異世界ライフは山あり谷あり
常盤今
プロローグ
プロローグその1
「今回はラッキーだったな」
クレーム対応に取引先に向かった時は憂鬱で仕方なかったが、結局は先方の勘違いで逆に接待されてしまった。とは言っても社員の出張土産らしい菓子の詰め合わせを3箱ほど持たされただけだが。
車を走らせ会社へ帰る男の名前は川端努、30歳。中小企業に勤める現在彼女なしのオタク趣味の独身者である。学生時代と社会人で1人ずつ女性と付き合ったのだが長続きせずに終わり現在に至る。
明日からの3連休はゲーム漬けになるぞー!そんな決意を固めた時だった。意識が後方に引っ張られる感じになり体が動かなくなる。
ヤバイ!運転中だぞ!
懸命に足を動かしてブレーキペダルを踏もうとするが1ミリたりとも足は動かず意識が途絶えた。
…
……
…………
「うぅん……ハッ!」
ガチャガチャ…
意識が戻り慌ててブレーキペダルを踏むが反応せずそもそも車自体停まってる状態だ。
あたりを見回すがぼんやりとした白い空間としかわからない。
ドアを開けてモクモクと白い煙の漂う地面?に恐る恐る足を踏み入れると普通に立つことができた。
「川端努よ……」
「え?」
キョロキョロと辺りを見回すと上空にピカピカと発光する球が浮かんでいた。
「我はそちの認識で言うところの『神』もしくは『管理人』のような存在である」
神様だって!?
「事故で死亡した其の方には異世界に行くかこのまま輪廻の輪に加わるか選ぶことができる」
「死んだ!?」
死んだなんて覚えねーぞ、だがこの状況は……。
「即死だったので覚えてないのは当然だな。許容量を超えた傷を負ったせいで記憶が欠けたのだろう」
納得なんてできないが納得するしかない状況かー。
「いくつか質問してもよろしいですか?」
「構わんぞ」
「死んだ人全員に異世界に行くかどうかの選択権があるのでしょうか?」
「普通の人間にはないな」
「なぜ私にはあるのでしょう?」
「まず無信仰者であること。
幼き者と寿命近くで死亡してないこと。
この世に未練のない者。
即死した者。
強き魂を持つ者。
悪しき者でないこと。
条件としては大雑把に言うなら以上であるな」
「神様なのに無信仰者であることが条件なのですか?」
「我は厳密には神ではないので、信仰対象に僅かでも信心を捧げてしまうとそれが架空の存在であってもその者に介入することができなくなるのだ」
案外不便なのだな……。
しかし無信仰者なんて現代社会ではそこそこいそうな感じだが?
「先の条件はあくまで魂のことであり、近い前世に信仰者がいてもダメだぞ」
「そうなると一気に対象者は激減しますね。この『強き魂を持つ者』というのは私には無縁のような?」
なにせ殴り合いのケンカなんてしたことないし。
「それも前世が含まれる事項だな。高潔な支配者階級だったり勇敢な戦闘者であった者は強き魂になる傾向が強いようだ」
おかげで異世界に行けるのなら前世の自分に感謝だな!←さすがオタク趣味なだけあって異世界ものは大好物らしい。
おっとこれは聞いておかないと。
「異世界とはどのような世界なのでしょう?」
「お主の好きな魔物が跋扈する剣と魔法の世界だな。スキルもあるぞい」
見透かされてるみたいだ(汗 SF世界かもしれないだろう!!
「基本的に進んだ文明には行けないぞ。
異世界行きは遅れた文明のとこだけじゃ」
なるほど、異世界ものの大半が中世ファンタジーな訳だ。リアルと創作物が見事にリンクしてる。
「自分が行く予定の世界は他に異世界から来た人はいますか?」
「そちが初めての異世界人になるな。他にも世界は多数あるし、条件をクリアする人間も極まれなことから仮に同じ世界に送るとしてもずっと後の時代となるだろう」
同じ境遇の仲間がいないのは寂しいと思うべきなのだろうか?
次は遂にこの質問を……
「異世界行きを選んだ場合何かスキルみたいなものは頂けるのでしょうか?」
ここ大事!すごく大事!
「魂の強さに応じた能力やスキルを与えよう」
キター!チート来たか!?無双キタコレ!!
「そちが想像してるのとは大分違うが……」
いいんです。今だけでも夢見させて……。
「最後に神様(仮)にとって私を異世界に送る目的またはメリットはなんでしょうか?」
「『強き魂を持つ者』は世界に良き影響を及ぼすのだ。特に近代化前の世界では及ぼす影響が更に大きくなる」
「英雄的な行動や生き方を求められてるということでしょうか?」
ハードル高いな! オイ!
「そうではない。そちがあちらでどう生きようと自由だ。行った直後に死んだとしても問題はない。
そちの魂が異界の輪廻の輪に組み込まれることが重要なのでな」
オレ個人の生き方に制約がないなら問題ないか。
「わかりました。異世界に行こうと思います!」
「うむ。ではまず最初にそちの所持品を全て没収する。あちらの世界に持ち込むと問題があるものばかりなのでな」
「ハイ……」
車とスーツのポケットに入れてるスマホと財布、腕時計が一瞬で消えた!
仕方ないな、スマホもタブレットも充電できなきゃ持って行っても意味ないし、車もガソリンが切れればただの鉄の箱でしかない。
もっとも車は社用車でオレのではないのだが……。
「さて、これからスキルを授けるのだが、何か希望はあるか?」
重大な時間が来たな。
ここでの選択がこれからの異世界ライフに極めて強く影響するのは間違いない!
まずは定番の……
「はい、あちらの世界の言葉をしゃべれるようになりたいです」
コミュニケーションは大事だからね!
「うむ、他にあるか?」
異世界行きを聞いてから心をざわつかせてる問題に着手してみる。
「あの、若返ることは可能でしょうか?」
「可能じゃぞ、こちらの年齢の半分の15歳でどうだ?」
「是非それでお願いします!」
やった!
「そちの魂の容量的に次が最後だな」
もう!? 欲しいスキルがまだまだたくさんあるのにぃ(涙)
異世界スキル三種の神器『アイテムボックス・鑑定・転移』も無理かー。
「ひとつ助言するなら先に申した通り魔物の跋扈する世界なので戦闘系のスキルは必須じゃぞ」
「う~~ん」
重力魔法とか時空魔法か?
もっとチートな……
「言っておくが人の手に余る力は無理じゃぞ」
「う!?」
「そもそもそちの魂に入らんしな」
ならばひとつで多方面をカバーできるのがいいな。
「せっかくの異世界ですので魔法全般が使えるスキルが欲しいです」
「よかろう。『魔法の才能』を授けよう。なかなか優秀なスキルじゃぞ」
「ありがとうございます」
「では向こうに着いたらまず『ステータス』と念じてみるがいい」
「ハイ」
もう行く感じなのだろうか。
展開早いな!
「良き二度目の人生を」
いきなり落下する感覚が襲ってきた!
「色々とありがとうございましたぁ~」
体や意識全体が落下していく中でなんとかお礼を言ったとこで意識が途絶えた。
…
……
…………
「!?」
気が付くと草原の上に立っていた。
前方に森があり、左右にも遠くに森が見えるがそこまで一面の草原風景である。
「すごいな、地球にはない風景だ。おそらく」
おっと、言われた通りに『ステータス』と念じてみ……
顔の前に液晶画面が表示される。
川端努 男性
人種 15歳
LV1
HP 10/10
MP 30/30
力 5
早さ 5
器用 5
魔力 10
LP 0P
スキル
異世界言語・魔法の才能
ちゃんと15歳になってるしスキルもあるな!
ただ……
ステータス低!!
この世界の人がどのぐらいの数値かはわからんが神様(仮)の言った通りチート無双は無理と考えるべきだな!憧れがなかったと言えば嘘になるが……
魔力とMPが高いのは魔法の才能のおかげか?
LPとはなんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます