第6戦記 渦巻く陰謀

 戦火がまだ届いていない地球の日本。この平和な国にも、自らの欲望のために戦争を利用しようとする者がいた。




【国会議事堂 分館】


 新日本政府の国会議事堂の分館。そこで二人の男が、映像電話機能付き情報端末である、「v Phone《ブイフォン》」で怪しい会話をしていた。


「準備の方は大丈夫なんだろうな?」


辰夫「いつでも大丈夫です、先生。すでに下のもんをそちらに向かわせております」


「そうか、手筈通りに頼んだぞ…、星川。成功した暁には約束の倍の報酬を出そう」


辰夫「本当ですか⁉︎ 全力でやらせていただきます‼︎」


 男は、通信を終えるとニヤリと笑った。


 この男の名前は「徳川家人とくがわいえひと」。衆議院議員で副総理大臣を務め、次期総理大臣と目される男だ。


 その傍らには徳川家人の腹心であり、新日本政府の衆議院議員で財務省大臣である「脇坂雅治わきさかまさはる」の姿もあった。


※徳川家人=以下、徳川と略。


徳川「フフフ、順調だな」


※脇坂雅治=以下、脇坂と略。


脇坂「裏社会の人間とは言え、利用できる者は利用するに越したことはありませんからな、徳川副総理。

 それから、政治の名門である小早川家の御曹司「小早川秀憲こばやかわひでのり」を我らにつくように説得しました。おかげで多数の議員を取り込むことに成功しましたぞ」


徳川「地固めは終わったということか。その次は、目の上のタンコブである内閣総理大臣「阿蘇部晋太郎あそべしんたろう」を引きずり下ろす「阿蘇部あそべおろし」だな」


脇坂「ええ…。ですが、小早川には目付役が必要ですな。あの若僧は、親の七光りでぬくぬくと育った優柔不断な坊や。自分が不利になれば、すぐ掌を返しますぞ」


徳川「分かっている。奴は所詮、捨て駒。小早川が手のひらを返したのなら、捨て置けば良い。


 それより問題は、あのを「地球防衛省ちきゅうぼうえいしょう」からどうやって奪取するかだ。は私が宇宙連邦政府内での発言力を高める鍵になる」


脇坂「では、小早川や星川が失敗した時のことも考えて、とも連絡を取っておきましょう」


徳川「頼りにしているぞ、脇坂」


 宇宙に未曾有の大戦争の波が押し寄せ、地球ではそれに気づかぬ民衆がいつもと変わらぬ平和な日常を謳歌する裏で、私利私欲のために戦争を利用する者たちもいた。




【秘密のラボ】


 培養槽の前での蘇生をしている。中にはチューブでつながれたの姿があった。


科学者「様子はどうだ…?」


研究員「現在99%…、完了まであと1%です…」


科学者「急いでくれ…、もうすぐ奴らが日本へ来る…‼︎」


「ウィン、ウィン、ウィン、ウィン…」


科学者「ん…⁉︎ 何だ⁉︎」


 培養槽の前の装置が音を立て始めた。装置のモニターには100%と表示され、画面右下のメーターはMAXになっている。


研究員「、100%です‼︎」


科学者「おおっ⁉︎ ついにか‼︎」


 は笑みを浮かべた。だが、次の瞬間。


研究員「は、‼︎ の様子が変です‼︎」


科学者「何だと…⁉︎ う、うわぁぁぁ‼︎」


「バリィィィィン‼︎」


 は両目をかっと見開き、培養槽を割って外へと出た。


科学者「バカな…⁉︎ が早すぎたというのか⁉︎」


 は無言での方を見つめると左手から衝撃波を放ち、二人を吹き飛ばした。


科学者・研究員「うわぁぁぁ…‼︎」


 はゆっくりと歩き、厳重にロックがかかった分厚い鉄の扉に右手を当て、扉を破壊した。


「バゴォォォン‼︎」


科学者「待て…、待ってくれ…‼︎ は最後の希望なんだ…‼︎」


 に向かって手を伸ばし叫んだが、は何も言わずエレベーターに乗り、地上へと去って行った。




【天越学園】


 入学式を終えて、下校する拓哉たち。帰りにどこへ行くか話し合っている。


拓哉「ふぁ〜…。全く…、話がなげーんだよ学園長はよ…。立ちながら居眠りしちまったぜ」


陸翔「よく立ちながら寝れるよな」


浩樹「お前の気合いが足りんからだ、拓哉」


拓哉「うっせえな、浩樹‼︎ 気合も何も要らねえだろ」


亜里沙「それにしても、また6人揃って同じクラスになれてよかったね」


昇太「本当、よかったね」


玲「ところでさ、これからどうする?」


拓哉「俺は今から「Wild Wind《ワイルドウインド》」のメンバーと、バンドの練習があるんだ。夕方なら大丈夫だぜ」


亜里沙「そっか…、他のみんなは?」


陸翔「俺は今からバスケ部の見学に…。目指せ、「UBA《ユービーエー》」‼︎ …ってか…⁉︎」


玲「とか言って、見学のついでにバスケ部や新入生の女の子をナンパするんでしょ⁉︎」


陸翔「ギクッ…‼︎ バレたか…」


浩樹「俺も今から功夫の稽古だ」


亜里沙「昇太は…?」


昇太「まだ…、まだ…、間に合うかもしれない…‼︎ うぉぉぉぉぉぉぉ‼︎ まり〜なぁぁぁぁぁ…、待っててね〜‼︎ 今、買いに行くからね〜‼︎」


玲「あ、昇太ぁっ‼︎ はぁ…、どっか行っちゃった…」


 昇太は目をメラメラと燃え上がらせながら、猛ダッシュでアンドロメダまでかけぬけ隊の1stシングルを買いに出かけた。


亜里沙「ふぅ…。それじゃあ、今日の夕方にまたみんなで集まりましょう‼︎」


玲「賛成‼︎ 私、最近近くにできたいいお店知ってるんだ‼︎」


陸翔「いいねえ、俺もそこにかわい子ちゃん連れて行こうかな?」


浩樹「俺も夕方なら…」


拓哉「よーし、今夜は派手に飲むぞー‼︎」


亜里沙「何言ってんの⁉︎ 私たちまだ未成年でしょ⁉︎」


拓哉「あららっ………⁉︎」


亜里沙「じゃあね‼︎ みんなまた夕方‼︎」


 拓哉たちは、夕方にまた集まる約束をして一旦解散した。だがこの時、これから起こる大きな戦いに巻き込まれることなど、今の6人は知る由もなかった。



構成員「ヘッヘッヘ………。兄貴、いつでもいいですぜ」


 構成員たちが、徳川家人が横流ししたアーマード・ギアを違法改造した「星俠せいきょう」に乗り込み、作戦行動を開始しようとしていた。


 この構成員たちを指揮しているのは星龍會傘下の二次団体「流星組りゅうせいぐみ」の若頭「流山正男ながれやままさお」という男だった。


※流山正男=以下、流山と略。


流山「よしお前ら、俺の後ろをついて来い‼︎」


構成員たち「了解‼︎」


 流山は流星組の構成員たちを引き連れ、星俠で街を駆け抜けた。



男性住民A「うわぁぁぁ‼︎ 何だあのロボットは‼︎」


男性住民B「あのエンブレムは流星組‼︎ 機甲ヤクザだ、逃げろー‼︎」


 流山たちの星俠が道路を駆けていくと、二手に別れるように住民たちは逃げて行った。



機甲警察A「こら貴様ら、止まれ‼︎」


 機甲警察のパトカーが多数、流山たちの前に立ち塞がった。


流山「どけぇ、邪魔だ‼︎」


機甲警察たち「うわぁぁぁ‼︎」


 流山たちは機甲警察のパトカーを踏み潰したり、ミサイルランチャーで蹴散らした。



玲「見て、亜里沙‼︎ ロボットがこっちに向かって走ってくるよ…‼︎」


亜里沙「えっ…、何っ…⁉︎」


亜里沙・玲「きゃあぁぁぁ‼︎」


 亜里沙と玲は、流山たちの星俠が走る衝撃で吹っ飛ばされた。



拓哉「おいおい、何なんだよ‼︎」


陸翔「何だ何だ…、何の騒ぎだ…⁉︎」


浩樹「何か大きなことが起きそうな予感がする…」


 一方の拓哉たちもそれぞれ騒ぎを聞きつけて外へと出た。



店員「お客様、運が良かったですね。まだ1枚在庫が残ってましたよ」


昇太「本当ですか⁉︎ やったぁぁぁ、僕のまり〜な………、あ、あぁぁぁぁぁぁ…‼︎」


 流山たちの星俠が走る衝撃で昇太が倒れてしまった。



アナウンス「警告‼︎ 警告‼︎ 住民のみなさんは機甲警察の指示に従い、速やかに避難してください。」


機甲警察B「えー住民の皆さん…、避難場所はこちらです‼︎ 慌てずに、落ち着いて避難してください‼︎」


 街中でサイレンとアナウンスが鳴り響き、あちこちで住民が悲鳴を上げ、機甲警察や消防隊・レスキュー隊は住民の救助や避難に当たっている。


機甲警察C「おい‼︎ 宇宙連邦政府軍とはまだ連絡が取れないのか‼︎」


機甲警察D「それが、何者かに通信を妨害されているようで…」



 新中野区を駆け抜け、流山たちは日本のメガロポリスの一つであるネオ新宿区へたどり着いた。


流山「目指すは新日本政府の地球防衛省‼︎ お前たち、派手に暴れろぉ‼︎」


構成員たち「おっしゃぁぁぁ‼︎」


「ドガアァァァァァン‼︎」


女性住民たち「きゃあぁぁぁぁ‼︎」


男性住民たち「うわぁぁぁぁぁ‼︎」


 流山たちは、プラズマライフルやミサイルランチャー、プラズマバルカンを乱射して暴れ回りながら地球防衛省を目指した。




【国会議事堂 本館】


 その頃、新日本政府の国会議事堂の本館では、阿蘇部晋太郎や他の議員たちが会議をしていた。


※阿蘇部晋太郎=以下、阿蘇部と略。


阿蘇部「何故だ…⁉︎ 何故、宇宙連邦政府軍は動かん⁉︎」


議員「それが、機甲警察の連絡によると何者かに通信を妨害されているようです‼︎」


阿蘇部「妨害だと…⁉︎ 何者かがこれを仕組んだというのか⁉︎」


議員「いかがなさいますか、総理⁉︎」


阿蘇部「本来、我が国の「新日本国憲法しんにほんこくけんぽう」上、戦力を動かすためには、国民の生命・知的および私的財産が奪われる危険性が非常に高く、緊急を要する事態でない限りは「宇宙連邦政府議会うちゅうれんぽうせいふぎかい」の3分の2以上の承認を得なければならない…。


 だが状況が状況だ‼︎ やむをえん、「最終自衛隊さいしゅうじえいたい」に緊急出動を要請するぞ‼︎」


 そう言うと阿蘇部は腕時計のスイッチを押した。すると小型マイクが現れ、阿蘇部はマイクに向かって声を放った。


阿蘇部「最終自衛隊、スクランブルだ‼︎ 緊急出動を要請する‼︎」



阿蘇部「最終自衛隊、スクランブルだ‼︎ 緊急出動を要請する‼︎」


 スピーカーから基地内に阿蘇部の声が響き渡り、緊急出動要請を受けた最終自衛隊の隊員たちは急いで出動の準備をした。


オペレーター「長官、阿蘇部総理より緊急出動要請です‼︎」


 司令室には、新日本政府の衆議院議員で地球防衛省大臣にして、最終自衛隊の長官も務める「富士山平八郎ふじやまへいはちろう」と若き女性司令官「立花直虎たちばななおとら」の二人がいた。


※富士山平八郎=以下、富士山と略。


富士山「立花司令‼︎」


※立花直虎=以下、直虎と略。


直虎「ええ、長官‼︎」


 直虎と富士山は立ち上がり司令室を出た。



 重い腰を上げ、最終自衛隊に緊急出動を要請した阿蘇部。


 最終自衛隊は機甲暴力団を撃退することができるのか?




【次回予告】


ナレーション:華園明日美はなぞのあすみ


 はじめまして、華園明日美といいます。今後よろしくお願いしますね。


 急に敵が現れたものだから、最終自衛隊に緊急出動要請がかかってきたわ‼︎


 一応、私も出動することになるんだけど、その前に私や他のみんながどういう経緯で招集されたのかを知ってもらうことも必要よね。


 と言うことで、まずは杏花ちゃんから‼︎


 あら…、杏花ちゃん? 素直じゃないのね…。


 次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎


 【第7戦記 勇猛果敢⁉︎ 杏花・E・ティアー‼︎】


 っていうお話だそうよ。楽しみにしてくれたら…、ちょっといいこと…、あるかも…♡



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