桃
@_naranuhoka_
桃
こもれびがちらちらするのが欲しくなり中庭の枝をひとりで折った
まだ誰もわたしのはだか知らなくて桃を齧れば胸につたう露
十七というそれだけで詩のような年齢が過ぎほっとしている
もう二度とひらかぬ本に挟まれた栞のようだ君の夏の我
どしゃぶりの新宿駅に降り立てば誰かを待たせている気がしてくる
いま死ねばこれが遺影に使われる瞳に星がひしめくプリクラ
永遠に未成年ではいられないことの比喩としてツユクサ揉む
もう初夏はわたしのためにはこないのでプレイリストの奥華子消す
ランドセルみたいにひかるグロス塗るつつじの蜜を吸わないように
自転車の荷台に乗せてほしかった男に車で送られている
くちづけを知ってわたしは人前で切手のうらを舐めなくなった
桃 @_naranuhoka_
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