第13話 その2

 悲しいのに涙が止まってしまうのは、さんざん泣いてきたから。

 追いかけたいのに足が動かないのは、さんざん体をいじめたから。

 だって厭なんだ。師匠か、ローシーかなんて二択を迫るこの世界は生き地獄で、ずっと苦しい。でも■ねないんだ。瓶一杯の薬を飲む前にちょっぴりローシーの笑顔が浮かんできて、私はそんなローシーに全部投げ出そうとしてるんだって、私は私に失望する。

『本当にそれでいいのか?』

 良くないよ。だからもういいやって、半端に減った瓶を置く。

「ごめんね……、ローシー……」

 液体の薬は効き目が早い。私はその場にぶっ倒れて、ゴーレムに介抱されて……。そんなバカみたいなことを数回やってきた。

 でも今日は、ゴーレムは近づいてこない。至極当然だ。ローシーを愛してるのに、彼女のために師匠の期待を裏切れなかった。土くれのゴーレムでさえ呆れてるよ。お前は外道だ。ローシーの想いをなおざりにするのか、って。

 ローシーは私を信じていた。おそらくはあの日、私がローシーを助けたから。見返りなんて求めずに、私を日向に連れ出してくれた。返さないといけないのは私の方なんだよ。まだありがとうも言えてないんだよ。なのに、なんで、なんで、

『なんで止めなかったんだよ! ローシーにとって絶対に良くないことになるってわかってたんだろ! 師匠に好い顔をするのがローシーを助ける事より重要なのかよ!』

 私の手で死人になったローシーが蘇る。夢の癖に、現実よりもしつこく残りやがる。でも、たぶん同じだ。夢の私も、現実の私も、ローシーの笑顔を奪ったんだから。

 ———もし神鳥様がいるなら、もう一度だけ、私にチャンスをください。

 私はローシーを助けたかったんです。ありがとうって、言いたいんです。

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