勇者の娘だが、どうやら100人の弟妹がいるらしい。
@3960
第1話
その日、一人の男がこの世を去ろうとしていた。十年という長き旅路の末、人類の宿敵である魔王を見事打ち倒した男……勇者は今にも遠退きそうになる意識の中、グスグスと大粒の涙を流している娘に最期の言葉を伝えるべく口を開いた。
「娘よ……お前に最期に伝えたい事がある……」
「うっ、ぐすっ、うぅ……さ、最期に伝えたいこと……?」
「ああ、この八年間……ずっと言いたくて言えなかった事があったんだが……実はお前には…………100人の弟妹がいるんだ」
「そ、そうか、私には100人の弟妹達がーー……って、ええ!?100人!?100人の弟妹達がいると言ったかお父さん!?」
「ああ、女神様にちゃんと確認したから本当だぞ」
「いや、そうじゃなくて!!いつの間にそんなに子供を作っていたんだ!?私も一年前に死んだお母さんも全然そんな話聞いた事なかったぞ!!」
「ああ、お前や死んだ母さんが知らなくても無理はない。魔王討伐の旅の間に作った子供達だしな。はっははは」
「いやいやいや!全然笑い事じゃないぞお父さん!!なんでそんな大事な事を今際の際まで言わなかったんだ!!」
「それは……だって……言ったらさぁ……絶対にお前や死んだ母さんに
「それは
「む、娘よ……仮にも年頃の娘がヤりまくるとか言うんじゃな……ゴホゴホッ!!」
「お父さん!!」
「はぁ……はぁ……ああ、天の光が見える……娘よ、これが恐らく私の本当の最期の言葉になるだろう……」
「お、お父さん……」
「……はぁ……はぁ……そ、そこの引き出しに魔王討伐の旅の間に抱いてきた女達の似顔絵と抱いた場所を書き記した日記帳がある。どうか……それを使ってお前の100人の弟妹達が元気に暮らしているか……どうか調べて……くれ…………ぐふっ」
「お父さん!!お父さん!しっかりしろ!お父さん!!かなり最低な言葉を残して逝くんじゃない!!」
こうしてこの日、人類を魔王から救った勇者は娘に看取られながら穏やかにこの世を去った。葬儀は勇者の生前の希望により関係者のみで行われ、勇者の亡骸は故郷の大地に埋葬され、多くの人々が救世の英雄の死を惜しみ、墓前に花を手向け涙を流したが……勇者の娘である『武闘家』が古びた日記帳を持って『100人の弟妹を探す』旅に出た事を知る者は誰もいなかったーー……
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