昇竜軒には“超爆盛り極辛煉獄ラーメン”なるチャレンジメニューが存在する。30分以内に完食すれば10万円進呈の文言に釣られた数多の挑戦者をもれなく退けてきたそれはまさに大山。亡き両親に代わって店を、攻略不能を守り続ける菫は、ここに新たな挑戦者を迎えることとなった。10年前に引っ越していったきりであった幼なじみであり、今は父母を死に追い込んだ憎きフードファイターへ成り果てた匠を。
菫さんは復讐のために超爆盛りを作りあげました。でも、それへ挑むフードファイターが大好きだった“たっくん”となれば……? 状況の設定とキャラの関係性、噛み合いようのないふたつを噛み合わせことで、一見コメディかと思われた物語は凄まじい悲哀と緊迫を帯びるのです。
そして武人の立ち合いさながらに菫さんと匠さんの勝負は幕を開けるのですが。幕切れの快さがまた爽やかにあたたかく、緩急ならぬ急緩の妙を味わわせてくれるのですよ。
旨くて巧い情感超爆盛りな物語、おすすめメニューとして推させていただきます。
(「冬こそ(冬じゃなくても)ラーメン!!」4選/文=高橋 剛)