〜1章 『聖女救出』編〜

8度目の再出発


 決して平坦な道ではなかった。


 特別な魔法も、最強の戦闘力を急に手に入れたわけではない。俺が手に入れたのは『時間』と3年間の間に起こりうる『未来を知る事』だけだった。



 『最果て』に挑んだのは3回。

 全て失敗し死にかけた俺は、自分自身に『力』をつけるために剣を手に取った。



 何度も何度も《回帰(リグレス)》を繰り返し続け、100年もの時間を血反吐を吐きながら剣に注ぎ込んだ。


 覚えた剣技は9つ。世界に存在する剣術の『奥義』と呼ばれる剣技を4つ。我流で生み出した剣技を5つ。


 スタート地点に戻るたび、若返ってしまう身体に鞭をいれ続け、『頭に』叩き込んだ。肉体が戻ってしまっても使いこなせるように。


 『もう』絶対にシャルを失わないように。



「ノルン。準備は整った! ……この『3年』で果たす。俺は絶対にシャルを救ってみせる!!」


「はい、マスター。ノルンは常にマスターのそばに居ますよ!」


 ノルンは月明かりに照らされて、相変わらずの美貌で俺に微笑みかける。もう100年間以上も一緒にいるのに、ノルンの美しさに慣れる事はない。


 初めてノルンと邂逅を果たした水辺。

 初めて【栞】を挟んだ、あの時からもう100年。絶対に救い出す『力』を磨き続けて100年。


 俺が自ら『死』を選んだ回数は7回。

 この場所からの『再出発』は『8度目』だ。

 

 俺は深く息を吐き出しながら『気』を整え、全身に力を巡らせる。すっかり馴染んだ極東の大陸の技術は、今や俺にとって欠かせない物となっている。


(よし。いいぞ……。……シャルが死ぬまで、あと『3年』。今回こそ、絶対に『時間』を進める!!)


 俺は固く決意し、9回目となる『決別』を行うためにクロロ達が待っている野営地へと足を踏み出した。




ーーーーーーーー


【あとがき】


次話「決別」です。


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