ほかの宇宙では技術的特異点がおとずれている

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 前置きがながくなったが、此処でぶつかった『人生史上最大級の謎』というのは、『ゴッド・ライク・マシンはいずれかの膜宇宙で存在するはずなのに、なぜわれわれの膜宇宙には干渉してこないのか』というものである。


 ゴッド・ライク・マシンについては、冒頭で簡略に説明したので筆舌はつくさないが、これが『いずれかの膜宇宙で存在するはず』とはどういうことか。


 さまざまな可能性があるが、一番信憑性のたかい超弦理論(厳密にはM理論)において説明すると、『世界のはじまりには十一次元のカラビ・ヤウ多様体が存在』し、『この多様体からスロート(へその緒のようなもの)が発生しつづけ、それぞれのスロートの先端に、ひとつずつ宇宙が誕生』しているとされる。


 これらの宇宙たちが、マルダセナの対応とよばれる大発見で、『内側から観測すると三次元だが外側から観測すると二次元である』ことが証明され、実際には膜のようにうすっぺらなので『膜宇宙』とよばれるようになった(つまり、われわれ物体は膜に投影されたホログラムにすぎないので、『ホログラフィック原理』ともよばれる)。


 さらに、十九世紀末(ちょうど一九〇〇年)に発見された量子力学によって、『宇宙は量子レベルでの波動関数の拡散の聚斂によって無数に分岐している』ことがわかるので、宇宙の外側からみると『膜宇宙はCDやDVDを重ねたようにつらなっている』のではないかとかんがえられる。


 われわれが観測している宇宙はこのひとつだけなので、『はるか邃古に誕生し、すでに技術的特異点に逢着している膜宇宙はおそらく存在している』というのが、愚生の愚論なのである。

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