出逢っちゃうよ、運命

りんどう

短編


「ね〜聞いてよ!私、運命に出逢っちゃったの!」


 放課後、かわいい親友とタピオカを飲みに行く約束をしていた。やっと来たと思ったらその子が飛び込んで開口1番こう言ってきたのだ。


「うわ、めっちゃテンション高いじゃん何?運命?」


 クラスにはもう誰も残ってなくて、私はいじってたスマホをとりあえず机に伏せた。うんめい、運命か〜と意識を飛ばしていたら彼女はバックを前の席に適当に置いて椅子の向きを逆にすると素早く話す体勢を作っていた。お喋りが先、タピオカが後らしい。


「そう、私さ通学中いつも同じ車両にイケメンがいるって話してたじゃん?」

「あぁ、高身長で色白で今時のイケメン君だっけ?あの頭良い学校の制服着てたっていう」

「そー!!まッ流石にね、私もだからって恋してた訳じゃないんだよ?けどね、昨日会っちゃったの!」

「‥‥いつも会ってない?」

「ちーがーうーよ!プライベートで!」

「芸能人じゃないんだから、、何?私服でってこと?」

「ふふ、うん、そう。街でね、あっあの人だって、私服だったけどすぐ分かったの。それで変な格好だったらガッカリだけど本当に私好みのセンスの良い格好しててね、クラッチバックとか持っててさ」

「はぁ、クラッチバックを」


クラッチバックがどんなかすぐに思いだせないけど、彼を語る彼女はまさに恋をしている乙女、という感じでキラキラしちゃってる。


「うん、で見てたら目が合っちゃって」

きゃーと両手を頬にあてる姿に私もつられて楽しくなってきた。

「ほぉ!それで」

「ニコって笑ってくれたの!私のこと分かったみたい。そんで私もニコってしたの。それが昨日・・・その一瞬でね運命!!と分かって今日に至るのです」

「はぁ、運命ですか、そりゃまた大層な」

「ほんとうの本当だよ?!ない?そういうこと?」


前のめりに彼女が問いかけてくる。


「運命を感じたこと?」

「うん」

「まって、思い出してみる」


なんか、あったかなぁと頭に手を当て考えてみたら、はっと同じような体験がよぎった。


「そうだ!思い出したんだけど、私も他人以上知り合い未満の目が合う人いるなって」

「えーイケメン?」

「うーん、その時々かな?」

「バラエティに富んだファッションってこと?」

「いや、そういうんじゃない。会う度に別人だし」

「???・・・マジシャン?でも見分けられるのすごーい!」


ぱちぱち拍手してくれる彼女には悪いなと感じつつ言葉を探す。


「変装してるんじゃなくて言葉通り、別人だよ。魂の形でわかるの」

「はぁ、魂ですか」


彼女がそう神妙に相槌を打った。でも内心笑ってるみたいでちょっとコミカルだ。さっきの私みたいに


「そう、転生するとさ、やっぱ姿形は変わるじゃん?でも魂の形は変わらないからそれで同じ人だってわかる訳」

「ちょっと分からないけど、続けて」

「うん、私は今7回目の輪廻な訳だけどあんまりこーいうの覚えてる人少ないよね、そういえば」

「私は少なくとも覚えてない派かな、今知ったや、人間って転生しても人間になれるんだ」

「そこ?まぁね、よっぽどがなければ人」

「えっ虫になる可能性もある?」

「無きにしも非ず」

「え〜泣いちゃった」


泣くどころか笑ってるけど、気持ちは分かるよ。私ら虫苦手だもんね。話に食いついてきた彼女にちょっとドキドキしながら更に喋った。


「話続けるけど、それで偶に街歩くとあっこの人、前も会ったなって人がいて、更に向こうも同じこと思ってるぽいんだよね〜」

「確率やばいじゃん」

「そうなの、全然年の差あったりほんの一瞬の時もあれば店員と客とかで長々接客する時もあった」

「えー言わないの?」

「言わない言わない、言ったらやばいやつじゃん。前世でも会いましたよね?って言える〜?確かにね、覚えてるぽいけど違ったら頭いかれたストーカーみたいじゃん」

「もー私には言ったのに!」


彼女は頬杖をついて上履きをパタパタしてる。それを見てなんだか私も気が抜けちゃった。


「へへ、アンタはね、どの人生でもこの話信じてくれて好きだよ」

彼女がパチリと丸い目を瞬かせた。

「え〜!こっちじゃん、私達が運命だったんじゃん」

「ふふ、うん。私らズッ友だよ」

「記念に自撮りしよ〜!」

「今日のタピは私らの運命に乾杯ってことで」


 夕焼けのオレンジと紫が混じる教室でピースしたJKらしい記念の一枚をパシャリ。

覚えてるのが辛いことだってあったけど、またアンタに会えるならこの運命が私は大好き。

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出逢っちゃうよ、運命 りんどう @Nashico

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