第27話 望まぬ別れ
我に返ったのはちょうど拠点に着いた頃だった。肩を落として入ると、電気がついていた。そして、部屋の真ん中にはスーツケースに荷物をまとめている7がいた。
「7!」
「あ……司…様」
つけなくてもいいといった、様、がまたついていた。それが自分と7の関係をリセットしたような、心の距離を覚えさせる。
「どこ行ってたんだよ! 心配したんだぞ!」
肩を揺すると、7は静かに俺の両手を払い落とした。
「……あなたに心配されるほど、私は親しくなった覚えはありません」
睨みつける眼光は、敵意をむき出しにしていた。昨日までの7とは、明らかに違っていた。悲しみと共に、それを隠すために虚勢を出す。
「……こっちだって許嫁なんて願い下げだっての。そっちだって好きな相手がいるんだろ? 故郷でそいつと自由に結婚してればいいだろ?」
「な、……なぜそれを……」
「どうだっていいだろ? ……お守りする、とかほざいておいて結局は自分の利益の為にしか行動してないじゃないか。一度でも信頼した俺が馬鹿だったよ」
胸が苦しかった。愛してるわけじゃない。でも、傍にいてほしかった。一緒にいてほしかった。見守っていてほしかった。
思いとは裏腹に、7は売り言葉に買い言葉。
「こっちこそ、王の座よりも、ちっぽけなものしか守ることのできない警察を夢見るあなたなんかを守っていたことに腹が立っていましたよ! こっちこそ……あなたなんてお断りです!」
目の前の少女が、俺に対して憎しみをぶつけていることが、一番悲痛なことだった。それ以上に……単純に、7がいなくなることが、寂しかった。心の痛みとは反対に、偽りの言葉が止まらない。
「あぁそうかよ! だったら出ていけ! どうせ明日にはお前は俺のスートじゃなくなるんだからな! ジョーカーなんて……俺一人で十分だっ!」
―――一度くらい………〝スート〟として、ちゃんとツカサを守りたかったです。
そう言い残し通り過ぎていく少女の頬には、大粒の涙が伝っていた。
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