第2話 死なばもろとも

 己が変わっていたのだろう。影響力というものは大いなる武器となり、ときとして自らの首を絞める。良くも悪くもそういうものが〝知名度〟と呼ばれるモノの力だ。


 『ひどいな、こんなに大規模の拡大は見た事がないぞ....君は一体何者だ?』


「見りゃわかんだろ! 人気者だっ!!」

強い感情、特に憤怒や憎悪といった負の感覚をトリガーとして寄生する宇宙生命体。

街の住人は既にほぼ全体が餌食となっていた


「何食ったらこんなバケモンになる!?

お前の友達かなんかならよく言い聞かせろ!」


『友達..交友関係の事か、残念ながら違う。

関係的にはそれの逆と言っていい』

意識も精神も理性すらも奪う連中のソレと比べると確かにリヲンは優しく映る。奪うのは身体のみ、意識も自我も残ったままだ。


『私と出会う前おかしな人影に遭遇したな』


「あの人影の事かよ

それが一体なんだってんだ!!」

立っているだけで何者かが迫り来る、話をするには陰に隠れて忍ぶしかない。街中に出ては強制的に多対一の大暴動が起きてしまう。


『奴の光を受けたなら、きっと君は中身を見られてしまっている。奴は相手の記憶を除きそれを原料として〝コア〟を生成する』


「……コア?」

始めは小さな丸い球のようなものだが、暫く空間を彷徨いそれはやがて周囲に付着する。


『君が人気者なら運が悪いね、コアは強い負の感情に作用する。街の人々は君の姿を見たら襲ってくる、今もこうして危ういだろ?』


「へへ..悪いが慣れてるぜオレは。

何年ムショに篭ってたと思ってんだ」


『流石だね、これも君の自由の為だ。

それとボクの目的もね、これだけ街中に影響が出ているのであれば根底の原因もある筈』


「…だとすりゃあ、戦力がいるな。折角無敵のカラダを貰ったんだ、やりたい事はなんでも出来るってもんだぜ!!」

街に背を向け出口へと歩む、まさか逃げる訳では無いだろうが口調と行動が合っていない


『何処へ行くんだ、君は街の探索を..』


「オレの他にもよ、自由を求めてる奴が沢山いるんだ。先ずはそいつらを解放する」

向かうは刑務所、第二の故郷。

いや、正真正銘の実家へと帰省する


「文句はねぇよな?

ただでオレのカラダ貸してやってんだ。」

住民権はリヲンへ、所有権は本人自身にある


「へへへ..待ってろ看守クソ共。」

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