僕の創作論
ジュン
第1話
A「今回は創作論ということですが」
B「苦手とするところです(笑)」
A「そうですか(笑)。でも、よろしくお願いします」
B「実は僕は創作に関してポリシーがないんです」
A「適当に書いてる、ということ?」
B「適当でもないんですが、決まったコードなり文体ってものを念頭に置かない。意識してないんです」
A「それはなぜですか?」
B「文学なり文芸って、読んでほしいのは文体なんですよね。その作家の『スタイル』ってものを伝えたい、定着させたいっていうのが物書きの狙いになってる。僕はそれが嫌で」
A「なんで嫌なんですか?」
B「自意識過剰な部分が(笑)。文体を見てほしいって、要は自分を特別だと思ってほしいということ」
A「なるほど。文体あるいはスタイルで『勝負』しないとなると、純粋に文章の内容で勝負ですか?」
B「そう思うでしょ。でも、内容勝負でもない」
A「内容でもない?」
B「内容っていうけど、モダニズムなりポストモダンの実験的手法のなかで、『文学の新たな可能性』なんてものはやり尽くした感がある。カフカにしてもジョイスにしても」
A「内容ではない。文体でもないわけですよね。だとしたら、何を書いたらいいのでしょう?」
B「書きたいことを書いたらいい(笑)」
A「自由にですか?」
B「文体なりスタイルって、作家の個性を主張する際のフレームワークでしょう。ポストモダンの作家は、フレームを必要としないんですよ。なぜなら、書いた本に、主義なり主張を持たせようとしないから」
A「それは、エンターテイメント小説がそれですか?」
B「エンターテイメント小説だろうが、純文学だろうが、書くことに目的意識がないんですよ。過去の作家たちが、あらゆる表現を試みた。それは、◯◯主義なり◯◯派って言えるような立派な仕事をしたわけですよね。そうすると現代の作家は、文学の『新境地』はもう残ってないんです」
A「だから、こだわる物がないと?」
B「そう。せいぜい文字を並べて、一応は意味の通るような文章を書いてるだけだから、『書き方』だとか『書き方のルール』だとか『文章のメッセージ性』もっと言えば『作品の物語性』なんてものも、もう斬新さはみられないですよ」
A「パロディ作品も溢れてますね」
B「そうです。書くことがないからでしょ(笑)」
A「文体なりスタイル、また内容でもないとすると、ポストモダンの作家は『色』を持っていない?」
B「そう。できるだけ『無色』。スタイルを見てっていう意識がないからね」
A「そこと、昨今の、短編小説やショートショート、掌編小説が増えてきてるのは関係があるのでは?」
B「僕もそう思う。長編が嫌厭されるのは、以前読んだ、『デジャブ感』があるからですよ。だから、文字をたくさん追ってくのが疲れるし、長編って、ある意味、字数稼ぎの文章だから、内容もつまんないことが多い」
A「たしかに(笑)」
B「現代文学は反対運動、アンチ◯◯、例えばアンチ自然主義みたいな、アンチそれ自体がないから、書きたいように書いたらいいってだけ。『書き方のルール』だとか『正しい文章』なんて正解はないし。ただ、自分の伝えたいことを誤解のないように、わかりやすく書く技術は必要かもしれない。それから、『商業出版』ってなれば、また話は別です」
A「ありがとうございました」
B「こちらこそ。ありがとうございました」
僕の創作論 ジュン @mizukubo
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