269 - 「眠りの森のダンジョン4―ドロップカード」
カード獲得を告げるシステムメッセージを眺めていたマサトが、少し驚いた様子で頷く。
討伐したのは
改めて獲得したモンスターカードから確認していく。
【C】
【SR】
【SR】
(
召喚コストこそ馬鹿にならない重さだが、手札帰還という究極の除去回避能力をもっているため、マナがある限り何度でも場に呼び戻して
(これは幸先が良い)
マサトも気分が良くなる。
【C】 蠢く球根、0/1、(緑)、「モンスター ― 植物」、[(緑):「絡みつき草」「噛みつき草」「寄生植物レシア」のいずれかへ進化]
【UC】
【R】
恐らく戦闘に巻き込まれて一緒に討伐されたモンスターだろう。
どれも攻撃力1以下の小粒なモンスターばかりだが、精神干渉をもつ
また、追加召喚魔法の
【C】
戦力としては期待できないが、これはこれで良い生贄要員となってくれるだろう。
そして、もっとも想定外の収穫だったのは、
【C】
【UC】
【SR】
ただ、今回はそれだけではない。
他にも、1枚ずつだが多くの装備品カードを獲得することができた。
【UC】 呪術師ショウズの光のロザリオ、(1)、「アーティファクト ― 装備品」、[闇魔法攻撃耐性Lv2][精神攻撃耐性Lv2][装備コスト(0)][耐久Lv3]
【R】 呪術師ショウズの命の指輪、(3)、「アーティファクト ― 装備品」、[装備補正+0/+1][生贄時:ダメージ1点軽減][装備コスト(0)][耐久Lv3]
【R】 呪術師ショウズの魔杖サクラ、(5)、「アーティファクト ― 装備品」、[精神魔法消費魔力軽減Lv2][精神魔法攻撃Lv2][精神魔法攻撃耐性Lv2][装備コスト(0)][耐久Lv3]
【C】
【UC】
【R】
【R】
【R】
【SR】
中には強力な能力を持つSR武器もある。
(
いくつかの装備品を召喚してみせると、全員の視線がマサトへと向いた。
ちょこちょこと短い足を素早く動かし、真っ先に駆け寄ってきたララが、召喚された装備品を見て口を開く。
「これは何なのかしら!?」
「
名を呼ばれたヴァートが嬉しそうに駆け寄る。
「なに?」
「これをヴァートにあげる。
「そんな凄い杖もらっていいの!?」
「いいよ」
「や、やったぁーーー! ありがとう父ちゃん!!」
ヴァートが満面の笑みで、大喜びしながら杖を受け取る。
マサトはそのまま装備コストである黒マナを支払うと、その武器の力を実感できたのか、ヴァートは大口を開けながら目を輝かせた。
「すごい! 父ちゃんすごいよこれ!!」
2人の様子を見守っていたアタランティス、パークス、キングが微笑みながら声をかける。
「良かったな!」
「ヴァート、良かったですね」
「バハッ! 良かったじゃねぇーか! ってか、セラフは意外と子煩悩なんだな!」
「えへへ」
ヴァートが照れくさそうに笑う。
すると、呆れた顔をしていたララに気付いたキングが、ララに話しかけた。
「おいチビ助、なんて顔してんだよ」
「セラフはネズの樹って言ったのよ」
「ああ、確かに言ってたな? それがどうした?」
「ネズの樹といえば、強力な闇の魔力を秘めた魔神樹の一種のことかしら。本当にその魔神樹の枝となれば、間違いなく
「まぁ今更だろ? だってセラフだぜ?」
「ハァ、それもそうなのよ。せめてヴァートには、その枝の価値を正しく教えるかしら」
「そうしとけ。深く考えるだけ無駄だ」
そんなことを話すララに、マサトは
「な、なにかしら。力強い
「あげる」
「えっ!? ラ、ララにかしら!?」
「いらないのか?」
「い、いるかしら!
「返さなくていい」
「え……ほ、本当に良い、の?」
「良い」
「あ、ありがとうなのよ。大切にするかしら」
貰えたことが想定外だったのか、顔を赤くしたララが唇と尖らせながら話すと、両手で大切そうに抱えた琥珀に目を移し、おもちゃを貰った子供のように目を輝かせ、にんまりと笑った。
すかさずキングが口を挟む。
「あっ、チビ助だけズルいぞ! セラフ、もちろん俺のもあるよな? な?」
キングにはあげるつもりがなかったため、マサトは少し悩んだが、1つ新たに召喚して手渡した。
「
「やりぃ! 悪いな! って壊れかけかよ!!」
「いらないのか?」
「い、いや、せっかくだしありがたく貰っておくけどよ……」
「装備コストを支払うからそのままで」
「うん? お、おう」
マサトが
キングの瞳が大きく見開かれる。
「こ、こいつは……本当に壊れかけなのか……?」
「1度使ったら壊れる。ただ、性能は申し分ない」
「そう、か……」
キングが何か言いたげな顔でマサトを見る。
「なんだ?」
「いやぁ……」
はっきりしないキングの代わりに、ララが口を開いた。
「セラフが平気な顔してやってみせたそれが、ララ達にとっては異常に見えただけなのよ」
「それ、とは?」
「
「ララの鑑定魔法では、装備コストまで見えないのか?」
「その装備コストというのが、よく分からないかしら。でも、
ララは、どんな鑑定魔法でも、
そのため、権力者や大富豪によって秘密裏に進められることが常で、仮に確立された方法があったとしても、その情報が世に出回ることは滅多にない。
「そういうことか。理解した」
「まだ潜在能力を秘めたままの装備品をセラフに見せたら、真の力を引き出してくれるのかしら?」
「無理だ。装備コストは、召喚できる装備品のものしか分からない」
「残念だけど、少し安心したのよ」
装備コストがマナなら、有り余るマナに物言わせて、各色のマナを同時に注ぎ込めば、強引に条件を満たすことも可能だろうが、そこまで説明する必要はないだろうと黙っていた。
マサトが顔をあげると、そわそわしながらマサトの様子を窺っていたアタランティスと目が合う。
その瞳はなぜか期待に満ち溢れていた。
(……もらえることを期待しているのか)
マサトは少しだけ苦笑しつつ、穂先と石突き両端に刃が付いた弓状の槍を手に取ると、アタランティスを呼んだ。
「これを。
「こ、こんな立派な弓を!? あ、ありがとう! 一生大切にする!!」
涙目になって喜ぶアタランティス。
マサトは大げさだと思いつつも、重い装備コストを支払い、アタランティスに装備させた。
すると、キング同様、アタランティスが大きく目を見開いた。
「す、凄い……これが
アタランティスが弓に頬擦りしそうな勢いで食い入るように眺めている。
その尻尾は激しく左右に揺れていた。
後は、パークスだけだが、マサトが目を向けると、パークスは不要だと首を横に振った。
マサトは少し考えた後、ロザリオと指輪を手に取ると、パークスの近くまで移動し、ロザリオを差し出した。
「呪術師ショウズの光のロザリオという
パークスが意外そうな顔でマサトを見る。
「私にも、くれるのですか?」
「息子の師に、少しでも恩を返しておきたい。不要なら金に換えてもらって構わない」
マサトがそう告げると、パークスは少しだけ微笑みを浮かべ、頷いた。
「そこまで言われてしまっては、受け取らない訳にはいきませんね。ありがたくいただいておきましよう」
パークスが受け取ったロザリオを上着の内ポケットにしまう。
(呪術師ショウズの命の指輪は、後でフェイトにあげるか。
そう考えながら命の指輪を指に嵌める。
すると、話を聞いていた
「ショ、ショウズの装備品って聞こえたけど……本物なのか?」
「言ったが、知り合いか?」
「ま、まさか! アンタ、呪術師ショウズを知らないの!? AAランクの大型クラン、
どこかで聞いた覚えがあると少し考えるマサト。
「眠りの森に挑んだクランだったか?」
「そう! そのクランリーダーがAAランカーの
「そうか。……ん? 帝国では
「え? ちゃんと国に所有者届けを出して認められれば所持できるけど……やっぱり、アンタらってフログガーデンの……」
そこまで言いかけたところで、ニーマが叫んだ。
「モ、モイロ!!」
「あ……わ、悪い! 詮索するつもりはなかったんだ! アンタらがフログガーデンの軍人で、ワンダーガーデンに攻め込んで来たんだとしてもアタシは何も言うつもりは……」
「馬鹿モイロ! 黙って!!」
慌てて墓穴を掘るモイロの口を無理矢理塞ぎにかかるニーマ。
その後方では、怯えた様子の男が2人で身を寄せ合っている。
どうやら背後に鎮座し続けている巨木のウッドが気になって仕方がないようだ。
(ウッドはどうするか……連れていけるのか?)
試しに移動するように指示してみると、盛大な土煙と地響きをあげながらゆっくり進み始めたので、止まるように命令する。
(こいつを怒らせてはいけないと伝えた先人の教えは、もしかしてこういうところに起因しているんじゃないか……?)
ウッドから伝わる念で、移動跡は開墾したての畑のようになったことが分かった。
ついでにいえば、ウッドが木々を操作して暴れた一帯は、根本から折れた木や細切れになった草葉が散乱したり、根っこから引き抜かれて地面がめくれあがったりと、酷い有様だ。
つまり、ウッドは移動させても戦わせても、周辺の森が破壊されることに繋がる。
であれば、先人が怒らせるなと伝えた理由も納得できた。
(このままここで見張らせておけばいいか)
ウッドに待機命令を出し、周囲の偵察に向かわせていた野犬を呼び戻す。
ステータスを表示してマナ保有数を確認してみると、先程の一戦で約600程のマナを獲得できたことが分かった。
アカガメ殲滅で獲得した約1200マナと、プロトステガ殲滅で獲得した約8000マナを合わせると、既に保有マナは1万を超えていた。
(時の水晶で元の時代に戻るには、後1万7000程必要か。首都級を2~3堕とせばいける規模ではあるが……このクラスのダンジョンを20個くらい制覇すればいける範囲でもあるのか……?)
新たな選択肢に、少しだけ心が軽くなる。
(とにかく、全てはこのダンジョンをクリアしてからだ)
「先に進もう」
マサト一行は、自信喪失した
――――――――――――――――――――
▼おまけ
【C】
「やべぇブツが手に入りやしたね、店長。これを使えば天までぶっ飛べるってもんでさぁ――素材買取屋の店員タカダ」
【UC】
「こいつは上物だ。宝石商に見せたら涎垂らしながら喜ぶぞ――素材買取屋の店員ノババ」
【SR】
「ほぉあ……こんな奇跡あるんだな。虫入り琥珀でさえ貴重だってのに、
【C】
「椎茸と言えば出汁だが、焼いても最高だよな。だが、食べた後に爪で引っ掻かれた様な赤い腫れが出た時は注意しろよ? 生で食う時は特にな――酒場の店主ノメルヤ」
【UC】
「普段は大人しい性格の
【SR】
「千年もの時を生きた
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