21話 五角形の魔法陣
21-1 封印を探せ
結婚…俺が、結婚か。
俺に家族ができるなんてな。
孤児院を出てく時、俺はずっと1人で生きてくんだって思ってたっけ。
1人で剣士として冒険者になるつもりが、師匠に出会って魔法を覚えて。
魔法を使えるのを隠して剣士としてリアンで登録して、ようやく8級になれるかってとこで洞窟で襲われて、レイルと出会った。
色々訳ありっぽいレイルと組んで、ジールダで10級から登録し直して。
7級になってセシリアがマネージャーになって。
一角馬の一件で、セシリアを抱いて。
そのセシリアと一緒に住むようになって、とうとう結婚か。
なんか流されてばっかだが、不思議と嫌じゃねぇんだよなぁ。
そのうち、ガキが生まれたりもするのか。
セシリアとガキ残して死ぬわけにゃいかねぇよなぁ。
レイルも、家族みたいなもんだよな。おまけで、みゃあか。
銀の髪に金の目、尖った耳、異様なまでにない体力。
父親が人間らしいから、母親が亜人なんだろうなぁ。
亜人の種類とか、俺は詳しくないからよくわからんし、まぁ知る必要もないが、あいつはあいつで苦労して育ってきたみたいだしな。
俺が結婚したからって、距離置くこたないだろう。あいつは、これからも俺の相棒だ。
第一、俺とセシリアが早く結婚するよう、セシリアになんか吹き込んでたみたいだしな。
ただ、リアンで襲われた時、レイルは自分が狙われてると思ってたフシがある。
この前、無差別だったってわかって、あからさまにホッとしてたもんな。
お互い、細かいことは教え合ってないから、お互い様じゃあるんだが…。
「あ…フォルスさん、明日、支部長のところに来てください。
当面は、魔神の封印場所の捜索ということで、候補地を選ぶそうです」
晩飯の時、セシリアが言ってきた。
家で、依頼の内容まで話すことは、前はなかったことだが、これは、結婚したからというより、連絡係になったからなんだろうな。
支部長が言ってたとおり、家での方が下手なとこより人目がないから。
「魔神の封印場所ねぇ…。
どこがありそうなんだ?」
セシリアは当然聞いてないだろうから、とりあえずレイルと予想してみる。
「まず、街の中心部、五角形の中心、何かの建物の中…ってとこじゃない?」
「そんなとこかねぇ。
まぁ、街ん中で探すとなると、そんなとこか」
レイルの考えも、俺と同じだった。
まぁ、他に何があるって言われても困るよな。
情報が少なすぎるからなぁ。
「俺だったら、そんなヤバい奴が封印されてると知ってりゃ、その近くに街なんか作らねぇけどなぁ。
さすがに伝説の勇者ともなると、信頼されてんだなぁ」
「今、なんて?」
「信頼されてんだなぁって」
俺の一言に、レイルが食い付いた。
「そうじゃなくて」
「魔神が封印されてるとこに街なんか作りたくないってか」
「それだよ!」
「なにが?」
「街の中とは限らない。
少し離れた場所に作ったかもしれない。
だって、復活されたら大変だもん」
正に、今、復活すんじゃねぇかって話になってるからな。
「街ん中じゃないとなると、魔素溜まりは関係ないってことか」
「それはわかんないよ」
「まぁ、支部長に言うだけ言ってみてもいいか」
翌日、3人で支部長のところに顔を出した。
「候補として、今、ここが挙がっている」
支部長から見せられた街の地図には、俺達が予想したとおりの場所のほかにも何か所か印が付いていた。
「6か所とは、よく探してきましたね」
「古い謂われのある石碑などだな。
もはや謂われも何だったのかはっきりしないくらいだが、街ができた当時からあったものだ。正直、そういう面からしか探すことができん」
やっぱ支部長もそうか。むしろ、古いものならって考えただけすごいよな。
「あと、ですね。
俺達でもちょっと考えたんですが、街の外ってこた、ありませんか?
いくら勇者が封印したから安全だっつったって、はいそうですかって街作りますか?
街の近くに、それこそ石碑かなんかありませんかね」
「街の外、か。わからんが、調べてみよう。とりあえず、今日のところは、この6か所を頼む」
街の中心と言える場所は、普通の家が建ってるだけだった。
探索してみても、魔素の量もごく普通だし、怪しい動きもない。
そりゃまぁ、掘り返したり、壁をぶち壊したりすりゃ、もしかしたらなんか感じられんのかもしれねぇが、壊して何も出てこなけりゃ問題だし、壁ぶち壊したら封印が解けて魔神が復活しましたなんてことになりゃ、目も当てられねぇ。
石碑も見てみたが、何も感じられねぇ。
まぁ、どれもこれも状況からの推測でしかないから、あの魔素溜まりが魔法陣の一部だとか、魔神の封印を解こうとしてるとか、全部取り越し苦労かもしれねぇんだけどな。
でも、偶然にしちゃできすぎてんのも事実だ。
6か所全部回ってみたが、怪しい魔素の流れは感じられなかった。
みゃあも連れてってるが、何も変わったところはない。
魔素溜まりにあれだけ敏感だから、何かに気付いてくれるかとも期待したんだがなぁ。
「一度、街の外に出て、魔素の流れでも探ってみるか」
「ふうん? なんか掴めそう?」
「わかんねぇけど、ほかに思いつくことないからなぁ」
「まあ、いいんじゃない? どうせあと行くとこないし」
街の外に出て、少し距離をあけて外壁をぐるりと眺めてみたが、怪しいものは何もない。
魔法陣の外側から内側に、どうやって魔力流してんのかもわかんねぇんだから仕方ないのかもしれねぇが…。
「魔法陣の内側って、どっから魔力得てんだろうなぁ…」
「外側からじゃないの?」
ぽろりとこぼした言葉に、レイルが答えた。
「外側と内側を繋ぐ線はないのに、魔力は伝わってる。
前に魔力を通した時は、外側は円と三角2つが光ってる感じだったよな。実際に線はないのによ」
「線があるわけじゃないのに、魔力が線になって光ってんだっけ」
「そうだな。…あの5か所の魔素溜まりも、そうやって繋がってんのかね」
「んじゃ、魔素溜まりに行ってみる?」
「そうだな」
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