第20話 黒戸 紅の独断

黒戸 白がショッピングモールで刺されて入院してから数日、黒戸 紅は白のお見舞いに行って家に帰るのが日課になっていたそんなある日。


ジリリリリ……ジリリリリ……


紅が家に帰ると黒戸家の黒電話が夜遅くに薄暗い部屋で鳴り響いていた。


「はいもしもし、どちら様でしょうか?」

紅は無愛想ぶあいそうな態度で電話に出る。


「もしもし、鳳凰院と申しますが……あら……その声は紅はんどすか?」

京都訛りの気品が漂う声が受話器の向こうから聞こえる。


「チッ、茜か……なに? 今は忙しいんだけど切るわよ」

紅は相手が茜と分かると舌打ちをしてさらに無愛想な態度で面倒臭そうな反応を見せる。


「つれないどすな〜〜昔は色々お世話をしましたのに、いいんどすよ別に直接こちらが病院へ白ちゃんのお見舞いしにいっても……どないします? フッフッフッ」

茜は紅の無礼な態度にもまったく感情を表に出さず落ち着いた態度で優しく脅しを掛ける。


「あん!? な、なんであんたがお兄ちゃんの事を……迷惑よ! お見舞いには来るな、お兄ちゃんはねごく普通の生活を送って、ごく普通の人達と関わる生活をするの、あんたの様な裏社会の住人や、その繋がりがある人間と関わらせたりは一切いっさいさせないわ」

紅は兄、白の名前を出され茜を罵倒した。


「フッフッフッ冗談どすよ、わても白ちゃんには普通の一般人の方々と同じ様な生活をしてもらいたいよて、わてらみたいな裏の住人はなるべく接触せっしょくせいへん方がよろしゅう」

茜は優しい口調で話す。


わてらって……あんた、私まで一緒にしないでくれる、これでも私は中学生で生徒会長してる真面目な一般学生なのよ、あんたと一緒にされたら迷惑よ!」

紅は終始自分を同種の様に話しかけてくる茜に苛立ちを隠せず強い口調で話す。


「そないですか? わても紅はんも同じ同種の生き物と思っておりますよてにフッフッフッ」

茜は落ち着いた態度で紅の苛立ちを無視するかの様に話をわす。


「もういいわ……でっ、何? お兄ちゃんの心配してくれたのは嬉しいし……ありがとう。 でもそれが本題じゃないんでしょ?」

紅は要領の掴めない態度で話す茜に呆れ、本来の用件を尋たずねる。


すると電話越しながら急にその場の空気が緊張感を帯びたかの様に、さっきまでの雰囲気が一変した。


「はぁ……そうどすね……率直そっちょくにお聞きします……白ちゃんをやった野郎やろうは誰や?」

茜の声は何よりも冷徹で低く、殺意に満ちた声だった。


「そんなの知らないわよ、こっちが知りたいくらいよ、ただ今調べさせて分かってるのが骨川の関係者って事ぐらいかしらね……もしそうなら一般に流れる情報もある程度は改編捏造されるでしょうけどね」

紅はさっきとは打って変わり、茜の態度に動じず落ち着いた態度で茜の質問に答える。


「骨川どすか……それならいい機会ですし……潰しますか? もし白愛会が動くならわてら暗黒白虎組も協力を惜しみませんよていつでも言ってくらはいなフッフッフッ」

茜は紅の答えに少し思考を巡らせ、とても重大な提案をあっさりと紅に持ち掛けた。


「まぁ……あんたの所が動くなら協力してもいいわ、ただ骨川のトップの首は私達が、白愛会が取らせてもらうからそれでいいかしら?」

紅は茜の提案に少しを置き考え、直ぐに条件を述べて返事を返した。


「さすがは紅はんどす、白愛会のトップに立つだけあって判断が早くて助かりますな……その条件でよろしゅう、うちは白ちゃんを傷つけた野郎に制裁加えさせられたらそれでえぇですよてフッフッフッ」

茜は紅の即決な判断に自身も直ぐ答えた。


こうしてとても重大なはずの出来事は誰の相談もなく、ただただ互いの感情のみで骨川財閥の壊滅作戦が決められたのである。

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