第29話 黒戸 白の復帰
傷害事件から数日、黒戸 白は驚異的な回復を見せ学校への復学が怪我から一週間そこそこで決まった、当然その情報は裏社会でもすぐさま広がり、『白愛会』しかり『骨川財閥』そして『暗黒白虎組』にも伝わっていた……
〜黒戸 白が学校へ復帰する当日〜
「お兄ちゃん、おはようございます、朝ですよ……」
紅は白の布団に潜り込み顔を近づけて挨拶をする。
「うわぁ!!」
白は目が覚め目の前に紅がいる事に驚きベッドから転げ落ち叫ぶ。
「そんなに驚く事ないじゃないですか……そもそも一緒に寝ようとすると拒否するお兄ちゃんが悪いんですから」
紅は白の反応に
「もう子供頃とは違うんだから一緒に寝るわけないだろ、紅はね可愛いくて美人なんだからもう少しお
白はただただ普通に紅を
「ムッ! そんな言い方するなんて酷い!! だったら私はお兄ちゃんとずーと一緒にいます、私をお嫁にもらって下さいよ? 紅の事は嫌いですか?」
紅は白の発言に腹を立てたのか、少し怒り気味に問う。
「何怒ってるんだよ、別に紅の今後を心配してだな……紅の事は嫌いなわけないだろ、好き……んっ!? ちょ、ちょ、ちょっと待って、なんかこのやり取りを以前にも似た事あった気がするんだけど……」
白はなんだか紅と喋っていてデジャブを感じた。
「えっ!? そうですか、ただただ普通の兄と妹の会話に感じますが……」
紅は目が泳ぎ、なんだかよそよそしい態度で急に下手糞な口笛を噴き出した。
「いやいや何その白々しい明らかに何か誤魔化す様な態度、そもそもなんでずーとスカートのポケットに手を突っ込んでるの? ちょっとポケットから手を出してみ」
白はジト目で紅を見つめ問いただす。
「チッ! あと少しだったのに……」
紅は舌打ちして手からICレコーダーを取り出す。
「くっ!? また訳の分からない言質取りしてたのか!」
白は呆れた表情を浮かべる。
「まぁ良いでしょ今回はここまでにしておきましょう、『美人で可愛い』をゲットしましたし、その内それぞれの言葉をつなぎ合わせて立派な文章にして見せます」
紅は清々しいくらいの白い歯を見せてニカッと笑顔でサムズアップのサインを白に向け、今その場で編集した録音を再生した。
『嫌いなわけないだろ、紅は可愛くて美人なんだから……』
「では、私は朝食の準備しているので早く着替えて下に降りてきて下さいね」
紅は楽しそうに部屋を出る。
「まったく……」
白はそんな紅の好意を暖かく見守った。
ーー
ーー
ーー
その後、白と紅は一緒に朝食を食べ、紅は学校でやらなきゃいけない事が有るとかで桜野中学に向かうため先に家を出て登校した。
紅が家を出る際、「いいですかお兄ちゃん、まだ病み上がりなんですから、くれぐれも無理だけはしないでくださいね、無理だけは……」
紅はただ学校行くだけなのに何だか心配そうな
「あんな事件があった後だから学校行ったらどんな反応されるんだろ、色々と声かけられるのかな、あれこれ質問されたらどうしよう……はぁ〜なんか考えてたら
久々の登校にも関わらず
「だ〜れ〜だ?」
突然、誰かの声と共に白の目の前が暗くなったのだ。
「美希」
「早!」
白の後ろから抱きつくような距離で目隠しをしてきた幼馴染、
「もう少しは考えてよ白、つまんな〜い」
白の背中におでこを
「あぁ……お、おはよう」
白は背中越しの美希にここ数日に色々とあった事で気まずくはあったが挨拶をした。
「う、うん、おはよう! 白……あ、あと、ありがとね……」
美希は白に挨拶を返し、少し沈黙して心の底から優しい声で白にお礼を言った。
「ううん、僕は何もしてあげられなかった、美希に対しても、礼子さんに対しても紅に対しても……」
白がそう言いかけると、美希は白の目の前に移動してきて後に手を組、少し腰をくねらせ上目遣いに。
「そ、そんな事ない! 紅ちゃんだって、礼子だって……私だって……みんな感謝してるよ白に」
美希は
「そ、そ……そんな事……でも……美希がそう言うなら……ありがとう美希」
白はまだどこかで本当に彼女達を助けてないと思いつつ、納得は出来ていなかったが、彼女の白を励まそうと言う気持ちに応えてあげたく、白も精一杯の笑顔で答えた。
「さぁ早く二人で一緒に学校行に……げっ!?」
美希は白の手を掴みながら、後ろ歩きして、数歩進んで前を向いて固まる。
「あら、あんまりじゃない美希、私を置いていくなんてさ……そのうえ白と一緒に登校なんてね」
白と美希らの学校までの通学路の途中には少し坂があり、その坂の上にサラサラの金髪に、綺麗なキツネ目、モデルかと思うスタイルのAカップの沢村 礼子が仁王立ちで、鋭い
しばらくすると礼子は頬を膨らませて怒ってるアピールを前面に出し白達の方に歩いてくる。
「酷いじゃない白……私を置いて、美希とだけ一緒に登校なんて」
礼子は美希を無視して白に甘える様に
「ちょっ、ちょっと、しょ、しょうがないでしょ、礼子の家は私達の家と真逆の方向なんだから」
美希が礼子の態度に苛立ちながら叫ぶ。
「『私達』……? 何その言い方、めちゃ引っかかるんですけど! 白と一緒に暮らしてる分けでもない癖に、なに
礼子が美希の言葉に突っかかると、『ポカン!』 と美希が礼子の頭を叩く。
「い、痛い! な、何すんのよ美希」
礼子は美希に詰め寄る。
「お隣同士なんだから『私達』で何が悪いのよ、あんただって一々『いちいち》人の言葉尻『ことばじり》を突っついて難癖つけてんじゃないわよ、礼子こそ彼女にでもなったつもり、こっちこそ笑わせないでくれる、幼馴染だった事を隠してたのだって、他人のフリしていたのだって、私と白の
美希は礼子を
「まぁまぁ二人とも、そんな事で喧嘩しないで、僕は一人で行くから、二人仲良く登校すれば……」
白は上手く二人を仲裁するべく間に入った。
「ふん!」
「フン!」
二人は胸の辺りで腕を組んでそっぽを向いた。
「も、もう……いいから早く行かないと遅刻するよ、ほら行こう!」
白は喧嘩する二人の手を取り、左に美希、右に礼子と二人に挟まれながら学校に駆け出した。
二人は急に手を握られた事で顔を真っ赤にして、二人は同調した様に「「うん!」」と嬉しそうな笑顔で一緒に駆け出した。
(いつも一人で登校していた僕が、今はこうして誰かと一緒に登校してる……今まで考えても来なかった事、もし救われてるのだとしたらそれば僕が一番に彼女達に助けられてるのかもしれない)
白は二人を引っ張りながら自然と笑顔になる。
「美希、礼子さん……ありがとう!」
白は二人と手を繋ぎながら歩き、振り返らずにお礼を声に出した。
「えっ……?、どうしたの白、こちらこそだよ」
美希は不思議そうに笑う。
「何言ってんの急に……それに『さん』要らないし、なんで美希の次なのよ、もう……お礼なんて、私の方こそ……」
礼子は白の呼び方や順番に不服らしく文句を言いながらも、白に顔を近づけ手を繋ぎながら更に腕にしがみつき白の耳元で「ありがとう」と
「あーずるい礼子……私も」
美希も白の腕にしがみつき、礼子と顔を合わせて笑った。
「うん、歩きづらいね……」
白は素直な感想を述べた。
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