第26話 ジャルデの魔法教室
その夜、俺が皆んなに食料を渡している時。
『少し良いか』
ジャルデが突然話を切り出した。
「どうした? それよりもガギルはどうしたんだよ? さっきから見てないんだが?」
『ん? あぁ、それはガギルが魔力を体験したいと言うから…いや、今それは気にしなくて良い』
そう言うとジャルデは、俺達の真上に来て、胡座をかいて話す。
『これから魔法教室を始める』
「は?」
ジャルデの奴、いきなり何を言い出すんだ?
『魔法教室に参加するのはサーナ、そしてルイエだ』
ジャルデが2人に指を差し、2人は目を見開いた。
「え、私?」
「ん?」
「えー! 私はー?」
『2人は体内にある魔力を感じるか?』
エンペルの言う事を無視して、ジャルデは続ける。
「ちょっと待て、ジャルデ」
そんな時、俺は2人に近づくジャルデの前へと立つ。
『む、何だ?』
「魔法教室と言うが、そんな事をいきなり言われても2人とも戸惑うだろう…何が目的だ?」
俺はジャルデの事をまだ完璧に信用し切れていないでいた。いや、信用はしているが、信頼はしていないと言った所だろうか。
実際ガギルと仲が良い為大丈夫だと考えられるが、研究の事となると頭のネジが2、3本は取れるガギルの事だ。
この2人に危険を犯す可能性は大いにある。
「今から何をするのか詳しく説明してくれ」
『…言っとくが心配する事はない。ただ初歩の初歩をするだけだ』
「その内容を教えてくれ」
俺は断固として2人の前に立ち塞がり、ジャルデを見つめる。
するとジャルデは溜息を溢し、答える。
『サーナには初歩攻撃魔法、ボール系統の魔法を。ルイエには初歩回復魔法、ヒール系統の魔法の発動に挑戦して貰う』
ボール系統の魔法…ヒール系統の魔法…
よく分からないが、"挑戦"というならそこまで危険はないか。
だがーー
「危険だと思ったらすぐ止めさせて貰うからな…」
俺はそう言い、床に座り込んで果物に齧り付く。そして3人の方を見つめる事にした。
『分かった。しかし、お前が止めに入る事はないがな』
「アノムは心配しすぎる節がある」
「そ、そうです! 私達大丈夫です!」
…そうか。なら少しは気を楽にして見させて貰うか。
『まずは、体の中にある魔力を自分の感覚として感じられる様にして貰う』
「ん、その為には?」
「何をするんですか?」
『血を流して貰う』
「待て!?」
俺はまたも2人とジャルデの間に入る。
『何だ…?』
「いやいや! そんな呆れてる風に見るが血を流すってどう言う事だ!?」
『まぁ、ほんのカップ一杯分ぐらいだ。我慢してくれ』
「いやいやいや! 結構いるな!? それでどうやって体の中の魔力を感じるんだ!?」
『…ちっ、これではあの作製が…』
「何だ!? 今、作製がどうとか言ってたな!?」
『い、言ってない…! 実はほんの冗談だ! め、目を瞑ってくれ!』
ったく…怪しいったらありゃあしない。
2人はジャルデに指示され、目を瞑る。
『体の中心…へその辺りに意識を向けろ。ずっと…意識をし続けろ。そうすれば温かい何かが流れているのを感じる筈だ。血以外の何かが』
2人はジャルデの言う事に、眉を顰めながら続ける。
「うー…分からないよぉー…」
「zzz…」
サーナは目尻から涙を。ルイエは……言わずもがなだろう。
『まぁ、最初はこんなものか。毎日続ける。出来るまで残念だが、遊びは控えて貰う』
「え!?」
サーナはジャルデの言葉に思わず、瞑っていた目を見開いた。
「ジャルデ、それは流石にやり過ぎじゃないか?」
『いや、そんな事はない。ガギルから聞いたが…お前らは魔物の中では実力は下の下らしいじゃないか』
「う! それは…」
『ここだって、人や魔物が寄り付かない極寒の地の筈だ。しかし、例外にお前らや私、果てに人間の子も麓まで来ている…この世界にあり得ないなんて事、あり得ない』
確かに…ジャルデの言う通りだ。
俺達は最弱の魔物パーティー。
人間、魔物から逃れる為ここまで来た…力がないが為に。それなら早めに力を得ていた方が…
『……沈黙は肯定と取るぞ』
「…っ」
『決定だ』
ジャルデは得意げに肩をすくめると、フヨフヨと2人の元へ飛んでいくのだった。
『ふむ…世界の平均の実力は上がってるのか…? 結界を張れるウルフ等見た事がない…それも私を追い出す程の結界。他の3人も何か才能がある様に見える…それ程の力を持っていても追放されるパーティー…魔法ぐらいは早めに覚えてた方が良いだろう』
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