人気配信者たちのマネージャーになったら、全員元カノだった
柊咲
書籍発売記念SS
一巻発売記念SS 大学生とアイドルのお忍びデート(1)
──大学時代。
大学は休み。
家で昼過ぎまで寝ていようとも思ったが、メイも仕事が休みだという。
絶賛人気急上昇中のアイドル。
仕事が休みなんて月に数回あるだけ。
そんな彼女もせっかくの休日、休みたいだろうと思ったのだが……。
「先輩先輩、早く行きますよ♡」
「別に、そんな急がなくてもいいだろ」
時刻はお昼前。
清純派アイドルとして人気のあるアイドルが、まさか彼氏と一緒に街中でデートしているとは誰も思わないだろう。
通行人の中にマスクを付けた彼女に視線を向ける者はいない。
「もう、一日は二十四時間しかないんですよ?」
「それはまあ、そうだが」
「移動時間は削らないと!」
子供のようにはしゃぐメイが俺の手を握る。
何千万の車に乗るわけでもなく電車と徒歩での移動。
急かすように前を歩く彼女の手を引き寄せる。
「焦んなって」
少し強めの口調で言うと、メイは二度頷く。
「ご、ごめんなさい。先輩とこうして一緒に遊べるの嬉しくて……♡」
「誰かにメイのことバレたら、こうして一緒に外で歩けなくなるぞ?」
「はい……ごめんなさい」
落ち込んでいる、というより、発情しているような表情。
怒ったり叱ったりして興奮するアイドルは、きっとメイだけだろう。知らんけど。
「行くぞ」
「はい、先輩♡」
街中を歩く。
日曜にお昼前ということもあってそこそこ人通りはあるものの、やっぱり俺とメイには誰も見向きもしない。
学生のカップルか。
そんな風に思われるのだろう。
「それで、まずは昼飯でいいか?」
「はい! 前にテレビで見たオムライス屋さんが行きたいです!」
アイドルとしてかなりの稼ぎを得ている彼女だが、決して高級店に行きたいとか言うことはない。
それどころか、一緒に住んでるマンションだって都内ではそこまで家賃は高くない。
家賃も半分ずつ出し合っている。
まあ、メイが事務所に住んでいると言っているマンションが別にあるのだが……。
大学生と現役アイドル。
収入マウントを取らないのは、メイが俺を立てているからだろうか。
「あっ、ここです!」
「ああ、ここか。って、かなりお客さんいるな」
「安心してください、昨日のうちに予約取ってたので!」
遊びに行くって決めたの今朝なんだが……。
まあいい、店内へ。
「いらっしゃいませ、ご予約はございましたか?」
「あっ、はい」
「お名前をちょうだいしてもよろしいでしょうか」
「橘メイです!」
「橘メイ様ですね、少々お待ちください」
……。
「確認できしました、こちらへどうぞ!」
案内されたのは店内の奥にある個室。
席に座ると、マスクを外したメイが満面の笑みを浮かべていた。
「どうかしましたか、先輩♡」
「いや、別に」
「あっ、もしかして予約した名前のことですか? くすくす、だってメイの本名は使えないから仕方ないじゃないですか♡」
「別に俺の名前で良かったんじゃないか?」
「メイが電話したのに先輩の名前を名乗るのもなーって。ダメでしたか?」
上目遣いで聞かれて駄目と言えるわけない。
というより、そんな些細なことを気にしていたらメイと生きていけない。
名乗るぐらいなら、まあ……。
それからも俺とメイは食事を楽しんだ。
個室で周りに人もいないので仕事の愚痴でも聞かされるのかとも思っていたが、同棲中の生活のこととか家に置きたい物とかの話。
「そういえば先輩、新しいカーテン買おうかなって思ってるんですけど何色がいいですか?」
「カーテン? メイの家のか?」
「いえ、先輩と住んでるお家の方です。もうボロですから」
「そうだったか?」
「足下とか。あと、少しタバコ臭いです。あの人、部屋で吸ってるんですか?」
「いや、外で吸わせてるはずだけど……まあ、雨降っているときとか換気扇のとこで吸ってるかも」
「ダメですよ、ちゃんと外に追い出さないと。そのままカギ掛けてください」
「相変わらず扱いが雑だな」
「先輩とメイの愛の巣に踏み込んでくる人なので当然です」
「まあ、カーテンか。今度、買いに行ってくる」
「一緒に行きます♡」
「一緒に?」
「はい、一緒に♡」
そう言われて少し不思議に思った。
カップルの会話なら普通かもしれないが、ただなんとなく違和感があったんだ。
積極的すぎるような……。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
「くすくす、変な先輩♡」
※明日、続き更新します。
それと明日、1月20日に人気配信者たちのマネージャーになったら、全員元カノだったの一巻が発売されます!
もし良ければ!
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