リュードの墓参り
その人の墓は宮殿のほうにある。
リュードは思い出される手の感触に耐えながら馬を走らせていた。
近くには花屋があったので派手すぎない花を買い込む。
「すみません、花を二束いただきたいのですが。」
「はいよ!ってひいいい!も、もう金は要らないから持ってきな!」
店主に声を掛けるとあからさまに怯えていた。
宮殿が近いこともあってリュードの噂が色濃く伝わっているのだろう。
「そういう訳にはいきません。ここに置いておきます。それでは失礼しました。」
リュードは花束の代金を置いて店を後にした。
花束を片手に馬を連れて墓地まで歩く。
墓地に着いた時にはもう薄暗くなっていた。空には雲がかかっているし、早く帰らないと一雨来そうだ。
馬を墓地の入り口に置いて、中へと進む。
墓地の中心に近いところでリュードは歩みを止めた。
「ザンテ様。遅くなってすみませんでした。」
“第33代騎士団長ザンテ・ホークスここに眠る”
そう書かれた墓の前でリュードは一人呟いた。
軽く掃除をして花を供える。
リュードは一年に一回、ザンテの命日である今日しか来ない。
それでもザンテの墓はいつもきれいに保たれていた。ルペルや現団長であるジェイドが掃除をしてくれているのだろう。
リュードは墓の前で膝を付き、手を合わせた。
まずは挨拶。そしてまだ防衛隊の隊長を務めていることや、それからもしかしたら隣国と争いが起きるかもしれないことを報告して、最後に祈りを捧げた。
「どうか安らかにお眠りください。ザンテ様。」
リュードが祈りを捧げ終わると人の気配がした。近くにある木に隠れてこちらの様子を窺っているようだ。リュードは何も気付いていないようなふりをして、木の近くまで行くと、一気に木の裏に回った。
「こんな時間に墓荒らしとはいい度胸だな。」
そう言いながら腕を掴んで引っ張り出す。
「きゃッ!!」
出てきたのは金色の髪と長身を持つ…。
「エレーナ様?!?!」
黒っぽい服を着たエレーナ・ヨハネその人だった。
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