190 - 「シルヴァー戦10―決着」
「こ、ここまでの威力が出るのか……」
全力で放った
目の前には巨大なキノコ雲。
発生した衝撃波で城壁や家屋は全て吹き飛ばされ、更地と化した。
西の空から鋭角に放った
これでは、シルヴァーとの戦いから逃れ、息を殺して隠れていた人達が居たとしても、助かりはしないだろう。
(っ! 自責の念を抱くのは後だ! 今は女王シルヴァーの所在! あいつは!? あいつは仕留められたのか!?)
すかさずウィンドウメニューから、討伐したモンスターリストを確認する。
(ない…… ない…… ない…… い、いない!?)
そのリストに、女王シルヴァーの名前はなかった。
「んな馬鹿な!!」
人族同様、女王シルヴァーは討伐リストに記載されない種族なのかという疑問が浮かぶも、それを確かめている時間はない。
そうなれば状況はより悪くなる。
「どこだ!? どこに行った!?」
地上に目を向けるも、爆発による大量の煙で状況が判断できない。
気持ちが焦る。
「煙が邪魔だ…… 何か手は…… そうだ!
[R]
[竜巻LvX]
地上と空にいるモンスターを一掃できる
煙を晴らす為に使うには勿体無い貴重なカードではあるが、他に手段がないと決断した。
詠唱後、大煙の中に、緑色の光の粒子がきらきらと輝く。
すると、女王シルヴァーの居た場所付近を中心に、巨大な渦を巻き始めた。
その渦は急速に拡大し、あっという間に巨大な
何とか煙の除去に成功したマサトは、地面にできた巨大なクレーターに、黒い空間の亀裂を発見。
「あれか! あの中に逃げたのか!!」
思わず声をあげる。
空間の亀裂からは、青銀色のシルヴァーが再び這い出てきていた。
「ファァァアアーーージッ!!」
空を旋回していたファージ達が、地上に空いた空間目掛け、一斉に急降下を開始。
空間から出てこようとするシルヴァーへ襲いかかった。
だが、これでは時間稼ぎにしかならない。
マサトは再び決断を迫られる。
(どうする? 突っ込むか? それとも、あの中にもう一発全力で
マサトが両手を広げ、大気中のマナに呼び掛ける。
すると、更地と化した王都跡地から、色取り取りの光の粒子が無数に舞い上がり始めた。
シルヴァーとの戦いで死んでいった者達のマナだ。
その中には、マサトの
その光の粒子を取り込みながら、マサトは死んでいった者達に対し、心の中で謝罪した。
そして、その命をも糧にしなければシルヴァーを討伐できない状況に、歯噛みする思いを抱き始めていた。
(俺にもっと力があれば……!!)
マサトがマナを回収しているその時、ファージの群れを紫色の光が突き破った。
中型シルヴァーが空間の亀裂から這い出てきたのだ。
(これ以上時間はかけられない! もうこの状態でやるしかない!!)
マナ回収を切り上げ、ファージの群れにぽっかりと空いた空間目掛け、再び急降下。
最後の勝負をかける。
「
[UC]
[火魔法攻撃Lv2 ALL]
短い詠唱が終わると、瞬く間に右手から紅く輝く熱線が出現した。
それを目の前に長く、太く伸ばし、巨大なランスを作る。
「邪魔だぁあああ!!」
雄叫びをあげることで、込み上げそうになる恐怖心を抑え込み、目が血走るほどの狂気で自身を奮い立たせながら、
背中からは、轟音とともに青白い炎の柱が発生し、マサトをすぐさま亜音速の領域へと引き上げた。
青銀色のシルヴァーが視界に入るも、大量のマナを高濃度に圧縮して形成した
そして、魔導砲を放って硬直している中型シルヴァーの身体が弾け飛んだのを最後に、マサトは空間の亀裂の中へ突入した。
減速し、急いで周囲を確認する。
「なんだこの空間は……」
上下左右、見渡す限り宇宙空間のような黒い空間が続き、陸はどこにも見当たらない。
ただ、黒い空間の中に、夜空に浮かぶ星々のように、青銀色のシルヴァー達が蠢いているのは分かった。
その中に、一際目立つ巨大な銀色のシルヴァーを見つける。
女王シルヴァーだ!!
「見つけた!!」
マサトが女王シルヴァー目掛けて加速し始めると、マサトの存在に気が付いた女王シルヴァーが焦ったように雄叫びをあげた。
――シィィァァアアアンンンンンッ!!
周囲を埋め尽くすほどのシルヴァー達が、一斉にマサトへ向かって移動し始める。
だが、マサトは既に女王シルヴァーへ肉薄していた。
「ようやく捕まえたぞ」
マサトが女王シルヴァーに触れると、マサトに女王シルヴァーの怯えが伝わった。
その意識に、マサトが無意識に笑う。
「おいおい、そう逃げんなよ。俺なんか怖くないだろ?」
心に余裕が出てきたことで視野が広がり、女王シルヴァーの状態が見えてきた。
「ん? なんだ? よく見たら身体半分ねぇのか。そっか。いや、あの
女王シルヴァーのタフさに関心する一方で、疑問も湧く。
「どうやってここに逃げ込んだ?」
だが、女王シルヴァーがその質問に答えることはない。
「まぁいいか…… もう、これで終わりにしよう」
マサトが女王の頭部に触れながら、語りかけるように最後の言葉を告げる。
「
その刹那、黒い世界から色と音が消えた。
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