カンパネラを鳴らして14
久遠と雄大は、小夜に案内され整えられたリビングにあるL字型ソファに座った。
久遠はそっと何事もなかったかのように手袋を外す。雄大はなぜ、久遠が手袋を外したか不思議に思った。
(今回の件は関わりたくなかったんじゃないか?)
久遠は久遠なりに思うとこがあるのかもしれない。そう思って何も言わなかった。
飛鳥は自分の部屋に向かって家でゆったりできる服に着替えてリビングに戻ってきた。
「すみません、今お茶を用意しますね。」
小夜はそう言うとキッチンでインスタントコーヒーを久遠と雄大のために淹れた。
「お気遣い感謝します。」
2人はコーヒーを受け取り、啜った。
小夜も自分の分を持って2人と距離を置き座る。飛鳥は興味なさげにしている。
「それで、弥生がどうかしたんですか?」
雄大は1口ごくんと飲み込むと手帳を開いた。
「弥生さんなんですが、我々が調べたところ飛鳥さんとは異母姉妹ということが判明しまして…」
小夜も飛鳥も下を向いた。
「飛鳥さんはこの事を知ってたのですか?」
飛鳥はパッと顔を上げてから雄大から視線を逸らした。何かを言いたげな唇は一度、一文字になりゆっくり開く。
「弥生から実は聞いていました。」
その言葉に小夜は驚いていた。
「そうだったの!?」
飛鳥は静かに頷く。膝に置いていた手がギュッと服の裾を掴んだ。
「結婚して飛鳥の妊娠が発覚した頃にあの人は他の女性と一時的に関係を持っていたらしいんです。詳しいことは分からないんですけど、その女性は弥生を置いてどこかへ姿を晦まして。
それで身寄りの無くなったあの子を引き取ったんです。
一時は養育施設に入れて、あたかも最初から養子縁組でっていう形にして。」
飛鳥は立ち上がると、部屋に行くと言い出した。
「あ、飛鳥?」
「ごめん、お母さん。ちょっと気分悪くなってきちゃったから。」
そう言うと飛鳥は2階へと上がって行った。
「ごめんなさい。あの子、なんだかんだ弥生とはすごく仲が良かったの。飛鳥は家に親友がいるって言ってたくらいには。
あの火事でその親友を失ったからね…。」
久遠はマグカップを目の前のテーブルに置いて立ち上がった。
「すみません、彼女と話してもいいですか?」
「え?えぇ、あの子がいいと言うなら私は何も言いませんよ?」
久遠はぺこりとお辞儀をしてから飛鳥の部屋に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます