第5話 『取得スキルポイント増加』『取得ステータスポイント増加』取得

「さて、今日もやるか!」


 治癒魔法で疲れたせいか、ぐっすりと朝まで眠った俺は身体を伸ばすと元気な声を出した。


「とりあえず、職業を戦士に戻してスキルもレベル3に振ってみたけどどうなるか?」


 昨晩意識を失う前に考え付いた『取得スキルポイント増加』と『取得ステータスポイント増加』さらに『バッシュ』をレベル3まで上げてみた。


 本当は一気に5まで上げようかと考えたのだが、もしこれで外れスキルだった場合、目も当てられなくなる。得られるポイントに限りがある以上段階を踏むことにした。


「んー、今日もゴブリンにしておくかな?」


 今日もゴブリンなら三日連続になる。これまでは一日や二日、時間をおいて狩っていたのだが、新しい力を早く試したくてうずうずしている。


「よし決めた。今日はちょっと違う場所へと行ってみよう」


 やる気に満ちあふれた俺は冒険者ギルドへと向かうのだった。




「へ? コボルト討伐ですか?」


「はい、お願いします」


 いつもの受付嬢が目を丸くしている。今回俺が受けた依頼は『コボルトを五体討伐』だったからだ。


「その……大丈夫なんですか?」


 心配そうな表情を浮かべている。俺の受ける仕事には興味がないと思っていたのだが、どういう心境の変化なのだろう?


「はい、特に問題はないかと?」


「ええとですね、ティムさん。コボルトはゴブリンと違って人間と大きさが変わりません。武器も棍棒などではなく金属でできた得物を持っています」


「……そのくらいは知っていますけど?」


 急に説明を始めたので首を傾げる。


「さらに急所を鎧で覆っており、ほぼ単独行動をしませんよ?」


「ええ、知ってますけど?」


 『駄目だこいつ』みたいな顔をされた。


「それじゃあ、時間が勿体ないので俺は行きますけど」


 とりあえずそれ以上の言葉はなかったのでそのまま出ていこうとする。


「あっ……ちょっとまっ――」


 何やら大げさに叫んでいるようだが、あまり騒がれて注目されたくない。俺は彼女を無視するとコボルトが生息する岩場へと向かった。




「よし、到着」


 到着したのは無数の岩が点在する殺風景な場所だった。

 コボルトはゴブリンの次に弱く、トロルやオーガなどの天敵も多い。


 そんなわけで、こうした岩場の陰に穴を掘って隠れ住んでいる。


 俺は慎重な足取りで周囲を探索し続けることにした。

 用心深い相手なので索敵にはゴブリン以上に気を遣う必要があるかと思ったのだが……。


「ウウウウウッ!」


 あっさりと一匹のコボルトが目の前に現れた。


「一匹というのは都合が良いな」


 基本的に単独行動をしないはずのコボルトだが、もしかして俺が弱そうだから勝てると思って姿を現したのだろうか?


 まずはスキルを使わずに攻撃を仕掛けることにする。


「はああああああっ!」


 ショートソードを振りかぶりコボルトに斬りかかる。


「ガルッ!」


 向こうも持っていたショートソードで受け止めたため『キンッ』と音がして嫌な汗が出た。

 もしかすると、こうして戦いを長引かせて仲間が来るのを待っているのではないかと思ったからだ。


「このっ! このっ!」


 剣を振り回すたびコボルトが受けに回る。どうやら俺の方が力が強いらしく、攻めに回れないでいるようだ。


「これなら普通に戦っても負けない!」


 スキルに頼るばかりではいけない。そう考えて試してみたが『ステータス操作』を行ったことで地力も確実についていたようだ。


「ガウッ! ガウッ! ガウッ!」


 次々とコボルトの攻撃をはじき返す。


 受けに回ってみてもわかる。攻撃が軽いのでいつでも主導権を奪い返せそうだ。


「ガガウッ⁉」


 俺は何度かの打ち合いのあとコボルトの剣をはじくと、


「バッシュ!」


 隙だらけになった胴を薙ぎ払った。


「えっ?」


 コボルトの身体に深い傷がつきそのまま倒れる。どうやら絶命しているようだ。


「まさか、一発で?」


 バッシュのレベルを上げて威力が上がったからだろうか?

 レベルアップによる筋力の上昇と職業補正のお蔭だろうか?


 恐らく一つ一つの積み重ねがこの結果を生んだのだろう。


「そうだ、レベルは……上がってないか」


 今日の検証は『取得スキルポイント増加』『取得ステータスポイント増加』の効果を得られるかだったのだが、流石にレベルが上がってきた状態ではコボルト一匹倒した程度では無理らしい。


「それじゃあ次の獲物を探すかな」


 短剣で討伐部位を切り取ると俺は次のコボルトを探し始めた。






「おっ! 丁度良いタイミングでレベルが上がったぞ」


 あれから、二匹で行動するコボルトに二度遭遇した。

 一度目は動揺したところに先手を打たれ攻撃されたので少し苦戦したのだが、二度目はこちらが先手を打ってバッシュを仕掛けたところ一撃で倒すことができたので、危なげなく勝てた。


 そんなわけで依頼達成と同時に目的も達成したのだが……。


 名 前:ティム

 年 齢:16

 職 業:戦士レベル4

 筋 力:53+8

 敏捷度:33

 体 力:23+8

 魔 力:6

 精神力:28

 器用さ:21

 運  :-19

 ステータスポイント:87

 スキルポイント:43

 取得ユニークスキル:『ステータス操作』

 取得スキル:『剣術レベル1』『バッシュレベル3』『ヒーリングレベル3』『取得スキルポイント増加レベル3』『取得ステータスポイント増加レベル3』





「スキルポイントが5増えてステータスポイントが8増えた。ということは『取得スキルポイント増加』のレベル1あがることに一つ増加するってことで良いのかな?」


 俺はコボルトの討伐部位を切り取りながら検証をしている。


「となると既に上がってしまった戦士レベル2ぶんのポイントがもらえないってことか、勿体ないことをしたかも……」


 なんの説明もなく『ステータス操作』のユニークスキルを手探りで使ってきたのだ。知りもしないのに最善を選択するのは難しかっただろう。


「後悔しても仕方ないか、これからも慎重に検証を繰り返して探っていくしかないよな」


 この『ステータス操作』のお蔭でようやくスキルを使えるようになったのだ。前向きに考えるべきだろう。


 コボルトを単独で数匹相手どるなんてのはDランク冒険者なら誰でもできる芸当だ。現時点での俺の実力はまだ駆け出し冒険者の域を出ていない。


「今後はより気を引き締めていかないとな」


 同期に対して一年の遅れがあるので、俺は彼らに追いつき追い越すためにさらに努力をしなければならなかった。

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