バーター

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

「そういえば、例の法律、通りましたね」

「やっとだね。帰ったら書類作らなきゃいけないな」

 益田ますだ清四郎せいしろうは車を運転しながら、助手席にいる宇田つよしの言葉に応えた。

「これで戸田さんのおばあちゃんと小浜のおじいちゃんも、もっと来られるようになりますね」

「そうだね。定員一杯で週一回しか来られなかったもんね。これでそれぞれのご家族は安心できるだろうねえ」

 そう言いながら、益田は車のウインカーを出して、路上に車を停めた。

 そして益田と宇田は「介護・デイサービスの阿幸地あこうじ会」と印字されたドアを開けて降りた。

 二人は「須佐」と表札の出ている家の玄関チャイムを鳴らした。そしてインターホンから「はい」という声が聞こえると、益田は「デイサービスのお迎えに来ました」と告げた。


(続く)

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