カンパネラを鳴らして10
鈴田は自ら二階堂弥生の交友関係や知り合いに行方不明者がいないか洗い出していた。
当時通っていた学校に足を運んだり、関わった人間を全て調べてみた。
しかし返ってきた答えは全てノーだった。
「比較的、大人しい子だったけどでも暗い
と言う訳でもなかった子でしたよ。
実はバイオリンの他にピアノも出来る子だったし耳も良かったから流行りの曲を1回聞いただけで弾けることもあって人気がある子でしたし。
ただ…。」
雄大は中学生の頃の弥生と仲が良かった担任の音楽教師、佐藤から話を聞かせてもらっていた。
2人は学校にある会議室で向かい合って話している。
「ただ?」
鈴田は促すように佐藤の言葉を聞き返す。
「あの子、時々私に漏らしてたんです。
なんで私は二階堂家の長女じゃないんだろうって。お姉さんとは年齢が変わらなかったらしいわ。」
鈴田が訝しげな表情を浮かべた。
「どういうことですか?」
佐藤は驚いた顔をした。てっきり調べ上げている情報かと思っていたからだ。
「えっと…これは話していいのかしら?」
困って視線を逸らした佐藤に鈴田は彼女を真っ直ぐ見つめた。
「必ずこの事件を解決してみせますので、どうか御協力願えないでしょうか?
弥生さんのためでもあります。」
佐藤は少し考えてからぽつりぽつり話してくれた。
「弥生ちゃんは実はお姉さんとは異母姉妹らしいのよ。」
「異母姉妹?」
「えぇ、御家族はその事実を隠して彼女を養子として手続きしていたらしいわ。
なぜその事実を家族ぐるみで隠していたかは何となく分かっていたから何も言わなかったけど。」
鈴田は殴り書きで先程より大きな字でメモを取った。かなり重要な事だと判断したのだろう。
佐藤は鈴田を余所に話を続けた。
「二階堂飛鳥さんでしたっけ?
お姉さんは音楽の名門大学付属高校に通わせてもらう事が決まっているって聞いたわ。
わざわざ私立中学にも通っていたらしいし…。
弥生さん、自分も音楽の勉強がしたいって言ってたわ。」
鈴田は[弥生、飛鳥とは異母姉妹だったが隠され養子として育てられていた。
飛鳥とは待遇が違った。]と手帳に記入する。
書き終わるとパタンと手帳を閉じて佐藤にお礼を言った。
「お話を聞かせていただきありがとうございました。また何かあれば連絡すると思うのでよろしくお願いします。
あ、それと…これ。自分の電話番号です。」
鈴田は丁寧とは言えない字で電話番号が書いてある紙切れを佐藤に渡した。
「ありがとうございます。」
「いえ、ではこれで…。」
2人は会議室から出た。
鈴田は学校から出ていき、佐藤は職員室へと向かった。
鈴田は今、知り得た情報を雄大と共有しようと雄大に電話をかけた。
『鈴田?どうした?』
雄大は3コールで電話に出た。
「おう、永安。こっちは二階堂弥生の担任だった人と話をしてきたとこだ。
なんて言うか…これと言っての決めては見つけること出来なかったがまぁ厄介な話は聞いちまった。」
『どういうことだ?』
「二階堂家は複雑も複雑だったってことだ。
詳しいことは署で会った時に話そうか。」
『…分かった。後で落ち合おう。』
電話は雄大から一方的に切られた。
鈴田は自動販売機でコーヒーを買い、近くにあった街の喫煙所にてタバコを1本をふかした。
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