第24話 再チャレンジ
「よし、やるかっ!」
実に5日ぶりに訪れるダンジョンの四層で俺は気合を入れた。
「前回はいい様にやられたが今度はそうはいかないからな……」
モンスターがとってくる連携に対して敗走したのは苦い思い出だ。
俺は三層で狩りをした辛い日々を思い浮かべながら四層を歩きまわった。
「いた……いつもの編成だ」
しばらく歩き回っているとモンスターと遭遇する。
相手も俺に気付いたようでコボルトアーチャーが早速矢を番え、ゴブリンメイジが支援魔法をかけ始めた。
「【アイスウォール】」
前回はこの段階で俺に使えるスキルがなく、相手が有利になるまで何もできなかったが今回は違う。
相手が態勢を整えるのと同じで俺は相手の遠距離攻撃対策を行った。
「さて、ここまではお互いに下準備、次の行動は……」
戦士ゴブリンと戦士コボルトが距離を詰めコボルトアーチャーの矢が氷の壁に弾かれる。ゴブリンメイジは支援を終え次の事態に備えているようだ。
「【ファイアアロー】」
6本の火の矢が突き進む。それをみた戦士ゴブリンと戦士コボルトは身を挺して後衛を庇った。
「「ゴコボボブブリン!」」
3本ずつ受け止める。あの時に比べて魔法の威力が上がっているお蔭か、食らった後の動きが明らかに鈍い。
「ゴブヒール!」
控えていたゴブリンメイジが戦士コボルトに治癒魔法を放った。
「【ファイアアロー】」
回復を待つわけにはいかない。俺は二度目の魔法を放つと再び前衛を攻撃した。
「「ゴコボボブブリン!」」
「まだ……倒れないか?」
二度魔法を放ったにも拘わらず前衛は健在だ。そうしている間にも再び治癒魔法が飛んできた。
「もういっちょ【ファイアアロー】」
三度目の魔法が前衛に当たると……。
「ゴフッ!」
治癒魔法を受けていなかった戦士ゴブリンが倒れた。
「やった!」
喜んでいるのも束の間、魔法に四度行動を費やしたせいで戦士コボルトが接近して武器を振りかぶり襲ってくる。今からでは魔法を放つ余裕はない。
「甘いっ!」
ここにいるのがただの魔道士なら今の一撃で戦士コボルトにやられてしまったのだろう。
「キャウン!」
だが、剣術スキルを持つ俺は違う。久しく使っていなかったショートソードで斬りつけると戦士コボルトが叫び倒れた。
どうみても致命傷で、倒れた身体がダンジョンへと吸収され始めている。
「さて、残る後衛は……」
矢が飛んでくるかと思って俺が氷の壁から様子を窺っていると……。
「ゴブッ!」
「ガルッ!」
コボルトアーチャーとコボルトメイジはお互いに頷くとその場から立ち去って行った。
「リベンジ達成!」
顔を綻ばせながら俺は魔石を回収する。ここ三日の間ずっと自分の行動が正しいのかわからず狩りをしていた。
もし通用しなければどうしようか不安だったのだ。
「とにかくこれでここを狩場にすることができる」
倒したとはいえあの編成を全滅させたわけではないのでまだまだ甘い。
油断するどころか一層気を引き締める必要がある。
だが、一度負けた相手を乗り越えたことで成長している実感が沸いてきた。
「今のも完全と言えなかったからな、もう少しやりようがあるかもしれない」
いつまでも喜びの余韻に浸っていられない。俺は気持ちを切り替えると次の獲物を探し始めた。
あれから何度か同じ編成を相手にし、【アイスウォール】から【ファイアアロー】までの流れに慣れてきた。
相変わらず後衛は撤退していき、近くには戦士コボルトと戦士ゴブリンの身体が横たわっている。
「そろそろ新スキルも試しておくか」
今のところ傷一つ負っていない。矢による遠距離の攻撃さえ防いでしまえば三層のモンスターとそこまで大きな差がない。
多少動きが速くタフではあるが、俺の装備は一級品。問題なくモンスターを斬り伏せることができる。
今なら多少の行動の遅れもカバーできると俺は判断した。
本日十度目のモンスターが前に立つ。
俺は慣れた動作で【アイスウォール】を張るのだが……。
「ゴブッゴブッ」
「コボッコボッ」
戦士ゴブリンと戦士コボルトがコボルトメイジの支援を受けて動き出すが魔法を撃たない。
その間どうしたかというと……。
「【魔力集中】」
身体中の魔力が活性化しているのを感じる。
このスキルは溜めを行うことで次に放つ魔法の威力を倍増させるというものだ。
ダメージが入ってないからかいつも以上の速度で迫ってくる。俺は近付いてくる2匹に対し魔法を放った。
「【ファイアーバースト】」
「「ゴコブブリンッ!?」」
2匹の間で魔法が爆発し、戦士コボルトと戦士ゴブリンはそれぞれ別な方向へと吹き飛ばされる。
「おお、分断成功」
爆発効果により起き上がれずにもたもたしているので追撃をしようかと思ったが、一向に起き上がってこない。
それどころかゴブリンメイジが治癒魔法を掛けないのだ。
「えっ? もしかしてもう倒れてる?」
どうやら威力を上げたことでゴブリンメイジが治癒する間もなく倒されてしまったようだ。
「ゴブ……?」
「コボ……?」
顔を合わせて戸惑う後衛の2匹。今ならいけるのではないかと考え……。
「【ファイアバースト】」
「「ゴコブブリンッ!?」」
2匹まとめて魔法に巻き込んだ。
今度の魔法は【魔力集中】が切れていたのだが、前衛に比べて貧弱なのでこの一撃で倒れて動かなくなった。
「よっしっ! 全滅させられたぞ!」
俺はガッツポーズをすると、新スキルの威力の高さに驚くのだった。
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