第3話
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「はあーー……帰るのが遅くなっちゃったなあ……」
すっかり夜の帳が下りて人っ子一人歩いていない暗い夜道をとぼとぼと歩きながら茶髪の少年……アルフは呟く。その腕には酒場の厨房を取り仕切っている調理長に無理を言って貰ったパンの切れ端や少し肉が付いた骨、魚のアラ、野菜のクズが雑多に入った籠が抱えられている。もはや人が食べるものではないと言っても過言ではない食材達だが、それでもフォルギス剣技場の入門料を貯める為に節約をしているアルフにとったら貴重な食料だ。そうして大事に大事に明日の食料が入った籠を抱えながらアルフが自宅に続く曲がり角を足早に曲がろうとした……その時だった。
「おわっ!?」
「むっ!?」
ドン!と突然飛び出してきた柔らかい壁のような何かにぶつかる。そしてぶつかった勢いのままよろけたアルフは食料が入った籠ごと石畳の地面に体を激しくぶつける……寸前で伸びてきた細い手にパシッと腕を掴まれた。
「大丈夫か!?少年!!」
「え、は、はい!だ、大丈夫!大丈夫です!」
「……そうか。なら良かった。すまんな。少しよそ見をしていて気づくのが遅れてしまった」
「い、いえ!僕の方こそぼーっとしていてすみませんでしたお兄さ…………ん?」
そこでアルフはハッとする。男の様な口調だったからてっきりぶつかった相手は男だと思い込んでいたが、そこにいたのはアルフより身長が高くてスラッとした体つきをした整った顔立ちをした女性だった。服装がこの町ではあまり見掛けないものだから恐らく旅の人だろうとアルフは瞬時に察する。が、察した瞬間「なんでこんな夜遅くに旅の人がこんな路地裏に…?」という疑念が湧いてくる。しかし、それを突っ込むには今日の些かアルフは疲れていた。なので、怪しいと思いながらも敢えて無視することにし「ありがとうございます」とお礼を言ってアルフはさっさと曲がり角の先に行こうとしたのだが……なぜか女性はアルフの腕を掴んだまま怪訝そうな顔をして口を開いた。
「……少年、一人か?」
「え?ひ、一人……?一人かといえば一人ですけど……」
唐突な質問の意味が分からず、若干不信感を滲ませながらアルフが答えると、女は目を丸くし「…一人なのか?」とアルフの言葉を繰り返す。その女の反応の意味が分からずますますアルフは不信感を滲ませるが、そんなアルフの反応を気にも留めず、女は顎に手を当て暫し考える素振りを見せた後、ジッとアルフを見つめながらアルフにとって衝撃的な一言を言い放った。
「少年、これも何かの縁だ。私が家まで送り届けてやろう。」
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