第69話 クラーク家の来訪

 昼下がりのお茶会も終盤に近づいたころ、馬車が近づく音が聞こえてきた。

「いらっしゃったようね」

「ええ、お母様」

 グレイスとシェリーは食堂から出ると、玄関に向かった。


「奥様、お嬢様、クラーク様がいらっしゃいました」

 下僕がグレイスたちに言った。

「分かったわ。ありがとう」

 グレイスとシェリーが立っていると、そこにカルロスもやってきた。

「来たようだな」

「ええ」


 玄関のドアが開き、シリル・クラーク子爵と妻のシンディー・クラークが現れた。そして、アシュトンが馬車を降り、両親の後に続く。

アシュトンたちの背後では、クラーク家の従者が荷物を馬車から降ろし、ホワイト家の召使が屋敷の方へ案内していた。


「今日はおまねきありがとうございます。ホワイト辺境伯」

「よくいらっしゃいました、クラーク子爵。少しの間ですが、お気楽にお過ごしください」

 シリルとカルロスが握手をした。続いてシンディーとカルロスが握手をし、グレイスとシンディーが挨拶をした。シェリーが緊張してぎこちない笑みを浮かべていると、シリルとシンディーがシェリーに言った。


「今日は一段とお美しいですね、シェリー様」

「本当に」

 シェリーは照れながらも、答えた。

「ありがとうございます」


 シェリーがはにかみながら、シリルとシンディーと挨拶をしているとアシュトンがカルロス達への挨拶を終え、シェリーの前に立った。アシュトンはシェリーを見て、軽く目をしばたかせた後、恥じらうような笑みを浮かべて言った。


「シェリー様、やっとまたお会いできましたね。なんて美しいのでしょう……。言葉を失ってしまいました」

「アシュトン様ったら、大げさですわ」

 シェリーが笑うと、アシュトンもくしゃりと顔をほころばせる。

 見つめあう二人を置いて、カルロスがシリルに尋ねた。

 

「遠かったのでお疲れでしょう。しばらくお部屋で休まれますか?」

「グレイス、アシュトン、お言葉に甘えさせていただくかい?」

「そうですね。すこし休憩させていただこうかしら」

「では、お部屋へご案内いたします」

 カルロスが執事に声をかける。執事はメイドを呼び、シリルたちをそれぞれのゲストルームへと案内させた。


「アシュトン様、少し日に焼けたのかしら? 凛々しくなられたような気がするわ」

 シェリーがため息交じりに言うと、グレイスが微笑んだ。

「未来の旦那様に見とれていたの?」

「……お母さまったら……そんな意地悪を言わないでください」


 シェリーは顔を赤くして、そっぽを向いた。

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