森の中の動物たちwith料理の達人サトシ

@tomico

禁断の恋と情熱に目覚める




「きゃー!かっこいい!!かっこいいわあ!」


鼻息荒く机をバンバン叩いて興奮するのは、(自称)森の中で一番可愛いうさぎだった。


人間たちの住む村の、ゴミ置き場から拾ってきたパソコンに映る画面を観ながらうさぎは今日も楽しそうだ。


「うさぎぃ、観るのも良いけど、作ってなんぼだぞう。」


そううさぎに言うのはうさぎの面倒見役の、くまだ。


「分かってるわよ!サトシを観ながらレシピを頭に叩き込んでるのよ!」


うさぎはどうやらこのパソコンの中の人間に夢中らしい。目をハートにさせながらよだれを垂らしている。



「人間とうさぎの禁断の恋ってやつか、、。」



くまがぽつりと呟いた。




去年の春だった。


パンダが拾ってきたパソコンを、機械に詳しいくまが修理して使えるようになってからというものの、うさぎは料理の達人サトシにハマってしまった。


最初は森の動物集会所でのランチで、うさぎが皆んなのごはんを作ったことから始まった。


それまでのうさぎは料理などとは程遠いうさぎだった。

かなりの面倒臭がりで、「野菜なんてそのまま食べれるんだから、そのままで良いじゃない。」というのがうさぎが前々から言っていたセリフだ。


くまが作ったドングリ炒めを、美味しいと言い食べる事はあっても自分が作ろうとはしなかった。


そんなうさぎが突然、「今日のランチは私が作るわ。」と言いだし、パソコンを見ては料理し、見ては料理を繰り返しながらする事2時間。ついに料理が完成した。



出来た料理はなんだか良い匂いがしてとても美味しそうだった。

皆んながワクワクしながら食べると、それはそれは、とっても美味しかったのである。

皆んなが口々に「うさぎ、凄いね!」「うさぎ、これ美味しいよ!」「うさぎ、実は料理得意だったの?」「これ、どうやって作るの?」と言った。



うさぎは得意そうに胸を張って、「うんうん。」と言ってから


「これはね、サトシのレシピなの!」と言った。


皆んながサトシって誰?とざわついた。

それからうさぎはパソコンを持ち出して、皆んなにサトシを事細かく説明したのだった。


「サトシのレシピはね、森の中にある食材で簡単にできるの!」


へえええ〜!!!!



皆んながおったまげた。料理なんて、皆んなも余りやらないのである。



「サトシのレシピはね、絶対に美味しいの!

私は今日初めてこのランチを作ったけれど、とっても美味しく出来たわ。それで私は確信したわ!」



そうだそうだ〜!!


皆んな素直に絶対にそうだ!と思った。



「サトシはね!とってもとってもカッコいいの!サトシを見ていると心臓の音が早くなるの!」



?????????


ここで皆んな初めて頭の上にハテナマークを浮かべた。うさぎ、どうしたんだ?




「わたし、いつか絶対サトシと結婚するの!!サトシは私の運命の人なの!王子様なの!」



!!!!!!!!!!


皆んな心底ビックリした。

このうさぎ、人間と結婚しようとしている。


皆んなが顔を見合わせてうさぎになんと声を掛けようか考えている。


パンダが手を上げた。

「うさぎ、オレ、応援するよ。オレ、禁断の恋ってやつ、好きなんだ。今ハマってるんだ。」

アニメオタクのパンダが嬉しそうにしている。どうやらパンダの頭にも細かい問題点は見えていないようだ。


うさぎとパンダがハイタッチをして、嬉しそうにしているので皆んなも暫く様子を見るか、という事にしたのである。






それからのうさぎは毎日料理をするようになった。


「ドングリを一番美味しくする事が出来るのは、サトシだけなの!」


今日も変わらずうさぎが熱弁している。


うさぎの将来は少し心配だが、最近美味しいものばかり食べれて嬉しいと思うくまであった。


2月になってから、ある日突然うさぎが悲しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


くまがそう尋ねるとうさぎが話しはじめた。



「お姉ちゃんの結婚式が来月あるのだけれど、そこで私はシェフとして皆んなのごはんを準備するのよ。」



「へえー。凄いじゃないか!うさぎの料理の腕前も上がったもんだなあ。」



「うーん。私、あるものを作りたいの。パンダがゴミ置き場から大量にあったから拾ってきた、あれを。」


くまは思い出していた。色んなものを拾ってくるパンダがラッキー!と言いながら大量に持って帰ってきて、皆んなで食べたもんだ。



「あー!あれかあ。あれは美味しかったなあ。今までに食べたことがない味だった。ほのかに酸っぱくて何もかもが美味しいんだ。」


「でもね、あれのレシピがサトシのレシピの中には無いのよ!」


「へえ!たくさんあるのにそれは無いのかあ。」



「私、あれがとっても美味しかったから、あれをお姉ちゃんの結婚式でつくりたいの!!」


うさぎの目は闘志に燃えていた。

サトシにどハマりして毎日興奮しているうさぎだが、姉想いの妹なのだ。


「そうだ、パンダにあれのことを聞いてみたらいいんじゃないか?あいつ、色々本とか読むからあれのことも知ってるかもしれないよ。」



「話は聞いた!」




ガサガサと草陰からパンダが現れた。


「パンダ!ねえ知ってる??」


うさぎの頼れるのはパンダしかいないのだという様子にパンダは得意げに言った。


「あれはね、パスタっていうんだよ。」


「パスタ??それは絶対に違うわ!あれはご飯でできてるのよ?パンダって何にも知らないのね。」


「がーん!」


パンダが項垂れていると、くまが良い案を思いついた。


「そうだ!狸千人なら知っているかもしれないぞ!」


「そうだわ!狸千人に聞いてみましょう!」



狸千人のもとへ目指すうさぎとくまの後をパンダが「待ってー」と言いながらあわてて着いていく。

  





まだ物語は始まったばかりだ。

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