第51話 黒戸 白の力の差
「遅くなってごめん京子さん……大丈夫じゃ……ないですよね」
黒戸 白はジャック・ザ・.リッパーに向けていた冷酷な表情とは打って変わり、火野を心配そうに見つめ近づく。
「し、白くん……来てくれたんだねありがとう……」
火野は一番会いたかった人が助けに来てくれた事がとても嬉しく大粒の涙を流す。
「ごめん……僕がもっと早く来ていれば……」
白は悲しそうに火野に謝ると。
「な、何言ってんの!? 白くんは全然悪くない! 白くんのお陰で助かったんだよ……そんな事言わないで……あっ!? それよりも、妹さん……白くんの妹さんの紅ちゃん達が見当たらないの……白くんこっちに来る時に会わなかった?」
火野は白の顔を優しい眼差しで見つめ感謝をし、白愛会のメンバーが消息不明になった事を話す。
「ううん、誰にも会わな……!?」
白が京子の問いかけに答えていると、白の背後を何者かが狙い襲いかかる。
「じね! ごのぐぞ野郎ぐぁ!!」
ボロボロの顎と腕にも関わらず物凄いスピードでジャックは白の背後から頭を目掛けて蹴りを放つが、白はその蹴りを難なく手錠で繋がれた手で掴み取ると手の力だけで足をへし折り地面に倒れたジャックの首元を踏みつけ首をもぎ取る。
「さっきも言ったろ……黙ってろ」
白は淡々と一連の行動をこなして冷酷な眼差しで既に死に絶えたジャックに言い放ち、また火野の方へと向き直る。
「ごめん邪魔が入って……ところで容疑者の僕がこんな事を言うのもなんなんだけど……一時的にでもいいからこの手錠を外してはくれませんか?」
白は京子に手錠をされた腕を突き出し頼み込む。
「えっ!? あっ! ごめん……そうだよね、鍵なら私の胸元にあって、ちょっと今の私じゃ取れないから……白くんが取って外してくれない」
火野は胸を片手で指差し恥ずかしそうに鍵の場所を教える。
「えっ!? む、胸に……いやいや無理ですよ流石に女性の胸に手を入れるなんて……失礼ですし……それに京子さんも嫌でしょ?」
白は顔を真っ赤にして慌てて火野から目を離す。
「ううん白くんなら良いよ……私は全然気にしないから」
火野は少し気恥ずかしいそうにしながら、少し嬉しそうに、ドキドキしながら鍵を取ってくれるのを待つ。
「ぼ、僕が気にします! 」
白は照れながら火野から目を離し、紅を探す様に辺りを見渡した。
「もう意気地なし……」
火野は残念そうな顔をしたが、それでも自分の事を
「手錠つけたままでいいので、少し
白が火野の方に振り返った時、その場にさっきまでいたはずの火野の姿が音沙汰もなく消えていた。
「きょ、京子さん……? 京子さん!」
白は大声で叫ぶが返事がない。
(お、おかしい……京子さんは怪我をしている、こんな一瞬目を離した隙に姿を消すなんて……まだ敵がいるって事なのか)
白がそう考えている時、足元になにかが絡まる感触を感じた。
「な、なんだこれは!」
白が気づいた時には遅く、その絡まる物はブヨブヨと柔らかく、物凄い力で白を引っ張り出す。
「うわぁ! 」
そのブヨブヨとした物は細く長く、まるで触手の様に白を宙へと持ち上げた。
「あ〜ん? けっ! 男か気持ちわりーな」
触手の中心部から声が聞こえる。
「だ、誰だ!?」
白は逆さ吊りにされながら叫ぶ。
「あん? なんで俺がいちいち男に名前を教えなきゃならないんだよ」
そこにはイケメンの様な顔に、首から下が何百本も触手を伸ばすタコやイカみたいな化け物がいた。
白が逆さ吊りにされ、の化け物の背後に目を凝らすと、そこには紅や京子と緑山さん達が皆触手で口や身体中を縛られている姿が見えた。
「おい! あの子達を離せ!!」
白は化け物に叫ぶ。
「離せと言われて放す馬鹿がいると思うか? 少しは自分の立場を……」
化け物がそう言いかけた時、白はわずかな力で体に纏わり付く触手を打ち破り、地面に着地した。
「もう一度だけ言うぞ……その子達を離せ」
白は物凄い形相で目の前の化け物を睨み、少しずつ化け物に近づく。
「おいおい、止まりやがれ! これ以上近づくならコイツらを絞め殺すぞ!!」
化け物は近づく白に対し叫び、脅す様に紅を吊るした触手を白の目の前に突き出すと、その瞬間に白は化け物の目にも止まらない速さで全ての触手を切り刻み、重傷を負っている紅、京子、凛、薫を抱えて地面に着地、抱えきれなかった他の女の子達はそのまま地面に叩きつけられる形で地面に落ちた。
「ごめんね君たち……同時にみんなを抱えることが出来なくて……痛くなかった?」
怪我負っていた四人を優しく地面に置くと、すぐに地面に倒れた女の子達に歩み寄り心配そうな顔で白が駆けつけ。
「わ、私達なら大丈夫です白様……た、助けて頂きありがとうございます……ただあの〜、その〜……助けてもらって言いづらいのですが出来ればあまりこちらを見て貰わないと助かるのですが……」
白愛会の隠密部隊、諜報部隊の面々は白に声をかけてもらえた事が嬉しくてみんな笑顔で答えていたが、触手の粘液のお陰で触手に捕まった女の子達は皆服が溶かされ全裸状態になってしまい、両手で大事な所を隠しながらもじもじしていた。
「えっ!? あっ……ご、ごめん……だ、大丈夫、大丈夫だから、全然見てないから、本当にごめんね!」
白は助ける事に必死でそんな所まで見てなくて、言われて急に気恥ずかしくなり。
「見られるのは恥ずかしいですが、全然見てないなんて言われるのは少し傷つきます……」
少女達は少し落ち込み、みんな暗い顔になると。
「えっ、あっ……ち、違う違う……全然見てないって言うか、ちょっと……そう、ちょっとは見えちゃった、ごめん……で、でもみんなとても綺麗だったよ」
白は少女達を励まそうと、慌ててフォロする。
「「き、綺麗ですか! 嬉しいです、ありがとうごさいます!」」
少女達は一瞬で表情を明るくし嬉しそうな表情を浮かべ喜び。
「お兄ちゃん油断しないで、その子達を喜ばせてる暇があったら戦闘に集中して!」
紅がジト目で白に叫ぶ。
「遅い! 貴様がどんなに強かろうと油断してる貴様など敵ではないわ」
化け物は切られた全ての触手を再生させ、背後から白の胸目掛けて鋭く尖らせた触手を突き刺す。
「ぐはぁ!」
油断した白はその場に倒れ込み、地面に大量の血液が広がる。
「白くん!」
「お兄ちゃん!」
「白君!」
「「白様!」」
京子、紅、緑山、凛、薫がそれぞれ叫ぶが白は動かない。
「白くん、白くん」
京子は使える片手で必死に体を動かし、白に歩み寄る。
「んっ!? もしかしてお前は京子か? マジか久しぶりだな、覚えてないとは言わねーよな? 元彼氏でこの俺をこんな体にした張本人がよ」
化け物は火野に気づくと、見下すようにニヤニヤと笑い京子の折れた片足を触手で掴み、自分の顔の方に逆さ吊りの状態で引き寄せ。
「えっ!? あつ! あんたは……も、もしかして糞ノ山? な、なんでここに……」
火野はかつての元彼氏の骨川 糞ノ山の姿を見て驚き震える。
「まさか京子にこんな所で会えるとはな運命的だよな……お前には相当な恨みがあるからよ、簡単には殺さねーでいてやるよ、だから少しそこで寝てろな、俺はまずはこの糞ガキを殺さねーと気がすまねからよ」
糞ノ山は全裸の京子を舐めるように眺めニヤついた口でヨダレを垂らし話すと、体から伸びる全ての触手を鋭利に尖らせ、白に対して狙いを定め。
「や、やめて……し、白くんには……白くんには手を出さないで! わ、私ならなんでも言う事聞くから、白くんは……いや、みんなを見逃して……お願い」
京子は糞ノ山の触手に押さえつけながらも必死に大声を上げて訴えかける。
「ひ、火野さん……な、何を言ってんの……ふ、ふざけないで」
紅は火野の発言に怒り、息をするだけでも苦しい状況で
「ヘッヘッヘっ、そりゃいい提案だ京子、悪くない……」
糞ノ山はニヤニヤと気持ち悪い笑顔で火野の提案を聞く。
「そ、それじゃ、みんなを……」
火野は自分の提案が受け入れられたと思い安堵の表情を浮かべる。
「だがよ京子、もっといい提案があるんだわ……ここにいる奴らを皆殺しにして、お前を好きに痛ぶるってよ、クックックッたまんねーだろこの提案、どうよ京子?」
糞ノ山は落胆する京子を見て大笑いし京子をバカにする。
「えっ……!? お、お願い……白くんや他の子は助けて……」
火野がそれでも糞ノ山に食い下がると。
「しつけんだよこのブスが! テメーにはコイツらを助ける価値もねーって言ってんだろうが!!」
しつこく食い下がる火野にキレた糞ノ山は、火野を掴んだ触手を高さ五十メートル位の高さまで持ち上げ、そのまま地面目掛けて振り下ろす。
しかし触手が地面に振り下ろされた時には、そこには火野の姿は無かった。
「んっ!? な、なに! あいつはどこに?」
糞ノ山は辺りをキョロキョロと見渡すが、見当たらない。
「だったら、糞ガキの方から始末して……あん!?」
京子を見失った糞ノ山は探すのを諦め、白を先に始末しようと白の倒れていた所に目をやるがしかしそこにはただ血の池が出来ているだけだった。
ストン!
骨川 糞ノ山は頭上に何かが着地するのを感じた。
「お前も骨川なんだな……いつもどこでもお前たちは俺の邪魔をする……」
火野をお姫様抱っこの様に抱え、白が糞ノ山の頭上に立つ。
「て、てめー怪我してたんじゃなかったのか!? そこから
「どけと言われてどく奴がいると思うか? 俺からもいい提案を思いついたんだ聞いてくれ……お前をボコボコにぶっ壊すってな、どうだこの提案は良いと思わないか?」
白はとてつもなく冷たい表情で糞ノ山に話しかけ。
「ふ、ふざけるなボコボコにぶっ殺すのは俺の方……」
糞ノ山が喋り終わる前に白は糞ノ山の首を蹴り飛ばし、あまりの威力のために蹴り飛ばした瞬間に糞ノ山の頭は粉砕し跡形もなくこの世から消失した。
本体の頭を失った触手は力なく地面に倒れ、ブヨブヨだった表面もからからに干からびていた。
「きょ、京子さん、痛くない? ごめんねあの糞ノ山って奴は京子さんの因縁みたいな奴だったんでしょ……なのに僕が始末しちゃって……」
白は京子を抱きかかえ、今日だけで何度目の謝罪だろか白は申し訳なさそうな顔で京子に謝る。
「ううん、そんな事どうでもいい、白くんがアイツを倒してくれたならそれは私にとってとても嬉しい事だよ……白くん……わ、わ、私、あなたが大好き!」
京子は全裸で抱えられたまま、白の唇に自分の唇を重ねキスをした。
「あーー!!」
それを目撃した紅が叫ぶ。
「き、貴様……白様にな、何を……」
凛が倒れながらも火野を睨む。
「ちょ、ちょとあなた白君にいつまでお姫様抱っこされてるつもり、離れなさいよ!」
緑山が全裸で近づき、火野をどかそうと腕に触れる。
ボキッ
「痛い! ゆ、指が……」
緑山は指を複雑骨折した。
「取り敢えずみんな一旦落ち着いて、今は京子さんは色々と混乱している状態なんだからまず落ち着こう……まずしなきゃいけない事は……あのその……みんな布かなんかでまずは体を隠すことから始めないかい?」
白はこの場にいる全裸の少女達を見渡し、今優先するべき事を話した。
「「…………」」
この場にいる少女達は一斉に目を合わせ。
「きゃ〜!白様のエッチ!」
「なんで一度見渡してるのよ、お兄ちゃんのスケベ」
「もっと早く言ってください白君……」
「さぁみんな、なんで君達がこんな事になってるか知らないけど帰ろ?」
白がみんなの顔を見て言うと。
「あっ? ご、ごめんお兄ちゃん、私達ね怪我してるから火野さんが呼んでくれてる救護班の人達が来るの待つわ、だからお兄ちゃんは先に帰ってて」
紅はみんなの顔を見回し、白に話し。
「えっ!? だったら僕も一緒に待つよ」
白は紅達が心配で一緒に待つ事を言うと火野が近づき。
「白くん…… これは手錠の鍵です、今日は何度も助けて頂きありがとうごさいます、後の事は私……京子に任せてはくれませんか?」
火野は顔を赤らめながら白に鍵を渡し感謝の言葉を述べ。
「京子さんがそう言うなら……わ、分かりました……それなら後は警察の方に任せて僕は先に……」
白は話終わろうとした途端、急に意識が薄れ地面に倒れる。
「お兄ちゃん!」
「白君!」
「白くん!」
「「白様!」」
その場にいた白愛会メンバー全員が心配になり白の元に近づくと。
「ZZZzzz……」
イビキを立てて寝ていた。
「疲れたのね……暫くその場で寝かせて上げましょう、これからが私達白愛会がお兄ちゃんの為に頑張るばんよ!」
紅は雫に抱えられ、火野も白愛会メンバーに抱えられ、骨川財閥の本丸で、骨川グループの総帥の邸宅へと向かった。
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