【最強剣士】はスキル【栞】で再出発〜親友だと信じていた幼馴染に追放された俺は、妹の呪いを解くために、美人の『聖典』とタイムリープを繰り返して100年もの時間を費やした剣で幸せを手にする。〜
夕
〜序章〜
〜プロローグ〜
「これで終わりだ。魔王……」
勇者は聖剣を魔王の心臓に突き立てた。
悪虐の限りを尽くした魔王の7つの心臓。その最後の1つに突き刺さった聖剣はドロッと黒い血に濡れている。
分厚い雲の割れ目から太陽が差し込み、魔王は黒い霧へと姿を変え、天に昇った。
「これで終わったのね……」
「あぁ。これで……、これで平和に。人々が魔族に怯える事のない世界に……」
勇者は大賢者と精霊使いの亡骸(なきがら)を見つめて涙を流しながら、聖女に言葉を返した。
(ありがとう。2人のおかげで……)
ポツポツと降り始めた『黒い雨』は終焉を告げているように感じた。この魔王討伐で全ての人達が幸せになると信じ、仲間の尊い犠牲に感謝を述べた。
◇
世界に降り注いだ『黒い雨』。
それはルベル王国の指名勇者『アーサー・ペンドラゴ』が、魔王を討伐した事の証明とされ、世界の人々は『魔王の涙』などとからかっては勇者の偉業を讃えたが、すぐにそんな可愛らしいものではない事を理解した。
『黒涙(こくるい)』。
後にそう呼ばれる『魔王の呪い』に全世界が震え上がったのだ。
『黒い雨』は魔王が全世界に放った最後の魔法だった。身体のどこかに『呪印』が発現すると、それから5年間の間に必ず命を落とす恐ろしい呪い。
魔王を討伐したにも関わらず、減る気配のない魔物達と振り撒かれた呪いに、人々は責任の所在を求めた。
本来なら『英雄』として讃えられるべき勇者を『災い』を振り撒いた大罪人として処刑し、聖女は『呪い』を治す事のできない『無能』と蔑(さげす)み牢屋に入れた。
だが、1人の少年は叫んだ。
「勇者達は果たすべき事を果たした『英雄』だ! 勘違いするな!」
『黒涙(こくるい)』の恐ろしさを知ってもなお、勇者パーティーの偉大さに憧れ、尊敬したのだ。
全ての人間に宿るとされる魔力を持たず、12歳になると神から与えられる『恩恵(スキル)』も発動させる事のできない『無能』の少年は、勇者パーティーの功績を忘れる事はなかった。
その少年『ローラン・クライス』は、もう2度も間近で『黒涙(こくるい)』の凄惨さを見てきた。
両親は2人とも『黒涙』で亡くなっているのだ。
――『シャル』と母さんを頼んだぞ。ローラン……。
父は大きな手でローランの頭をガシっと撫でた。
――ローラン。シャル。……心から愛してるわ。
母は死の間際でもニッコリと優しい笑顔を作った。
ローランの悲劇はそれだけでは終わらず、絶望に酔いしれる事すら許されなかった。
「お兄ちゃん。シャルも……出ちゃったみたい……」
ローランの最愛の妹『シャルロッテ・クライス』はそう言って左胸の『呪印』を見せて困ったように笑った。不安で、怖くて、仕方がないはずなのに、ローランに心配をかけまいと懸命に笑顔を作っていた。
その笑顔が母の『最期』にそっくりで、
「シャル……シャルロッテ……!!」
ローランは涙を流しながら抱きしめた。
「うっ……ごめん、ごめんなさい。お兄ちゃん……」
まだ11歳になったばかりのシャルロッテはローランの腕の中で謝罪し続けた。何一つとして悪いことなんてないのに、ローランを1人にしてしまう事に謝り続けたのだ。
「大丈夫。大丈夫だよ、シャル。……『兄ちゃんが守ってやる』って約束しただろ?」
更に大泣きし始めたシャルロッテを強く抱きしめながら、ローランは固く固く決意した。
父の最期の言葉を『今度こそ』果たそうと、母の笑顔と愛情を支えにしようと、果たすべき事を果たした勇敢な勇者を心の指針にしようと心に決めた。
『絶対にシャルロッテを救う』
ローラン・クライスはそう自分自身に誓ったのだった。
ーーーーーーーー
【あとがき】
次話「囮にされた少年」です。
新連載です。
少しでも「面白い」、「今後に期待!」、「更新頑張れ!」と思ってくれた読書様、
☆☆☆&フォロー
をして頂けると、創作の励みになりますので、よろしければよろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます