第44話
「明日買い物に行こうと思う」
帰宅後夕食の時に切り出した。
南東の森もまたオークに遭遇するかは微妙だし、こういうことは引き延ばさないほうがいいだろう。
「わかりました」
「こちらが明日の行程となります」
ロザリナが行く順番を書いた紙を渡して来た。
「家具→化粧→古着→下着の順か。食事は?」
「時間が読めませんのでお昼時に近くのお店で」
「せっかく3人での外食なんだし個室のある店がいいな。少し高級店でも構わないから心当たりはないか?」
明日は待ち時間が長そうだから食事の時ぐらいはゆっくりしたい。
「何店かご案内できるかと」
「任せる。そしてルルカには各店での会計を任せよう」
ルルカに50万ルク渡す。
「こんなに……」
「元商人として明日の予算をいくらに設定している?」
「10万もあれば十分かと」
「それが普通の感覚だとしたなら明日の予算は30万だな」
「3倍も……」
「女性は買い物している時が一番輝いているという人もいる。欲しい物は買うように」
「はい」
ルルカを引き寄せてキスをする。
「ん……」
「ロザリナもこっち来い」
「は、はい」
ロザリナを俺の足の上に座らせる。
「明日はロザリナも遠慮しないで買い物すること」
返事を聞く前にキスをした。
「んっん……」
ロザリナの舌を十分堪能する。
「2人に1つ指令を与える」
「明日古着屋で部屋用のセクシーな服を買うように」
「セク?」
「要はエッチな服だ」
「!?」
「古着屋になければ新品の服を扱う店に行くぞ」
「それで予算を3倍に……」
「ふっ。戦いとはいつも二手三手先を考えて行うものだ」
「「??」」
所持金91万7020ルク→41万7320ルク
翌朝。ベッドでゆっくりと1本2本しながら出かけるまでの時間を潰していた。
3人で出かけるのはロザリナを買った翌日に鍛冶屋に行って以来だ。
本格的に出かけるのはこれが初めてである。
もっと外に誘ったほうがいいのだろうか?
俺自身は家でイチャイチャしていたいから何も問題ないのだが、
彼女達からすれば『私の体が目当てだったのね』と修羅場に発展するケースなのでは……
多少面談したとはいえあんなので性格がわかるはずもなく、容姿で選んだ以上体が目当てなのは厳然たる事実だ。
まぁロザリナの場合はそこに戦闘能力も加味されてはいるが。
しかし出かけるにしてもこの世界に遊ぶ場所なんてないだろう。
こういう買い物が女性にとって最大の娯楽なのだろうな。
待てよ……、狩りなんてどうだろうか?
地球ではハンティングは立派に趣味としての一面を確立している。
「ルルカ、狩りをしたいと思うか?」
「狩りですか?」
「俺がやってる仕事としてではなく、趣味としてだ」
「特に興味は……」
「そ、そうか」
買い物の付き添いは苦痛だが狩りの付き添いなら俺でもできる。
いや、地図(強化型)スキルがある俺こそ適任なのだが、興味ないかぁ。
う~ん。
ん? 確かルルカの前で唯一戦った乗合馬車が襲われた時に魔術士なのになぜ剣で戦うのか聞いてきたな。
ひょっとしたら戦いを見る専なのか?
地球では古代コロッセオでの剣闘士の戦いは民衆の娯楽だったし、
現代においても戦闘を扱った創作物は世に溢れている。
この世界でも剣技大会みたいなのがあるかもしれない。
「ルルカ、俺が戦うところを見たいと思うか?」
「ツトムさんの戦いをですか?」
「そうだ。俺がこう魔法で魔物を蹴散らすとことか、槍や剣での近接戦に挑むとことか」
「あの、本音で答えてもよろしいですか?」
「あ、ああ。ロザリナもだが俺にはいつでも本音で答えてくれると嬉しい」
「わかりました。私はツトムさんに戦わないでもらいたいです。冒険者も辞めて欲しいと考えています」
「ほへ?」
な、なんかとんでもないこと言われたぞ……
「理由は危ないからです」
「い、いや冒険者は仕事であって今話してるのは娯楽としてどうかという……」
「戦うところを見て楽しいとは思えません。ただ心配するだけです」
なんだか知らないがもの凄く常識的なことを言われた気がする!
「わ、わかった。娯楽の件はそれが答えとして、冒険者辞めたら収入がなくなるぞ?」
「ツトムさんならその無駄に高性能な浄化魔法で短時間で人の何倍も稼げます。無駄にたくさん入る収納魔法で輸送業を始めても敵はいません」
「それは俺も6等級昇格の為の依頼を下見してた時にちょっとだけ思ったことなのだが……、いやルルカさん、無駄って……」
「だってそうではありませんか? 掃除や洗濯、水の用意・お風呂の準備から荷物持ちまで魔法でこなして奴隷から仕事を奪っておいて、その奴隷の空き時間を潰せるような娯楽の提供に悩む主人など私は生まれてこの方聞いたことがありません。ロザリナはどう?」
「私は最初ルルカさんが奴隷だと聞かされた時に凄く驚きました。奴隷を警護する為に戦闘奴隷を購入するなんて聞いたことがありません」
「私もよ」
「今日に至っては買い物に行く奴隷をツトム様自らが警護なさるという……おかしいと思います」
「ほんとよねぇ」
ぐっ。
ハーレムとは瞬時に男が数的不利に立たされる世界じゃないか。
ひょっとして俺は茨の道を進もうとしているのか?
だが……挫けてはいけない。
ここは主人の力量を見せなければならない場面だ。
「問題は1つ1つ解決していくべきだ」
「まず護衛だが、俺しか対処できないから俺が守る。ロザリナで大丈夫ならロザリナに任せる。ルルカは戦えないのだからルルカに護衛を付ける。何一つ間違ってはいない」
「命を守るのが最優先であって奴隷だから主人だからと区別するのはナンセンスだ」
「そう…なのかも、しれませんが……」
「次は冒険者に関してだが、時々言っているが俺は朝の2人との時間を楽しみたい。それには冒険者でソロで活動することがもっとも適している」
「元商人だったルルカならわかると思うが、商売を始めたら自分本位な時間の使い方はできない。特に俺の場合は人に丸投げできる類のものではなく、自ら現場に足を運ばねばならないからだ」
「おっしゃる通りです」
「最後に家事についてだが、魔法でやるから手間ですらない。負傷療養してた時ですらやってたぐらいだ。だが、問題なのはそこじゃない」
「2人に俺が1番求めてるものはなんだ?」
「「奉仕です」ね」
「そうだ。2人の奉仕には満足している。だがあくまでも現在の技量に対しての満足度だ。2人にはこれから奉仕の技術を高めていってもらわねばならない」
「どのようにすればいいのでしょうか?」
「例えば今日買う予定のエッチな下着や服は俺が指示を出すのではなく、自ら用意しなければならない。奴隷という立場だと難しいと感じるかもしれないが、それができるだけの資金は持たせていたはずだ」
「は…い……」
「主人の好みを推察し、欲望を刺激し、劣情を催させ、快楽に誘い快感に溺れさせ、深い安心感と至高の満足感を与え、更なる境地を求めより高みを目指す」
「押すだけではダメだ。引き過ぎてもダメだ。凄腕の職人が指先の感覚と己の経験と培った技術で繊細な作業をするが如く2人にも容姿・感覚・感性・知識・話術・技術・洞察力を磨いて欲しい」
「「……」」
「2人には修羅の道を往く自覚と覚悟を持って欲しい。その果てしなく険しい道の先にある僅かな光こそ奉仕を極めた者が辿り着く約束の地である」
「家事がどうだと雑事を気にする余裕があるのか?」
「あ、ありません」
「うむ。理解したならそれでいい」
どうせ、『こんなクソガキ適当にエッチさせとけば満足するだろ』なんて考えていたのだろうが、甘いわ!!
エロ大国日本の住人を舐めるなよ。
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