのんびりと考えることにしよう。
飛行魔法で西門に戻りルルカと合流した。
「良さそうな物はあったか?」
「はい。ツトムさんもお気に召すかと」
「それは楽しみだな!」
近くの店で昼食を済ませ第二区画にあるノーグル商会本店に向かった。
大商会の本店の割には3階建てではあるもののそれほど大きな建物ではなく、しかも1階部分では食品を販売している。
1階の店舗とは別の階段を上がり2階の受付で紹介状を渡した。
その後30代の食品部門を統括しているという男性に案内されて信頼できるという貴金属店に向かった。その途上、
ノーグル商会は創業者が現在の本店の場所で食品店を開いたことが始まりであり、その創業者の想いや教えを忘れない為に今でも同じ場所で食品を売っているとのこと。
プリンとアイスクリームは昨晩バルーカから知らせが届きその場で国内の主要都市での販売が決まり、ここ王都でも既に製造所の確保に動いているとか。
近々に新国王が即位するのでそのお祝い関連で忙しい。
西のアルタナ王国が魔物の軍勢に押されていて物流に影響が及びそう。
おしゃべりな男らしくこちらが聞いてもないことまで話してくれた。
案内された店舗は貴金属店という華やかなイメージからはかけ離れた簡素な佇まいの店だった。
ノーグル商会の男は店長と何やら話した後こちらに会釈して帰ってしまった。
大丈夫なのだろうか?
「お客様、姫様への献上品をお求めとか」
「え、ええ。献上するに相応しい品を見せて欲しい」
店の入り口と中央にいる男が気になる。
普通の服装で得物も持っていないが明らかに戦闘職系の人間だ。
この店の護衛だとは思うが……
万が一にでも戦闘になればルルカを庇いつつ戦わないといけないから不利な状況になるかもしれない。
ルルカを抱き寄せ、
「!?」
「店主、入り口と中央にいる男はこの店の者か? 違うなら先手を打ちたいのだが」
先手必勝というのは1つの真理だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます