第11話 ドロップ確率上昇

「さて、今日からが本番だな」


 俺はステータス画面の『運』を見る。

 先日、受付嬢から冒険者ギルドがまとめた『モンスターが魔石を落とす確率』を教えてもらったところ、俺の魔石収集確率は普通の人間の五分の一であることが発覚した。


 その原因が”マイナス”になっている『運』だとほぼ間違いなくなったので、俺は『運』にステータスポイントをつぎ込んだ。


 その結果……。


「今日は二層にくるまでにゴブリンを25匹倒した。そして出た魔石は3つ」


 これまでに比べて明らかに増えている。


「まだ運が低いせいかギルドの言った通りの確率になってないが、それでもよくなってきた。これなら稼ぎの効率も良くなるな」


 俺にはここで稼いでおきたい理由がある。


 勝負の期限までにできる限り自分を鍛えるためには下の層に降りて強いモンスターと戦わなければならない。

 そうなると現状の装備では厳しいのでここらで装備を新調しておきたい。


 そんなことを考えているとコボルトが3匹現れた。


 この二日で300匹は倒しているのでこの布陣にもすっかり慣れている。


『ガルルルッ』


 威嚇してくる真ん中のコボルトをターゲットにすると、俺は斜め左から突っ込み、スキルを使用する。


「バッシュ!」


 左から薙ぎ払った剣で吹き飛ばされたコボルトは右後ろに控えていたもう一匹のコボルトへとぶつかる。


『ガフッ!』


 もちろん狙っての行動でこの一撃で一匹のコボルトを倒し、もう一匹を一時的に行動不能にする。


『ガアアアッ!』


 そうこうしている間に最後の一匹が迫ってくる。


『ガルッ! ガルッ!』


 怒り猛って叫びながら剣を振り上げて俺に何度も攻撃を仕掛けてくる。だが、俺は冷静に剣筋を見極めるとそれを避け、隙だらけな身体にいくつもの傷をつけていく。


『ガルルル』


 『剣術』スキルのお蔭で斬撃の精度が上がっている。コボルトと違いただ剣を振っているわけではないので、一閃ごとに急所を傷つけていた。


『ギャフン』


 五度目の傷でコボルトは力尽きた。ここまでに掛った時間は十秒にも満たない。


「さて、あと一匹」


 ようやく自分にぶつかっていたコボルトを押しのけて俺の元へと向かってきたコボルト。そいつが俺の必殺範囲に入ると……。


「バッシュ!」


『ギャフ……ン』


 一閃で片付ける。初めてコボルトと戦った時とは違い、まったく危なげない戦闘だ。


「ふぅ、少しは成長したかな?」


 圧倒できるようになったとはいえ、所詮はコボルト。下層にはまだまだ強いモンスターが存在しているのでもっと鍛えなければならない。


 コボルトの死体がダンジョンに吸い込まれていくのを見て、最後に地面に魔石が残るのを確認した。


「よしっ!」


 確実に落とす確率が上がった魔石を回収すると、次のコボルトを探し始めた。






「とりあえず目標額は越えたな」


 テーブルには現在金貨が2枚と銀貨が30枚、銅貨が5枚並んでいる。

 ギルドで両替をしてもらった時は銀貨100枚が金貨1枚になり重さがなくなって逆に不安になった。


 本日、コボルトを狩りまくったお蔭で一気に魔石を得ることができたので冒険者ギルドで換金してもらったのだ。


 いつもの受付嬢に先日の3倍以上の魔石を渡したところ、大いに驚いていた。


「明日は武器屋に行くから身体を休めるかな」


 流石に連日ダンジョンに潜っていると精神的に疲労する。

 明日は冒険のための準備を整えたらゆっくりしようと考える。


 その前に、今日のステータスチェックをして新たに得たステータスポイントを筋力に振ったところ……。


「えっ?」


 『116』あった筋力が『117』になった、これは別に問題ない。


「今、ステータスポイントが2減らなかったか?」


 さきほど『40』あったステータスポイントが今は『38』になっている。恐らくスキル取得の時と同じ法則が起きているのだろう。


「いつからだ?」


 最後に筋力を上げたのは一昨日の話、その時は丁度ピッタリになるように100まで振った。

 その後レベルが上がったことで自然と筋力が増えたのだが、もしかするときりのよい100になると振り分けるために必要なステータスポイントが増えるのかもしれない。


「だとすると、早めに100まで割り振った方が良いのでは?」


 現在の筋力は『117』たとえ100を超えてもレベルが上がるたびにステータスは上昇していく。つまり上昇する数は変わっていないということになる。


 今は敏捷度と体力の両方が84だが、このままレベルが上がるのに任せておけばいずれ100を超える、その時に振ると2ポイントかかるのに対し、今なら1ポイントしか必要ないので今のうちに100を超えさせた方が効率が良い。


「とりあえず『敏捷度』と『体力』に振って……」


 どちらも100にしたところ6ポイント余った。


「あとは『器用さ』にしておくか」


 戦士のレベルが上がった時に上昇するステータスに絞っておくことにする。


「うん、こんなものかな?」


 名 前:ティム

 年 齢:16

 職 業:戦士レベル19

 筋 力:117+38

 敏捷度:100

 体 力:100+38

 魔 力:16

 精神力:38

 器用さ:72

 運  :37

 ステータスポイント:0

 スキルポイント:113

 取得ユニークスキル:『ステータス操作』

 取得スキル:『剣術レベル6』『バッシュレベル6』『ヒーリングレベル3』『取得スキルポイント増加レベル5』『取得ステータスポイント増加レベル5』『取得経験値増加レベル5』『ライト』『罠感知レベル5』『罠解除レベル5』『後方回避レベル5』


 俺は三桁まで上昇したステータスを見ると満足するのだった。



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