ワールド・イクリプス

がじろー

序章『都市伝説① 日常の一コマ』

 『異界渡りドリフトドライブ』―――――どこにでもあるネットロアの一つで、内容は「匿名のLINK《リンク》から送られてくるサイトに入れば異世界へ行ける」と言うモノだ。

 そんなありふれた噂について今日もここ『オカルト研究部』では熱い討論が繰り広げられていた。

 「と、言うわけで私としてはこの噂を検証したいわけですよ」

 神代春陽かじろはるひはウェーブがかったゆるふわボブを揺らしながら力強く熱弁していた。

 「えーっ、興味ねーっ」

 対して向かい側に座っていた少年、十崎裕人とざきゆうとは本気で興味が無いのか部室に置いてあった雑誌に目を通していた。

 「十崎くん、私は悲しいよ。貴方は私に用済みになれば捨てるんだ…………酷い人」

 「ほぅ、俺の記憶が正しけりゃ春陽の言うってのはこの黎明学園に立っている『黎明桜』の根元には死体が埋まってるから掘り起こせと命令した挙げ句いざ掘ってみりゃ一コ上の先輩達の埋めたタイムカプセルを掘り起こして大問題になって生活指導教諭ゴリラに大目玉喰らったヤツか? しかも俺一人だけ」

 あれれぇ? そうだっけ? と某見た目は子供、頭脳は大人な名探偵張りのすっとぼけをする春陽。

 本気でしばこうか少し考えた裕人だったが、このオカルト研究部の部長である彼女とは中学からの腐れ縁なのでこの程度はまだ可愛いものだった。

 神代春陽―――――見た目は可愛い系のギャルだが、この趣味オカルトのせいで少し浮き気味なのが玉に瑕だった。

 前に一度だけ何故オカルトに興味を持ったのかを訊ねた事があったのだが、

 「ん~、何となく。ロマン感じるじゃん?」

 との事だった。

 そんな彼女が追っているネットロアがこの『異界渡りドリフトドライブ』というモノだった。

 「でもよ、そもそも何でLINK《リンク》なんだ? こういう系って大抵はメールにURLが貼り付けられてるってのが王道のような気がすんだけど?」

 そんな何気無い質問に春陽の返答はただ一言。

 「そりゃ今の時代LINKでしょ? メールだなんてもうほとんど使われて無いわよ」

 と一蹴された。

 裕人は少し前に使用していた通話とメールだけの携帯で十分だったのだが、この神代春陽オカギャルは時代遅れと罵ってきたので新しいスマホを購入したのだ。

 まぁ結果バイトで貯めた分が減ってしまったのだが。

 「でもよ、検証って………………どうやって?」

 「さぁ?」

 早くも計画は頓挫する可能性が出てきたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る