31 -「レッドポーション」
正直、グロ過ぎる光景に吐きそうな気分だ。
仰向けになって
息のある人も、本当に生きてんのかと疑いたくなるような人が多い。
身体の至る所が焼け爛れていて、意識のない人が5人。
その内の1人は片腕がない。
比較的軽傷そうに見えた髭もじゃのおっさんでさえ、腰の骨が折れて背中を飛び出していた。
後は片脚が太腿半分で食い千切られている赤毛の姉ちゃんが1人。
(全部で7人か。手持ちの回復カードって、確か1枚しかなかったよな……)
[C] レッドポーション (5)
[ライフ回復Lv1、使用制限:5回]
[耐久Lv1]
(回復Lv1でしかも5回までって、7人いたら1人1回すら使えないじゃん!
あーなんだか言い出し難いな……
でもまぁ仕方ないか……
取り敢えず召喚…… してるとこはあまり見られない方がいいんだっけか。
ポケットの中に手を入れてボソッと言えば誤魔化せるかな?)
「(レッドポーション召喚)」
ポケットの中にレッドポーションの手応え。
数は5本。
見た目は赤い液体が入った試験管そのまんま。
「悪いけど…… ポーションは5本しかない。後、どのくらい効果があるかも分からない。1人1本で済むかもしれないし、1人に5本全て必要かもしれない。誰に使うか順番も決めてほしい」
「はっ…… なんだい? その、赤い液体、は? そんなポーション…… 見たことないね」
赤毛の姉ちゃんが息も絶え絶えな感じでツッコミを入れてくる。
(苦しいなら黙ってればいいのに……っていうか足失いながら、麻酔なしにこんなに話せるもんなの……?
もしかしなくても相当辛いよね?)
「マーレさん、ここはわたしに任せてください」
「そう…… だね…… 悪かったよ、ちょいと…… 気が立ってて、ね…… 許しておくれ」
「……はい」
見ててこっちが辛い……
「この赤毛の姉ちゃんが最初?」
「いえ、この人を最初でお願いします」
「えっ? あ、ああ、分かった」
「ははっ! パン、分かってんじゃないのさ! あたいは安心したよ」
てっきり赤毛の姉ちゃんを最初に治すのかと思ってた。
意識があって、一番痛みを感じてそうだったからつい。
でも、それが正しい判断のようだ。
この白い服の子はパンって言うのか。
「じゃあ取り敢えず1本使うよ」
「あ、ちょっと待ってください。そのポーションの使用、わたしに任せてくれませんか?」
「ん? ああ、いいよ」
レッドポーションをパンに渡した。
パンはレッドポーションを、緑の髪をした女性に少しずつかけていく。
すると見る見るうちに焼け爛れた皮膚が元に戻り、見るに堪えなかった顔が、そばかす一つない綺麗な顔へと変化していった。
「な、なんだい!? その回復力は!?」
「や、やっぱり…… これ、3等級ポーションですよ! 一度だけギルド図書館にある図鑑で見たことがあるんです!」
………。
(ライフ回復1でこの騒ぎよう……
これは街で知らずに使ったり売ったりしたら一発で騒ぎになる系か……
何かするときは必ずレイアに相談しよう…ってレイア追ってこないけど本当に大丈夫かな……?
心配になってきた……)
「あ、あの…… このポーションのお代は、一生かけて返しますから! その……」
「ん? あ、ああ、いいよ」
「あ、ありがとうございます!」
レイアにもしものことがあった時の為に、1本だけは残しておこう。
それにしても、レッドポーション半分で瀕死の子が元通りになったのか……
これはチートが過ぎるんじゃないだろうか……
「あたいは…… 最後でいいよ」
「いえ、次はマーレさんの番です」
「あたいは……」
「マーレさんの番です」
「はぁ、分かったよ…… じゃあ、ちゃちゃっとやっておくれ」
「はい」
先ほどと同じ様に、赤毛の姉ちゃんにも少しずつレッドポーションをかけていく。
すると信じられないことに、無くなっていた片脚が生えてきて……
元通りに……
いや、反対の足は日に焼けて筋肉質なのに対し、再生された足の肌は白く、傷一つない綺麗な足をしているように見える。
(これ、復元じゃなくて再生?
それはそれで色々やばい気が……)
「こ、これは…… 足が…… 生えて…… な、なんだい? この綺麗な足は……」
「きっとポーションによる治癒再生効果だと思います。復元ではなく、一からの再生です。ジディさんの顔からそばかすが消えたのも、きっと新しく皮膚が作られたからという理由なら…… 納得がいきます」
「あたいはてっきり傷口が塞がるだけかと…… これが3等級のポーションの力なのかい? だとしたら恐ろしく高価なんだろうね…… っと、一からの再生…… ってことは、この綺麗な足はまた一から鍛え直さないといけないってことかね……」
「そう、ですね。かなり高価なものかと…… それと、はい、鍛え直さないと、ダメですね」
「ははっ! だが失ったものが戻ったんだ。それだけで十分だよ! あたいもそのポーションのお代は一生かけて返すさね」
その後も、レッドポーション半量で全員が元通りになった。
3本使い切り、2本残った。
気絶していた4人は程なくして目を覚まし、無事なことを喜び、そして死んでいった仲間を見て嘆き悲しんだ。
全員で死した仲間を火葬にするため、死体を集めていると……
「こいつ…… ロプトのところにいた奴じゃないか?」
「本当だねぇ、一体何でこんなとこで…… まさか……」
「おれっち達の後を追ってきてたんじゃ……」
「漁夫の利を狙おうとしてたんなら、バチが当たったってことだねぇ」
「違いねぇ……」
どうやら蜂に肉団子にされていたのは、更に他のパーティだったようだ。
事情はよく分からないが、邪な心を持った連中だったのかな?
彼らの会話からそんな雰囲気を感じた。
藍色の髪で垂れ目の――セファロと呼ばれていた人が、薪に魔法で火を付けたのが見えた。
何て便利そうな魔法なんだ!
俺も習得できないかな……?
後で聞いてみよう。
俺がセファロを見てそんなことを考えていると、セファロは隣で火葬を見守っていたジディに声をかけていた。
「なぁジディ、3等級ポーションって、1本いくらするんだ……?」
「オークションで偶に見かける程度のものでもせいぜい6等級ポーションだよ? それでも100万G以上の値段が付いてるから… その上の上の上となると…… 億…… 以上に…… なるのかな……」
「は、ははは…… そ、それ、一生使っても返済できないよね。ははは……」
セファロの乾いた笑い声が響き渡る。
このポーション一つで、この世界で一生遊んで暮らせることが確定した。
(ま、まぁ、手足が再生されちゃうくらいの代物だしそれくらい価値があっても当たり前か…)
セファロとジディの話に耳を傾けていると、髭もじゃのおっさんが背中をさすりながら近づいてきた。
「お主、ちょいとよいか?
素材配分かー。
討伐したモンスターの取り分決めるとか、少し心躍る。
「儂らは
「どうぞどうぞ。むしろ全部なんて到底運べないですし」
「すまない。譲ってもらった素材の分も、後できっちり返す。儂らに使ってくれた、回復薬のお代もな…… それは約束しよう」
ワーグは、
火葬が終わるまでの間、討伐したモンスターの素材剥ぎ取り作業が進められる。
日も落ち始めたため、彼らには先にローズヘイムへ戻ってもらことにした。
ポーションのお代として、報酬は後ほど全て渡すと言われたので曖昧に頷く。
彼らには、自分とポーションのことは口外しないでほしいという約束はしておいた。
まぁ何も約束しないよりはマシだろう。
俺は森へ火が移らないよう、火葬の見届けを買って出る。
そして日が暮れる前に、彼らの出発を促し、見届けた。
その後、その場に留まること数分。
誰も来る気配がない。
(あれ?
レイアのことだから隠れてこっちを窺ってるとかかなと思ったけど……
まさか本当にさっきの騒動に巻き込まれて重傷になったとか……?)
気持ちが焦り始めるが、どこから走ってきたのか既に分からない。
(ここは貯まったマナを人手に変えて捜索するか……)
<ステータス>
紋章Lv6
ライフ 38/40
攻撃力 28
防御力 4
マナ : (赤×40)(緑×6)
加護:マナ喰らいの紋章「心臓」の加護
装備:
補正:自身の初期ライフ2倍
+1/+1の修整
召喚マナ限界突破7
*火傷Lv1
46マナと、ダイヤモンド分の1マナ。
(さぁて、何召喚すっかね……)
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