第52話 白愛会の力

「お初にお目にかかります、骨川 大便さん」

骨川邸の大会議室、長テーブルが四角い輪を描く様に置かれ部屋の窓際に骨川 大便が座る、その対局する出入り口のドア付近の椅子に黒戸 紅はテーブルに足を乗せて腕を組み左側に火野 京子、右側に渋谷 凛を座らせて大便に挨拶をする。


「き、貴様!? ここを何処だか分かって乗り込んで来たんだろうな!」

大便は大声を張り上げ、小娘を威嚇する様に怒鳴り叫ぶ。


「フッ……言いたい事はそれだけですか? まぁ言いわ本題に入りましょうか? 私達の組織はご存知だと思うので説明は省きますが、まずは慰謝料を頂きましょうかね……私も仲間もご覧の通りかなりの重傷を受けてしまったので、謝罪は入りませんので出すもん出して下さいな」

紅はとても冷酷な目で大便を睨み淡々とした口調で話す。


「ふ、ふざけるな!? 貴様らが先に仕掛けてきた事だろうが、 貴様らこそ我が財閥グループに賠償しろ! 」

大便は机を思いっきり叩き、脅す様な口調で紅を睨み怒鳴る。


「何を馬鹿な事を言っているのやら、先に手を出したのはそちらでしょうが、貴方の息子の部下がショッピングモールで白君を滅多刺しにした事をお忘れですか?」

緑山 雫は黒縁眼鏡をクイッと上げ部屋の右側の壁に寄りかかり大便を馬鹿にする様に話す。


「知るかそんな下っ端のしでかした事……そもそも誰だ白とは? 貴様らとは関係ないだろうが!」

大便が汗を掻き白の名前を出すと。


パンッ!


「おい! 糞ジジイ調子にのるなよ、軽々しく貴様みたいな糞みたいな奴が白様の名前を軽々しく出してんじゃねーぞ」

渋谷 凛が机を思いっきり叩きキレる。


「まぁまぁ落ち着いて凛、私達の言い方が悪かったわねごめんなさい大便さん、率直に言うわ……これから骨川財閥は潰して今後は黒戸財閥として私達が引き継ぐから、だから貴方あなたはお払い箱よ出て行きなさい! お分り頂けた大便さん?」

紅はニヤケながら大便に尋ね。


「はぁ? ば、馬鹿は休み休みに言え小娘、そんな事が出来ると思っているのか? 財閥は何年、何百年も歴史があって、今日、明日潰すとかそう言う問題……」

馬鹿馬鹿しいという態度で大便は目の前の紅に説明をしようとした時。


『ドン!』と部屋の左側に立つ小林 薫が机を叩き大便を睨みつけ。


「ゴタゴタうるさいね〜これは要求でも、請求でも、懇願でもないのよ? うちら白愛会に骨川財閥の財産、資産を全て寄こせって言ってるの分かる?」

薫はイライラを隠せずに問い掛け。


「貴様らでは話にならん! これ以上脅しをかける様なら警察を呼ぶぞ!!」

大便はスマホに手をかけ、電話をかける仕草を見せると。


「別に警察を呼ぶのは構いませんが、既に私の横にその警視庁の方がお座りになっていますがお話になりますか大便さん?」

紅は大便を馬鹿にする様に隣に座る火野を紹介する。


「警察を呼ぶとはいい度胸だな大便? これだけ警視庁の人間に怪我をさせてタダで済むと思ってるのか? その上……私の白くんに対しての罪は死んで許されると思うなよ」

火野はとても低い声で大便を睨み、呼べるものなら呼んでみろと言わんばかりの高圧的な態度を見せ。


「だったら私の方からもっと素敵な人を紹介してあげますよ」

紅は自分のスマホを取り出すと、ある人物の連絡先を出し呼び出しボタンを押す。


「あっ? もしもし紅ですが、今ね骨川財閥の総帥でトップの骨川 大便と一緒なのね、貴方からも一言言って差し上げてくれないかしら」

紅は連絡先の相手に簡単に現状を説明をするとスマホを雫に渡し、大便の元にスマホを届けた。


「もしもし大便だが誰だ?」


『あら、初めまして大便さん、私は内閣総理大臣を務めさせて頂いてます、犬神いぬがみ 花子はなこと申します』


「なっ!? 冗談でしょ……なんで総理がこんな小娘と知り合いに……」


『……聞き捨てなりませんね大便さん、我が会長を小娘呼ばわりとは……少し失礼では』


「一国の総理がこの小娘……いや紅という奴に好き勝手させて良いのか?」


『あん……おい大便! あまり調子にのるなよ、紅様だろうがコラァ! 前々から水面下で骨川財閥の解体と新たな後釜に黒戸財閥の設立は動き出してるんだよ! お前がする事は黙って全ての財産、資産を紅会長に差し出し、路上生活をしてればいいんだ、分かったか大便?』


「な、なんだと貴様! そんな勝手が許されると思っているのか!!? 貴様ら与党が許しても、野党が黙ってないぞ!」


「お生憎様あいにくさま、この件だけに関しては与野党全会一致で承認されてるのよ、残念だったわね白愛会を舐めすぎよ』


「き、貴様も白愛会の者なのか……」


『残念ね、黒戸 白様に手を出した事が貴方の失敗よ……でわさようなら』

犬神 花子総理は電話を切り、雫は大便からスマホを奪い取ると消毒液で殺菌して紅にスマホを戻し。


「でっ? 骨川財閥は国と喧嘩でもするのかしら? 貴方の情報がどこまで掴んでるかは知らないけど今の電話でお分り頂けた? 白愛会の規模を」

紅は机から足を降ろし、テーブルにひじをついて前のめりになりながら尋ねる。


「わ……分かった、骨川財閥は解体しよう…………お前を道連れに始末してからな!」

大便は懐から拳銃を突き出すと引き金に手を伸ばす。


カチッ、カチッ


「えっな、何!? な、なぜ弾が出ない……」

大便は拳銃を紅に構え銃を撃とうとしたが、発射されずただ引き金が落ちる音だけが部屋に響き渡る。


「お探しの拳銃はこちらではなくて大便? 先程近づいた時に貴方の黒服が持っていたカラの拳銃とすり替えさせて頂きました」

緑山 雫は片手に拳銃を構え骨川 大便に拳銃を突き付ける。


「き、貴様返せ! そ、それはわ、わしの拳銃だ!」

大便は立ち上がり雫に襲い掛かろうとすると雫は拳銃の引き金を引き。


『パン!』と銃声が鳴ると弾丸は大便の頭の上スレスレを通過、部屋の大きな窓ガラスが粉々に弾け飛び、外の空気が一気に部屋を包み込む。


「私に近づくんじゃない! 私はお前たち骨川が嫌いなんだ、私に少しでも触れてみろ次はその腐った脳みそに弾丸をめり込ますぞ! 分かったら黙って席に戻って紅会長の言うことに素直に従って手続きをさっさと終わらせろ」

雫は拳銃の銃口を大便のおでこにグリグリと押し付け、黒縁眼鏡の奥から睨みつけ冷酷に言い放つ。


大便は震え素直に席に着くと、部屋に突然スピーカーらしき物から何か再生される音が響いた。


『き、貴様返せ! そ、それはわ、わしの拳銃だ!』それは先程大便が言い放った言葉だ。


「大便さんご存知かしら? 日本では拳銃の所持は禁止だって事を」

紅はスマホに録音した音声を何度も再生する。


「き、貴様らだって拳銃を奪い使っていただろうが!? 現に今そこの眼鏡をかけた小娘も使用した、そんな音声が脅しになると思っているのか?」

大便は汗ダクダクに苦虫を噛んだような顔で言い放つ。


「脅し? 貴方はまだこの状況が分かっていない様ね、私の優しさで貴方が建前上簡単に財閥解体を出来るように材料を提供して上げてるだけよ、貴方こそもしかして白愛会を脅してるつもり? ちゃんちゃら可笑しいわね、まだ分からないのかしらこちらがワザワザ最低限の力と規模を教えてあげてるって言うのに」

紅は呆れた顔で大便の座る割れた窓ガラスの方に指を指す。


「ま、窓の外……? 外がなんだと言うんだ」

大便が後ろを振り向くと。


「な、なんだコレは……」

窓の外には数十万という女性がこの邸宅を取り囲み。


「ご理解頂けたかしら? 私の一声で貴方の命などどうにでも出来るのよ、ちなみに海外逃亡なんか考えない事ね……うちの組織は海外にも存在するので」

紅は雫を呼びみんなに解散するよう指示を出す。


「では骨川 大便さん、明日にでもすぐに骨川財閥の解体の会見を開き貴方の口から今後は黒戸財閥が全てのグループ事業を引き継ぐ事を発表して下さいね? では御機嫌よう」

紅は雫に抱えられ、振り向く事なく大便に手を振り骨川邸を後にした。


ーー

ーー

ーー


後日、骨川 大便は骨川財閥を解体の発表をし、黒戸財閥の誕生と全ての事情の譲渡が発表され、黒戸財閥総帥に火野 京子が付くことが決まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る