3-3 帰還

 手負いの魔狼1頭を倒した俺達はギルドに戻り、セシリアを呼び出した。


 「フォルスさん! ご無事でよかったです。

  4日経ってもお戻りにならなかったので、何かあったんじゃないかと心配してたんですよ!」


 セシリアは、俺の顔を見るなりまくし立てた。

 どうやら、本当に心配してくれていたらしい。いいとこあるじゃないか。


 「ああ、まぁ、何かあったんだが。一応、2人とも無事だ。心配してくれてありがとう」


 「レイルさんのことは、別に心配してませんけど」


 レイルが噛みつくとまずいと思って見てみると、涼しい顔をしていた。

 ああ、これは「お前に心配してもらう必要はない」って思ってるな。

 まぁ、余計なもめ事にならないのはいいことだから、黙っておこう。


 「とりあえず、依頼の件からだ。

  一通り森を探索してはみたが、例の2頭以外は見当たらなかったし、例の2頭も報告どおりの場所にいた。手負いの方は、右後足に傷を負って、あまり動けない様子だった」


 「はい、お疲れ様でした。

  2頭のみですね。

  それで、追加報告がありそうですが」


 「ああ。色々あって、元気な方に襲われかけてな。

  なんとか躱せたんで、いない隙に手負いの方だけ倒した。これが首だ。

  残念ながら、魔石を取り出すような余裕はなかった。

  昨日戻れなかったのも、そのせいだ。この影響で、残る1頭の住処が変わったかもしれん」


 「ありがとうございます。

  残りは1頭、ただし、居所が変わっている可能性あり、と。

  では、報酬の手続をいたします」


 セシリアは、俺達のギルド手帳に預かり金を書き込みながら


 「残りの1頭について、討伐依頼をしたら、今度は受けていただけますか?」


と訊いてきた。

 正直、受けるつもりだが、すぐに受けるわけにはいかない。


 「受けてもいいが、明日すぐに、というのは無理だ。今回も結構疲弊したからな。

  受けるにしても、2~3日は休養を取りたい。

  もし、この前のパーティーが受けるってんなら、そっち優先で構わないぞ」


 「よろしいのですか? 勝てるのでしょう?」


 「俺達だと、どうしても日があくし、勝てるったってギリギリだ。

  今回、それなりに危ない橋も渡ったし、稼ぎもした。これ以上、欲はかかんさ。

  受けたい奴がいないってんなら、受けてもいいって程度だ」


 そう。俺達ばかりが稼ぎすぎると、余計な嫉妬を招く。特に、今回はよそが犠牲を出しながら手負いにした奴を倒してる。しかも、合同依頼を断った上でだ。

 ぴんぴんしてる奴で悪いが、1頭くらい倒す機会はやらないと恨まれちまう。

 もちろん、向こうがいらないってんなら、ありがたくこっちでいただくが。


 「とりあえず、明日は休むから、余程のことが起きなけりゃ明後日にしてくれ」


 そうして、ひとまず魔狼騒ぎは終わり、俺は娼館に行った。もちろん、レイルに蔑むような目で見送られて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る