第47話 火野 京子と白愛の心

火野 京子は黒戸 白に包帯を巻いてもらい、照れながらもとても幸せな嬉しい気持ちで緊張していた。


「……あっ!? 違う違う! そうじゃないわ……私の心配より、あなた! あなたよ、黒戸君の方が大丈夫なの!?」

火野は過去の嫌な悪夢にうなされて、すっかり忘れてしまっていたが、白は容疑者である前に1人の怪我人なのだと。


「えっ? あぁ…… はい、僕の方は大丈夫です……が」

白は腕に付けられた手錠を見つめ、苦笑いしながら答えた。


「私は……私は警視庁特殊能力対策室の刑事、火野 京子よ。 ごめんなさいね手錠なんて掛けて……ただあの状況で被害者が貴方あなたにやられた言っている以上、刑事としてあなたを見逃すわけにはいかないの……」

火野はこんな優しげな少年を逮捕する事に疑問を持ってはいたが、火野の立場上その様な処置をしなければいけない事を白に説明した。


「気になさらないで下さい、僕がやった事なのは事実ですし……京子さんの判断は正しいと思います。 自らがやった行動を否定も肯定もしません」

白は淡々とした口調で感情を出さずに話す。


「そ、そう……あっ!? その話は変わるのだけれどいいかしら……話辛いなら答えなくてもいいのだけれど黒戸君は……あなたは何かしらの能力の持ち主なのかしら?」

火野は暗い空気を変えようと、本来の任務である特殊能力対策室として黒戸 白の調査の本題に話を変える。


「能力? 僕に特殊な能力なんてありませんよ……ただ普通のその辺の高校生ですが」

白は苦笑いしながら困った顔をして語った。


「嘘! 嘘ね……貴方あなたは私の腕を素手で触ったは……それが何よりのあなたが能力持ちって照明なの……私はね生まれた時から物を折る能力をさずかっていた、この能力で色々な不幸を自分だけじゃない、周りの人達を不幸にしてきた……だから私に触れた白君が何も起こらなかったって事は、貴方を能力者だと証明しているわ」

京子は真剣な眼差しで黒戸に話しかける。


「だと……だとするならただ僕の体が丈夫なだけで、京子さんの能力に打ち勝ったって事なだけだと思いますよ、それを能力と言うのかは分かりませんが……」


「なら、教室で起こっていた事は何? 救護班、捜査班が来る前に一通りの被害者の状況を見たのだけれど、全員が骨が折られていたは……人が人の骨を折るのはそう容易な事じゃない、もしかしたら黒戸君も私と同じ骨を折る能力があるとか……」

京子は黒戸君も京子と同じ能力の持ち主、同じ境遇の人なのだと思い聞いてみた。


「それはないです……ただ彼らの骨が弱く折れやすかったのでは? 僕は生まれて喧嘩をした事がないですし、自分の力なんか測りようがない……いや違いますね、昔一度だけ父なのか……物心着く前にものすごく曖昧な記憶ですが誰かに言われたことがあります、遊びで誰かのてのひらにパンチした時があったんですが、軽い子供パンチです……その後にこの方のてのひらは複雑骨折し、誰かに『白! 二度と人に対して手を上げてはダメだぞ』って……その記憶が僕の何処かに残っていて、だから僕は人に対して手を上げないってそう決めてきました。 多分ですが僕の中でも理解はしていたんだと思います、僕は強すぎると……強すぎるからこそ僕が手を出せば相手を傷つけ、大変な事になると理解はしていたんです、もし僕が弱ければ幾らでも手を出していたでしょうね……すいません、要点が定まらない話をしてしまい」

白は自分の事を真剣な眼差しで京子に話す。


「そ、そう……話してくれてありがとう、黒戸君の話で全てが納得できたわ、そうか……」

京子は白の話を聞き全ての事が理解出来た……そして、ある事に気がついた。


(黒戸君となら私……私は普通の女の子として生きられるんじゃない……)

京子はそう思うと急に黒戸君の目を見るのが恥ずかしくなり、胸が苦しく心臓の鼓動が早くなった気がした。


(ドキドキが止まらない……包帯も巻かず、相手を傷つけず、私が私でいられる相手、私を受け入れてくれる相手……)

京子はそう考えた時に刑事として想ってはいけない、白を京子はは一人の男性として意識してしまう。


「あ、あ……あのく、黒戸君……? 急に変な質問なんだけど……

と、年上の女性を……年上の女性は好きかしら?」

京子は白の気持ちが知りたくなって思いもよらない、急に関係ない質問をしてしまい、京子は言ってからなんて恥ずかしい質問をしてしまって、いるんだと後悔で一杯に顔を赤くした。


「好きですよ、僕にも年の離れた姉がいるので、自由奔放な性格でほとんど家にいないし、僕が物心ついた頃には殆ど家にいた事ありませんでしたが、たまに会うと優しく、可愛がってもらっていたので」


(す、好きです!? えっ! わ、私もしかして告白された? いま好きですって言ったよね? ど、どうしよう……け、刑事が、容疑者の男性と付き合って良いの !? こ、こう言う時はどう返事したら良いのかしら……)

京子は黒戸の一言目以外は聞いておらず、テンパり過ぎで話が入っていなかった。


「あ、ありがとう……嬉しいのだけれどま、まずは……友達……友達からでもいいかしら?」

京子は緊張しながら白の手を握り、交際になる前の一歩から始める事を提案してみた。


「えっ!? あぁ……はい別に京子さんが良ければ友達に……」

白は京子に急に手を握られ驚きながら笑顔で応えると。


コン コン コン


誰かが黒戸 白の病室の壁を叩く音と共に『ゴホン!』と咳き込んだ。


京子と白のお互いが手を取り合い見つめ合う中、二人は音のする方に顔を向ける。


「あの〜お取り込み中すいませんね、お兄ちゃんがまた病院に運ばれたって聞いて駆けつけたんだけど……お邪魔でしたかね、お兄ちゃん?」

音のしたそこには、ドアの所に寄りかかり京子を睨みつける薄紫のボブカットヘアーをした三白眼の女の子、黒戸 紅が立っていた。


「えっ!? お、お兄ちゃん? こ、これはどーも、私は警視庁の刑事で火野 京子と申します……大変失礼なのですが、黒戸君のご家族の方で? 申し訳ないのですが、ただいまある件で黒戸君は容疑者になっているため、ご家族でも面会はご遠慮させて頂いておりますのでお引き取りしてもらってよろしいでしょうか?」

京子は不味まずい所を見られたと思い、なんとか平静へいせいよそお毅然きぜんな態度で面会謝絶をうなした。


「あっ!? いやほらちょっとね逮捕されちゃって……ごめん紅……家族に犯罪者なんて……嫌だよな」

白は紅に対して苦笑いを浮かべ、申し訳なさそうに謝る。


すると紅はベットに向かって歩み寄りベットに座る白に向かって抱きつき、その際に京子を『コツン!』肘で押しのける。


「ううん、私はどんな事があってもお兄ちゃんを嫌いなんかならないよ……もし世界がお兄ちゃんの敵になっても私はいつだってお兄ちゃんの味方だから……」

紅は白を力強く抱きしめつ、京子のすねを足でコツコツと蹴り込み、京子は微妙な痛さに苛立つ。


「ハイハイ、離れる離れる……妹さんだからって許可なく容疑者に近寄らないように、黒戸君は私が……いえ、警視庁が身柄を確保してるので、何かある時は警視庁を間に通して頂かないと困ります」

イラついた京子は紅を引き離し、国家権力を振り回した。


「ふーん……火野さん、私とお兄ちゃんを二人っきりにしてもらえます?」


「却下」

紅がすぐさま京子に許可を求めたが、京子は即答で断った。


「……」


「……」

京子と紅の睨み合いが続き膠着状態こうちゃくじょうたいが続く。


すると一人の看護師が慌てた様子で白の病室に駆け込み、紅に何か耳打ちをすると、紅の表情はみるみる険しくなり物凄い殺気と共にすぐさま病室を飛び出していった。


「ちょっといいかしら?」

京子は紅に耳打ちをした看護師の肩を叩き警察手帳を見せ廊下来るようにうながした。


「悪いわね、黒戸くんの妹さんに何を話したのか聞かせてもらえる? 刑事としてあの様な殺気を振りまいてる者を見過ごしておく分けにはいかないのよ……職務質問であり、断るなら公務執行妨害で逮捕も辞さないわよ」

京子は気分は乗らなかったが、少し高圧的な態度で看護師を問い詰める。


「フッ……脅してるつもりですか、火野 京子刑事さん? あなたの様な部外者に話す事はございません。 むしろ忠告させて頂きたい、白様や紅さんにあまり馴れ馴れしく無礼な態度を取らない事を、この病院の7割は我ら紅さんが率いる白愛会のメンバーで占められている……皆が愛する白様を、火野刑事が愛してしまうのは分かりますが、これ以上の色仕掛けを仕掛ける様ならここをタダで出られるとは思わない事です」

看護師は鋭い目で京子を睨み、脅されてビビるどころか、逆に京子を脅してきた。


「バ、バカじゃねーの……べ、別に黒戸君に色仕掛けなんかしてねーし……た、ただちょっとドキドキしちゃったつーか、か、か、勘違いしないでよね!」

京子は看護師は言葉に驚き動揺し恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして全力否定した。


看護師の彼女は京子の肩をポンポンと叩き。


「良いんです、楽になりましょうよ火野刑事……いや、京子! 好き、愛してると認めた方が心が楽になりますよ、そして認める事でより白様を好きになります。 貴方あなたの様に好き好きオーラがあふれているなら私ども白愛会は京子を受け入れますよ……どうです、白様を好きなんでしょ?」

看護師の彼女は京子を説得する様に優しく問いかける。


「ち、違う! 私は好きなんてもんじゃない……私は黒戸君を愛してるの、だから誰にも渡さない、私の、私の黒戸 白君なの!」

(そんじゃそこらのただ白君を好きとかと言ってる奴らと一緒にして欲しくない)

京子は看護師の軽い言葉に反論する様にムキになり、京子自身が誰よりも白君を愛してると看護師に叫んだ。


その瞬間、パチパチパチと病院中から拍手が起こる音が鳴り響き。


「ようこそ白愛会へ、私たちは貴方を受け入れましょう」

看護師の彼女は大きく手を広げ、京子に近づくと深い優しさで包み込み抱きしめてきた。


「今日から京子は私達の仲間であり、そしてライバルよ! みんな白様を好きで愛してるの、私も貴方には負けないわ……だから仲間である貴方には教えてあげる、今さっき入った情報で、骨川財閥の総裁そうさい、骨川 大便だいべん宅に、我が白愛会の副会長並びに、隠密部隊、諜報部隊の面々が報復しに向かったって情報が入ったの……私達は白様を守るため動けないけど、貴方はどうする? 骨川 大便は危険な男、白愛会も迂闊うかつに手を出さずにいたのに……」

看護師の彼女は京子に抱きつくと、耳元で真剣な口調で先程紅に伝えた情報を京子に教えた。


「ほ、骨川……またその名を聞かされるとはね……これも因果なのかもしれないわね……私も行くは、刑事として……いや、黒戸君の彼女として!」

京子は看護師の彼女に「ありがとう」と伝え。


「私の彼氏を……黒戸君をよろしく頼むは看護師さん」

京子は看護師の彼女から離れ、手を振りながら病院の出口に向かい廊下を走った。


「うん京子、白様を勝手に『彼氏』だの少し粛清しゅくせいが必要だけど、気をつけてね!」

看護師の彼女も京子に手を振り見送ってくれた。


「待ってなさい骨川一族……この白愛会エースであり、秘密兵器、火野 京子が、お前たち、糞野郎どもを血祭りにあげてあげるわ!」


こうして白愛会対骨川財閥の歴史に残る戦いの火蓋は切って落とされた……|

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